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15-12 波乱の夜会 10
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「大体、何故アリアドネはそんな状態になっている?お前が何かしたのではないか?」
エルウィンは今にも腰に差してある剣を抜きそうな勢いで青年に詰め寄る。
「それは誤解です。この女性は1人、壁の花状態になっていたので私が声を掛けただけです。幸い私も1人だったものですから。まさかパートナーの相手がバルコニーで別の女性と会っているとは誰も思いませんからね」
青年は未だにぐったりしているアリアドネを抱き寄せたまま、チラリとミレーユを見つめた。
ミレーユはその視線にビクリとなった。
「この女と俺はお前が思うような関係では無い!それよりも早くアリアドネを渡せ!彼女は俺の婚約者だ!」
エルウィンはアリアドネが自分以外の男の腕の中にいるのが許せず、婚約が決定事項でも無いのに、言い切った。今のエルウィンはまるで戦場にでもいるかの如く、身体の血が熱くなっている。
「アリアドネ?そうですか、この女性はアリアドネという名前なのですか?成程、名前も外見に劣らず美しい」
青年はエルウィンの鋭い眼光にもひるむことなく、アリアドネの髪を一房救い上げるとその髪にキスをした。
その様子にエルウィンだけでなく、ミレーユも驚いた。
「貴様っ!!何をするっ!!」
咄嗟に剣を抜こうとするエルウィンにミレーユは驚き、叫んだ。
「キャアッ!!エルウィン様っ!王宮内で御無体はおよしになって下さいっ!!」
「チッ!」
忌々し気に剣から手を下ろすと、青年は口角を上げた。
「エルウィン……?もしやエルウィン・アイゼンシュタット辺境伯か?」
「ああ、そうだ。俺のことをよく知っているようだな?だったら俺の話は知っているだろう?早くアリアドネを放せ」
怒気を含んだ声でエルウィンは男を睨みつける。
すると、ミレーユが突然青年に声を掛けた。
「どこのどなたかは存じませんが、その娘は私の妹のアリアドネです。私の代わりにこちらにいらっしゃいます辺境伯様の妻になる為に城に身を寄せております。なので、どうぞ妹を辺境伯様にお返し下さいませ」
「何?」
エルウィンは先ほどのミレーユの態度が一転したことが信じられなかった。
しかし、次にミレーユはとんでもない台詞を口にする。
「代わりに、私がお相手致します。その娘は貴族令嬢としての嗜みを一切受けておりませんので貴方のような高貴なお方にはふさわしくない相手ですわ」
ミレーユは青年の服装から、只者では無いと察していた。
(何だと?!この女……一体何を言い出すのだっ?!)
エルウィンはミレーユの台詞に驚いた。
すると……。
「アハハハハハ……」
何がおかしいのか、青年は笑った。
「成程……辺境伯。貴殿はこの国を守る為の重要な要だ。大切な女性というのであればお返しいたしましょう」
そして青年はすっかり意識を無くしているアリアドネを抱き上げるとエルウィンの元へ運ぶ。
「アリアドネッ!」
エルウィンはアリアドネに駆け寄ると、まるで青年の腕から奪うように抱き寄せると、青年を睨みつけた。
「今度、アリアドネに近付こうものなら容赦はしない」
「……分かりました。覚えておきましょう」
青年は意味深な笑みを浮かべると、パーティー会場へと戻って行く。
「あ!お待ち下さい!」
性懲りも無く、青年の後をミレーユは追い……バルコニーにはエルウィンと、朦朧とした意識のまま抱きかかえられるアリアドネの二人きりとなった。
「アリアドネ……」
エルウィンは自分の腕の中で眠りに就いているアリアドネの額にそっとキスをし、夜空を見上げた――。
エルウィンは今にも腰に差してある剣を抜きそうな勢いで青年に詰め寄る。
「それは誤解です。この女性は1人、壁の花状態になっていたので私が声を掛けただけです。幸い私も1人だったものですから。まさかパートナーの相手がバルコニーで別の女性と会っているとは誰も思いませんからね」
青年は未だにぐったりしているアリアドネを抱き寄せたまま、チラリとミレーユを見つめた。
ミレーユはその視線にビクリとなった。
「この女と俺はお前が思うような関係では無い!それよりも早くアリアドネを渡せ!彼女は俺の婚約者だ!」
エルウィンはアリアドネが自分以外の男の腕の中にいるのが許せず、婚約が決定事項でも無いのに、言い切った。今のエルウィンはまるで戦場にでもいるかの如く、身体の血が熱くなっている。
「アリアドネ?そうですか、この女性はアリアドネという名前なのですか?成程、名前も外見に劣らず美しい」
青年はエルウィンの鋭い眼光にもひるむことなく、アリアドネの髪を一房救い上げるとその髪にキスをした。
その様子にエルウィンだけでなく、ミレーユも驚いた。
「貴様っ!!何をするっ!!」
咄嗟に剣を抜こうとするエルウィンにミレーユは驚き、叫んだ。
「キャアッ!!エルウィン様っ!王宮内で御無体はおよしになって下さいっ!!」
「チッ!」
忌々し気に剣から手を下ろすと、青年は口角を上げた。
「エルウィン……?もしやエルウィン・アイゼンシュタット辺境伯か?」
「ああ、そうだ。俺のことをよく知っているようだな?だったら俺の話は知っているだろう?早くアリアドネを放せ」
怒気を含んだ声でエルウィンは男を睨みつける。
すると、ミレーユが突然青年に声を掛けた。
「どこのどなたかは存じませんが、その娘は私の妹のアリアドネです。私の代わりにこちらにいらっしゃいます辺境伯様の妻になる為に城に身を寄せております。なので、どうぞ妹を辺境伯様にお返し下さいませ」
「何?」
エルウィンは先ほどのミレーユの態度が一転したことが信じられなかった。
しかし、次にミレーユはとんでもない台詞を口にする。
「代わりに、私がお相手致します。その娘は貴族令嬢としての嗜みを一切受けておりませんので貴方のような高貴なお方にはふさわしくない相手ですわ」
ミレーユは青年の服装から、只者では無いと察していた。
(何だと?!この女……一体何を言い出すのだっ?!)
エルウィンはミレーユの台詞に驚いた。
すると……。
「アハハハハハ……」
何がおかしいのか、青年は笑った。
「成程……辺境伯。貴殿はこの国を守る為の重要な要だ。大切な女性というのであればお返しいたしましょう」
そして青年はすっかり意識を無くしているアリアドネを抱き上げるとエルウィンの元へ運ぶ。
「アリアドネッ!」
エルウィンはアリアドネに駆け寄ると、まるで青年の腕から奪うように抱き寄せると、青年を睨みつけた。
「今度、アリアドネに近付こうものなら容赦はしない」
「……分かりました。覚えておきましょう」
青年は意味深な笑みを浮かべると、パーティー会場へと戻って行く。
「あ!お待ち下さい!」
性懲りも無く、青年の後をミレーユは追い……バルコニーにはエルウィンと、朦朧とした意識のまま抱きかかえられるアリアドネの二人きりとなった。
「アリアドネ……」
エルウィンは自分の腕の中で眠りに就いているアリアドネの額にそっとキスをし、夜空を見上げた――。
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