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24 ラッキー? なトラブル
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「え~と、あの……」
僕はどうしたら良いか分からず、ジュリオとクレアの顔を交互に見た。
どうする? 何と答えればよいのだろう? どちらの肩を持っても事態は悪化するだろう。二人の中がより険悪になるのは分かっている。
ジュリオは今回の見合いで最後にしようとしているけれど、クレアの話では、二人の婚約は既に決まっているようなものだし……
「おい、クリフ。黙っていないでさっさと答えろ」
「ええ、そうですわ。早く質問に答えて下さい」
何故、僕は二人から問い詰められているのだろう。こんな時、先読みの力が発動すれば……!
すると奇跡? が起こった。
クレアの顔を見ていると、突然ある情景が脳裏に浮かんだ。一匹の大きな蜂がクレアめがけて飛んでくる情景だった。
「まずい!」
僕は急いで蜂を撃退する道具が無いか探し……ケーキにかぶせていたガラス製のフードカバーが目に飛び込んできた。
よし! これを使えば……!
僕は咄嗟にフードカバーを掴んだ。
「おい? 何してるんだ? クリフ」
不思議そうに首をかしげるジュリオを無視し、僕はクレアに目を向けた。
「クリフ様……?」
クレアが首を傾げた直後。
ブ~ン……
大きな羽音と共に、ガゼボの側にある木から一匹の大きな蜂がいきなクレアに向かって飛んできた。
「キャアッ!」
「クレア様っ!」
僕は咄嗟にクレアの腕を引き、自分の背後に隠すと持っていたフードカバーを蜂に被せ、そのまま地面に叩きつけるように置いた
ガッ!!
閉じ込められた巨大な蜂はフードカバーの中で飛び回っている。
「え……蜂……?」
ジュリオは驚いたように、飛び回っている蜂を見下ろした。
「あ、ありがとうございます……クリフ様」
クレアは余程驚いたのか、僕にしがみついたままガタガタ震えている。
「大丈夫でしたか? クレア様」
「はい。刺される前にクリフ様が蜂を捕まえてくれましたから……」
「それにしても大きな蜂だな~」
「ジュリオ様、この蜂はきっとオオスズメバチですよ。こんなのに刺されたらただではすみませんよ。人によってはショック死してしまうかもしれません」
「何!? そんなに危険なのか!?」
「はい、もしかするとこのガゼボの近くに巣があるかもしれません。お見合いの場所を変えたほうがいいかもしれませんね」
「そうだな。まだ他にいるかもしれないからな」
ジュリオが椅子から立ち上がる。
「クレア様、場所を移動しましょう……クレア様?」
しかし、クレアは返事をすること無くヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
「ど、どうしたのですか!?」
驚いて尋ねると、青ざめた顔で僕を見上げる。
「え、ええ……こ、腰が抜けてしまって……」
「クレア様……」
こんなところにいつまでもいたらまた蜂が飛んでくるかもしれない。
仕方ないか……
「ちょっと失礼します」
身をかがめると、ヒョイとクレア様を抱き上げた。
「え? え? ク、クリフ様!?」
クレアが驚いて僕を見つめる。
「すみません。他の場所に移動しますので、少し我慢して頂けますか? ジュリオ様」
「あ、ああ。何だ?」
呆気に取られているジュリオに声を掛けた。
「申し訳ございませんが、お茶のセットをワゴンに乗せてついてきて頂けますか?」
いつもの彼なら、「何故俺が!」と文句を言っていただろう。しかし今回ばかりは違った。
「分かった。俺がワゴンを運ぶからお前は彼女を運んでくれ」
「はい、ありがとうございます」
ジュリオがテーブルの上のお茶をワゴンに移し終わると、僕は腕の中のクレアに声を掛けた。
「では移動しましょう。クレア様」
「は、はい……」
頷くクレアは耳まで真っ赤になっていた――
僕はどうしたら良いか分からず、ジュリオとクレアの顔を交互に見た。
どうする? 何と答えればよいのだろう? どちらの肩を持っても事態は悪化するだろう。二人の中がより険悪になるのは分かっている。
ジュリオは今回の見合いで最後にしようとしているけれど、クレアの話では、二人の婚約は既に決まっているようなものだし……
「おい、クリフ。黙っていないでさっさと答えろ」
「ええ、そうですわ。早く質問に答えて下さい」
何故、僕は二人から問い詰められているのだろう。こんな時、先読みの力が発動すれば……!
すると奇跡? が起こった。
クレアの顔を見ていると、突然ある情景が脳裏に浮かんだ。一匹の大きな蜂がクレアめがけて飛んでくる情景だった。
「まずい!」
僕は急いで蜂を撃退する道具が無いか探し……ケーキにかぶせていたガラス製のフードカバーが目に飛び込んできた。
よし! これを使えば……!
僕は咄嗟にフードカバーを掴んだ。
「おい? 何してるんだ? クリフ」
不思議そうに首をかしげるジュリオを無視し、僕はクレアに目を向けた。
「クリフ様……?」
クレアが首を傾げた直後。
ブ~ン……
大きな羽音と共に、ガゼボの側にある木から一匹の大きな蜂がいきなクレアに向かって飛んできた。
「キャアッ!」
「クレア様っ!」
僕は咄嗟にクレアの腕を引き、自分の背後に隠すと持っていたフードカバーを蜂に被せ、そのまま地面に叩きつけるように置いた
ガッ!!
閉じ込められた巨大な蜂はフードカバーの中で飛び回っている。
「え……蜂……?」
ジュリオは驚いたように、飛び回っている蜂を見下ろした。
「あ、ありがとうございます……クリフ様」
クレアは余程驚いたのか、僕にしがみついたままガタガタ震えている。
「大丈夫でしたか? クレア様」
「はい。刺される前にクリフ様が蜂を捕まえてくれましたから……」
「それにしても大きな蜂だな~」
「ジュリオ様、この蜂はきっとオオスズメバチですよ。こんなのに刺されたらただではすみませんよ。人によってはショック死してしまうかもしれません」
「何!? そんなに危険なのか!?」
「はい、もしかするとこのガゼボの近くに巣があるかもしれません。お見合いの場所を変えたほうがいいかもしれませんね」
「そうだな。まだ他にいるかもしれないからな」
ジュリオが椅子から立ち上がる。
「クレア様、場所を移動しましょう……クレア様?」
しかし、クレアは返事をすること無くヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
「ど、どうしたのですか!?」
驚いて尋ねると、青ざめた顔で僕を見上げる。
「え、ええ……こ、腰が抜けてしまって……」
「クレア様……」
こんなところにいつまでもいたらまた蜂が飛んでくるかもしれない。
仕方ないか……
「ちょっと失礼します」
身をかがめると、ヒョイとクレア様を抱き上げた。
「え? え? ク、クリフ様!?」
クレアが驚いて僕を見つめる。
「すみません。他の場所に移動しますので、少し我慢して頂けますか? ジュリオ様」
「あ、ああ。何だ?」
呆気に取られているジュリオに声を掛けた。
「申し訳ございませんが、お茶のセットをワゴンに乗せてついてきて頂けますか?」
いつもの彼なら、「何故俺が!」と文句を言っていただろう。しかし今回ばかりは違った。
「分かった。俺がワゴンを運ぶからお前は彼女を運んでくれ」
「はい、ありがとうございます」
ジュリオがテーブルの上のお茶をワゴンに移し終わると、僕は腕の中のクレアに声を掛けた。
「では移動しましょう。クレア様」
「は、はい……」
頷くクレアは耳まで真っ赤になっていた――
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