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12-12 2人のアドバイス
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今を遡ること30分程前――。
「よし、行くか」
執務室で剣の手入れをしていたエルウィンが突然立ち上がった。
「え?お待ちください、エルウィン様。まだ仕事が終わっていないのですよ?しかも今まで剣の手入れをしていただけですよね?終われば執務に戻って頂けるだろうと思って今まで私は黙っていたのですよ?それなのに一体今からどちらへ行かれると言うのですか?」
「全く……男のくせに煩い奴だな。俺のたった一言で、そこまで言い返すことは無いだろう?」
エルウィンは不機嫌な顔を隠しもせずにシュミットを睨みつけた。
「当然ではありませんか!まだ越冬期間中に終わらせることが出来なかった残務処理が残っているのですよ?」
2人の机の上には積み重ねられた書類の束が置かれている。そして、シュミットの机に乗っている書類はエルウィンのおよそ2倍量はあった。
「宜しいですか?私はただでさえエルウィン様の倍は仕事を抱えております。少しは御理解頂けないでしょうか?」
「俺の仕事の補佐をするのがお前の役目だ朗?今更何言ってるんだ。とにかく俺は忙しい。後のことはお前に任せる」
エルウィンはシュミットの制止も聞かずに出て行こうとすると、そこへスティーブがノックもせずに駆け込んできた。
「た、大将!こちらにいたんですかっ?!」
「何だ。相変わらず騒々しい奴だな……。俺は今からアリアドネを説得しに行かなければならないんだ。急用でないなら後にしてくれ」
「「え?説得?!」」
シュミットとスティーブの声が重なる。
「ああ、そうだ。何とかしてアリアドネにもう一度考え直してもらえるように説得に行くつもりだ。そこで今からミカエル達の部屋へ行くつもりだ。今なら2人は食事中で、アリアドネは給仕をしている最中だろうからな」
ここでエルウィンの話している説得とは、勿論アリアドネをアイゼンシュタット城に止めて置く為の説得のことをさしている。しかし、シュミットとスティーブの思いは違った。
(まさか、一度は断られているのに再びアリアドネ様に結婚を申し込まれるつもりなのだろうか?)
(大将‥‥アリアドネに振られたのに、もう一度挑戦する気なのか‥‥?)
エルウィンの本気度を知った2人は背中を押すことに決めた。
「分かりました、エルウィン様。仕事の件でしたら本日は多めにみましょう」
シュミットが眼鏡をクイッと上げた。
「え?いいのか?」
以外な台詞に驚くエルウィン。
「ええ、エルウィン様の本気度が伺えましたからね。ご武運をお祈り申し上げます」
「あ?ああ‥‥分かった」
「大将、頑張ってくれよ。応援してるぜ!」
シュミットに引き続き、スティーブが声を掛けて来た。
「そうだな。何とか説得してみせる」
頷くエルウィンにシュミットとスティーブがアドバイスしてきた。
「そうそう、エルウィン様。まず相手の第一印象を上げるには笑顔ですよ」
「そうですぜ、大将。相手の警戒心を解くにはまず笑顔が一番ですぜ?」
「わ、分かった‥‥笑顔…だな?」
エルウィンは口角を上げてみた。
「う~ん‥‥まだまだ表情が硬いですねぇ」
「そうだな、大将。目も笑ってみたらどうです?」
「こ、こうか…?」
こうしてエルウィンは2人から笑顔の指導?を受けて、ミカエルとウリエルの部屋へと向かったのであった――。
「よし、行くか」
執務室で剣の手入れをしていたエルウィンが突然立ち上がった。
「え?お待ちください、エルウィン様。まだ仕事が終わっていないのですよ?しかも今まで剣の手入れをしていただけですよね?終われば執務に戻って頂けるだろうと思って今まで私は黙っていたのですよ?それなのに一体今からどちらへ行かれると言うのですか?」
「全く……男のくせに煩い奴だな。俺のたった一言で、そこまで言い返すことは無いだろう?」
エルウィンは不機嫌な顔を隠しもせずにシュミットを睨みつけた。
「当然ではありませんか!まだ越冬期間中に終わらせることが出来なかった残務処理が残っているのですよ?」
2人の机の上には積み重ねられた書類の束が置かれている。そして、シュミットの机に乗っている書類はエルウィンのおよそ2倍量はあった。
「宜しいですか?私はただでさえエルウィン様の倍は仕事を抱えております。少しは御理解頂けないでしょうか?」
「俺の仕事の補佐をするのがお前の役目だ朗?今更何言ってるんだ。とにかく俺は忙しい。後のことはお前に任せる」
エルウィンはシュミットの制止も聞かずに出て行こうとすると、そこへスティーブがノックもせずに駆け込んできた。
「た、大将!こちらにいたんですかっ?!」
「何だ。相変わらず騒々しい奴だな……。俺は今からアリアドネを説得しに行かなければならないんだ。急用でないなら後にしてくれ」
「「え?説得?!」」
シュミットとスティーブの声が重なる。
「ああ、そうだ。何とかしてアリアドネにもう一度考え直してもらえるように説得に行くつもりだ。そこで今からミカエル達の部屋へ行くつもりだ。今なら2人は食事中で、アリアドネは給仕をしている最中だろうからな」
ここでエルウィンの話している説得とは、勿論アリアドネをアイゼンシュタット城に止めて置く為の説得のことをさしている。しかし、シュミットとスティーブの思いは違った。
(まさか、一度は断られているのに再びアリアドネ様に結婚を申し込まれるつもりなのだろうか?)
(大将‥‥アリアドネに振られたのに、もう一度挑戦する気なのか‥‥?)
エルウィンの本気度を知った2人は背中を押すことに決めた。
「分かりました、エルウィン様。仕事の件でしたら本日は多めにみましょう」
シュミットが眼鏡をクイッと上げた。
「え?いいのか?」
以外な台詞に驚くエルウィン。
「ええ、エルウィン様の本気度が伺えましたからね。ご武運をお祈り申し上げます」
「あ?ああ‥‥分かった」
「大将、頑張ってくれよ。応援してるぜ!」
シュミットに引き続き、スティーブが声を掛けて来た。
「そうだな。何とか説得してみせる」
頷くエルウィンにシュミットとスティーブがアドバイスしてきた。
「そうそう、エルウィン様。まず相手の第一印象を上げるには笑顔ですよ」
「そうですぜ、大将。相手の警戒心を解くにはまず笑顔が一番ですぜ?」
「わ、分かった‥‥笑顔…だな?」
エルウィンは口角を上げてみた。
「う~ん‥‥まだまだ表情が硬いですねぇ」
「そうだな、大将。目も笑ってみたらどうです?」
「こ、こうか…?」
こうしてエルウィンは2人から笑顔の指導?を受けて、ミカエルとウリエルの部屋へと向かったのであった――。
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