貴方誰ですか?〜婚約者が10年ぶりに帰ってきました〜

なーさ

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第一章

接近禁止命令

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ついに接近禁止命令を出す日が来た。あれからつきまといは続いていたもののエドワードさんの、おかげで危険な目に合うこともなく無事過ごせた。私達が呼ばれたのは透明な板越しで話せる部屋。危険なことが起きないようにエドワードさんは部屋の真ん中に立っている。
「こんにちは。私は貴族院安全部のエドワード・サルハンと申します。この度はアーニャ・マンタラ様よりナトリ・サルハン様への接近禁止命令を出したいと思います。双方サインをお願いします。」
「嫌だ!何故に接近禁止命令など出さなこきゃならんのだ!アーニャと私は愛し合っている!」
「ナトリ・サルハン様。接近禁止命令を出してほしいと申請するのはアーニャ・マンタラ様側ですが最終的に出すかどうかの判断は担当者にかかっているのです。今回私どもの方で調査した結果ナトリ様にはいくつかの罪状がありました。接近禁止命令を出すのは被害者側に何か明らかな迷惑行為があったりする場合です。ナトリ様の場合公共失言罪や国宝損壊罪や悪質な付きまとい行為と判断したため接近禁止命令を決定いたしました。これに背くのであれば徹底的に裁判することになります。アーニャ・マンタラ様側はそれを望んでおりませんので速やかにサインしてください。」
「クソっ…アーニャ。何かの間違いだよね?私とアーニャは愛し合っているよね?10年間寂しかったからって接近禁止命令はだめなんじゃないかな?ね、アーニャ取り消してよ?ねー?」
「いい加減にしろ。」エドワード様がドスのきいた声でそう言った。
「あくまで接近禁止命令は非力な女性が危険な目に合わないようにする一種の命令です。これに貴族の位も関係なく貴族院側が接近禁止命令を出すのにふさわしいと判断したらもうその時点で貴族院の犯罪者予備軍には入っています。今ナトリ様に対して何ののお咎めもないのは英雄として戦った過去があるからです。一般的な場合は接近禁止命令を出したあとに付きまとい等あれば忠告それでもあれば警告そして最後に逮捕となります。警告の時点で周りの貴族たちに話を広まるようになるため逮捕される事例は多くはありませんがナトリ様には逮捕される罪状がたくさんあるので。」
「お前…。この私にそのような口を聞いていいのか…!?」
「私は貴族院職員ですがそれ以上に貴方の家と同じ伯爵家の人間です。別に敬わなければいけない相手ではありません。お分かりになりました?」
「ナトリ・サルハン様。私とナトリ様が婚約していたのは2年前までです。私はその後記憶を失い貴方のことも家族のことも友人も思い出も全て忘れていました。だから貴方の印象は最悪でした。もしかしたら記憶を失う前の私は貴方のことが好きだったかもしれない。だから頑張ってみました。でも花を壊したり夜会で妻だと言ったり。嫌悪感しかありません。だから接近禁止命令を出したんです。」
「嫌、悪、感、」
「ナトリ様が婚約していたのは記憶のあるアーニャです。私はもう貴方と婚約続行することは何があっても嫌です。無理です。」
「分かった。アーニャ。とりあえず接近禁止命令は受け入れる。でももし寂しくなったら俺のところにいつでもおいで?待ってるから。」
「ではサインをお願いします。」
「はい。」
「これで接近禁止命令が有効になります。ナトリ様側が手紙・公共の場での失言・及び迷惑行為に当たるものは全て逮捕状ができ次第逮捕となるのでご了承ください。」
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