拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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第18話 僕の願い

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「シェリル、次は何処へ行きたい?」

僕達は手を繋いで公園内を散策していた。

「そうですね~…あ!あれはっ!」

突然シェリルが大きな声を上げた。

「何?どうかした?」

「は、はい。あそこのジューススタンドが…そ、その美味しそうで…つい……」

シェリルの顔が真っ赤になっていく。
彼女の視線の先には大きな樹の下で搾りたてジュースを売っている屋台が待機していた。

「もしかして、喉が乾いていたのかい?」

「はい、そうなんです……」

「何だ、だったらもっと早く言えば良かったのに。よし、僕も丁度何か飲みたいと思っていたんだ。一緒に行こう」

「はい」

そして僕はシェリルの手を引いて、ジュースタンドの屋台へ向かった。



「いらっしゃいませ、何にいたしますか?」

屋台に到着帽子をかぶった若い男性がにこやかに声を掛けてきた。

「う~ん……どれがいいかな……」

ジューススタンドのメニュー表を見ながら呟いていると、シェリルが声を掛けてきた。

「ローレンス様、私はオレンジ・ジュースがいいです」

「そうだな…うん、やっぱりいちばんシンプルなオレンジ・ジュースがいいかな?それでは2つ下さい」

「ありがとうございます」

男性店員はハンドジューサーでオレンジを絞ると紙コップに注いでいく。

「まぁ……美味しそうだわ……」

シェリル目をキラキラさせながらその様子を見つめている。

「うん、本当に美味しそうだね」

「はい、どうぞ」

店員が搾りたてのオレンジ・ジュースを差し出してきた。

「どうもありがとう。はい、シェリル」

ジュースを受け取るとすぐにシェリルに手渡した。
続いて僕の分のジュースを受け取ると、店員が笑顔で尋ねてきた。

「お2人は恋人同士ですか?」

「え?!こ、恋人同士だなんて……!」

真っ赤になるシェリルの代わりに頷いた。

「ええ。そうですよ」

「そうですか。お似合いのカップルですね」

「ありがとうございます。自分でもそう思っていますから」

それにしても言葉というものは不思議だ。
口に出せば、本当に僕たちは仲の良いカップルのように思えるのだから。

「ロ、ローレンス様っ!」

シェリルの顔は益々真っ赤になる。

こんなに色々な表情をするシェリルを見るの初めてかも知れない。
そう思うと、胸が再び痛んだ。

僕は今迄15年間も許婚だったのに……一体彼女の何を知っていたのだろう…と。
まさかシェリルの死が身近に迫っていることを知って、こんなにも切ない気持ちになってしまうとは……。

 ベンチに座って笑みを浮かべながらオレンジ・ジュースを飲むシェリルの姿を見つめながら思った。

シェリルの命が消えてしまう、その日が来るまで沢山の笑顔が見たい……と――。

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