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17-23 カルタン族の焦り

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 その頃――。

エルウィン達は猛スピードで地響きを立て、雪を飛び散らせながら着実に『ウルス』の宿場村へ近づいていた。

「おい!皆見ろ!『ウルス』の宿場の村が見えてきた!スピードを上げるぞ!」

 エルウィンが背後を振り向き、必死で追いかけてくる騎士たちに叫んだ。

「そ、そんな!」
「冗談ですよね?!」
「これ以上なんて無理です!」

 騎士たちの口から悲鳴が出る。

「おい誰だっ!無理だと言った奴は!我等には『無理』『不可能』という言葉は存在しない!」

 その言葉に、騎士たちは泣き言を飲み込む代わりに手綱を強く握りしめた――。



****


「よーし、お前ら。準備は出来たな?」

武器を携えたリーダーが仲間たちを見渡した。

「ああ!バッチリだ!」
「いつでも出れるぞ!」
「腕がなるぜ……!」

 中には指をバキバキ鳴らす猛者もいる。

「よし!では行くぞ!」

『おう!!』

 リーダーの掛け声に全員が声を揃えて返事をした時――。

バンッ!!

 突然勢いよく扉が開かれ、見張りの男が飛び込んできた。髪は振り乱し、目は血走っている。

「何だ?お前。随分慌ててるじゃないか?」

 リーダーが声を掛けた。
 すると――。

「た、た、た、大変だ!!」

見張り番の男はかなり取り乱している。

「落ち着け、まずは深呼吸しろ」

リーダーに肩を叩かれ、見張り番の男は大きく深呼吸すると叫んだ。

「大変だ!!この村に……ア、アイゼンシュタッとの騎士共が大軍で押し寄せてきている!!」

「何だと?!どういうことだ!何故我等の動きがばれたのだ!」

リーダーの顔色が変わる。

「大変だ!」
「我等の動きが読まれていたのか?」

ざわめくカルタン族の男達。

「くっそ~……騎士共には他に仲間もいたに違いない。恐らく援軍を呼んだな?」

悔しがるリーダーに詰め寄る男たち。

「おい!どうする!」
「もうすぐここへやって来るぞ!」
「何とかしなければ!」

「よし……どうせ奴らを急襲する計画だったのだ……。少々予定が狂ってしまったが……かえってこちらから攻め込む手間が省けたというものだ!幸い我等には人質がいる!まずは教会に捕らえていた人質共を全員……」

 そこへ別の見張り番の男が飛び込んできた。

「おい!大変だ!教会の人質が全員消えている!」

「何いっ?!教会につけていた見張りはどうした?!」

リーダーが激しく男を詰る。

「そ、それが……見張りの2人も消えているんだよ!」

『何だって?!!』

 その場にいたカルタン族の男たちが一斉に声を揃える。

「どうするんだよ!」
「なんとかしなければ!」

 狼狽えるカルタン族の男たち。

「落ち着け!皆!我等は誇り高きカルタン一族!!こうなったらやぶれかぶれだ!打って出るぞ!」

『おう!!』

 そして身の程知らずのカルタン一族達は、やぶれかぶれでエルウィン達を出迎えることになるのだった――。


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