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第3話 素晴らしい計画
「あの~…ローレンス様」
「何だ?」
ガラガラと走り続ける馬車の中、向かい側に座ったトニーが声を掛けてきた。
「いえ……随分気合の入った服装だと思いまして……」
成程、それで先程からチラチラとこちらを見ていたのか。
「どうだ?似合っているか?」
僕が今着ているのは先程のラフなジャケット姿ではない。
棒タイ付きのシャツに上下揃いの縦縞の入ったグレーのスーツ姿なのだから。
「ええ、とてもお似合いですが……一体何故そのようスーツ姿に着替えられたのでしょうか?」
「トニー。お前にしては中々良い質問をするじゃないか」
「本当ですか?ありがとうございます。それで?理由を教えて頂けますか?」
僕に褒められたのが嬉しいのか、トニーは身を乗り出してきた。
「簡単なことだ。落とす為だよ」
「へ……?落とす?何を落とすのですか?」
「何だ?分からないのか?随分鈍いな……。それじゃ尋ねるが、僕達は今何処へ向かっているんだ?」
窓から外の景色を眺めながらトニーに質問した。
今、馬車は石畳が敷き詰められた街中を走っている。馬車道を挟んだ左右には様々な店が立ち並び、多くの買い物客で賑わいを見せていた。
「えっと……シェリル様の住むお屋敷へ向かっているのですよね?」
「ああ、そうだ。なら何を落とすのか見当がつくだろう?」
「う~ん……」
トニーは首をひねりながら暫く考え……。
「すみません、全く分かりません。降参するので教えて下さい」
そして頭を下げてきた。
「何だ?本当に分からないのか?仕方ないな……なら教えてやろう。シェリルを落とすに決まっているだろう?」
「え……ええっ?!シェリル様をですかっ?!」
トニーは余程驚いたのか、目を見開いた。
「ああ、そうだ。シェリルを落とす。僕に夢中にさせるんだ。何しろシェリルは僕にあまり興味が無いようだからな。だけど15年も前から許婚同士なのだから、それは無理もない話かもしれないがね」
トニーに本当のことを話すわけにはいかない。
まさか、許婚から『私は貴方のことが大嫌いでした』なんて手紙を受け取ったなど情けないこと言えるはずもない。
これでも僕にだって男の意地というものがあるのだから。
「はぁ…でも確かにそれは言えるかも知れませんね。シェリル様はローレンス様よりも愛犬のベス様に興味があるようですから」
「あ、ああ……まぁ、そうかもな」
トニーは鈍いくせに中々痛いところをついてくる。
「成程!納得しました。それでローレンス様は気合の入ったスーツ姿でシェリル様の前に現れて興味を引こうとされているのですね?」
「う、そ、そうだな……」
トニーは気付いているのだろうか?さり気なく僕のプライドを傷つけているということに。
今回、僕はシェリルからの失礼極まりない手紙を受け取り、ある計画を立てた。
シェリルは僕のことが大嫌いだから婚約破棄をさせて貰うと言ってきた。
シェリルがそんな態度に出るならこちらにだって考えがある。
どんな手段を使ってでもシェリルの気を引き、僕に惚れさせる。
やがてシェリルを落とした暁……今度はこちらから婚約破棄を告げてやるのだ。
見ていろよ、シェリル。
君は僕を本気にさせてしまった。
犬なんかよりも僕の方が魅力的だということを分からせてやる。
どうか婚約破棄しないで下さいと泣きついてきても知るものか。
先に僕のことが大嫌いだと告げてきたのはシェリル、君なのだから。
今更後悔しても無駄だからな……。
窓の外を眺めながら僕がシェリルに勝利?した時のことを想像していた時、花屋の看板が目に止まった。
そうだ!まずは花だっ!
「おい!馬車を止めてくれっ!」
僕は大声を上げて馬車を急停止させると、すぐに扉を開けて花屋へ向かって駆け出した。
「ローレンス様っ!お待ち下さいっ!」
僕の後ろをトニーが慌てて追いかけてくる。
よし!まずは大輪のバラの花束を持ってシェリルに会いに行こう!
待ってろよ!シェリルッ!必ず僕に惚れさせてみせるからな――!
「何だ?」
ガラガラと走り続ける馬車の中、向かい側に座ったトニーが声を掛けてきた。
「いえ……随分気合の入った服装だと思いまして……」
成程、それで先程からチラチラとこちらを見ていたのか。
「どうだ?似合っているか?」
僕が今着ているのは先程のラフなジャケット姿ではない。
棒タイ付きのシャツに上下揃いの縦縞の入ったグレーのスーツ姿なのだから。
「ええ、とてもお似合いですが……一体何故そのようスーツ姿に着替えられたのでしょうか?」
「トニー。お前にしては中々良い質問をするじゃないか」
「本当ですか?ありがとうございます。それで?理由を教えて頂けますか?」
僕に褒められたのが嬉しいのか、トニーは身を乗り出してきた。
「簡単なことだ。落とす為だよ」
「へ……?落とす?何を落とすのですか?」
「何だ?分からないのか?随分鈍いな……。それじゃ尋ねるが、僕達は今何処へ向かっているんだ?」
窓から外の景色を眺めながらトニーに質問した。
今、馬車は石畳が敷き詰められた街中を走っている。馬車道を挟んだ左右には様々な店が立ち並び、多くの買い物客で賑わいを見せていた。
「えっと……シェリル様の住むお屋敷へ向かっているのですよね?」
「ああ、そうだ。なら何を落とすのか見当がつくだろう?」
「う~ん……」
トニーは首をひねりながら暫く考え……。
「すみません、全く分かりません。降参するので教えて下さい」
そして頭を下げてきた。
「何だ?本当に分からないのか?仕方ないな……なら教えてやろう。シェリルを落とすに決まっているだろう?」
「え……ええっ?!シェリル様をですかっ?!」
トニーは余程驚いたのか、目を見開いた。
「ああ、そうだ。シェリルを落とす。僕に夢中にさせるんだ。何しろシェリルは僕にあまり興味が無いようだからな。だけど15年も前から許婚同士なのだから、それは無理もない話かもしれないがね」
トニーに本当のことを話すわけにはいかない。
まさか、許婚から『私は貴方のことが大嫌いでした』なんて手紙を受け取ったなど情けないこと言えるはずもない。
これでも僕にだって男の意地というものがあるのだから。
「はぁ…でも確かにそれは言えるかも知れませんね。シェリル様はローレンス様よりも愛犬のベス様に興味があるようですから」
「あ、ああ……まぁ、そうかもな」
トニーは鈍いくせに中々痛いところをついてくる。
「成程!納得しました。それでローレンス様は気合の入ったスーツ姿でシェリル様の前に現れて興味を引こうとされているのですね?」
「う、そ、そうだな……」
トニーは気付いているのだろうか?さり気なく僕のプライドを傷つけているということに。
今回、僕はシェリルからの失礼極まりない手紙を受け取り、ある計画を立てた。
シェリルは僕のことが大嫌いだから婚約破棄をさせて貰うと言ってきた。
シェリルがそんな態度に出るならこちらにだって考えがある。
どんな手段を使ってでもシェリルの気を引き、僕に惚れさせる。
やがてシェリルを落とした暁……今度はこちらから婚約破棄を告げてやるのだ。
見ていろよ、シェリル。
君は僕を本気にさせてしまった。
犬なんかよりも僕の方が魅力的だということを分からせてやる。
どうか婚約破棄しないで下さいと泣きついてきても知るものか。
先に僕のことが大嫌いだと告げてきたのはシェリル、君なのだから。
今更後悔しても無駄だからな……。
窓の外を眺めながら僕がシェリルに勝利?した時のことを想像していた時、花屋の看板が目に止まった。
そうだ!まずは花だっ!
「おい!馬車を止めてくれっ!」
僕は大声を上げて馬車を急停止させると、すぐに扉を開けて花屋へ向かって駆け出した。
「ローレンス様っ!お待ち下さいっ!」
僕の後ろをトニーが慌てて追いかけてくる。
よし!まずは大輪のバラの花束を持ってシェリルに会いに行こう!
待ってろよ!シェリルッ!必ず僕に惚れさせてみせるからな――!
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