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告白というより
しおりを挟むベネディクトの告解のような告白を聞いて、ティターリエは目を瞬かせた。
「・・・殿下がどうして謝罪を・・・いえ、それよりも、好きになってとは・・・それはまさか、殿下が私をお望みくださっていたと、そういうことを仰っているのでしょうか・・・?」
「ああ。そういうことを言っている。でも、最初からタイミングが合わなかったんだ」
それからベネディクトは色々と打ち明けた。
母王妃が主催した茶会の趣旨。一度目の茶会で会ったティターリエに恋をしたこと。
侯爵に婚約を打診したときのことと、その後の彼の嘘まみれの言動。
ティターリエが誘拐されたと聞いて、こっそり自分の護衛騎士を派遣して調べさせたこと。
そうして彼らが掴んできた情報を繋ぎ合わせていくうちに、侯爵の偽証に気づき、罪を確定する為の証拠固めと称して、ティターリエの捜索を王国騎士団が行ったこと。
「最初は、アンナのことを死ぬほど憎んだよ。よくも僕の大事な婚約者候補を・・・ってね。いや、違うな。アンナがあなたを屋敷から連れ出した意図に気づいたのはつい最近だから、だいぶ長く恨んでいたかもしれない」
ベネディクトの言葉に、ティターリエは「そうだったのですね」と目を伏せた。
王子に見初められるのは、貴族令嬢として光栄なことである。厳しい淑女教育を受けていたティターリエは、その意味を理解しているし、好意を向けられたことを純粋に嬉しいと思う気持ちもある。そう思いつつも、とにかく今は色々な事情が重なって、無邪気に王子の好意に頬を染めてはいられない。
諸々の事情を呑み込んだ複雑な表情で、ティターリエはベネディクトを見た。
「殿下に謝罪していただく必要はございません。殿下はなにも間違ったことをしておられませんもの」
「僕があなたを探そうとしたから、今あなたはあの家とアンナから離されてここにいるのに?」
「アンナを治療してくださったと聞いています。それに、探そうとしてくださったそのお気持ちを有り難いと感じておりますわ。
もしアンナではない者に連れ去られていたら、私は地獄を見ていたに違いありませんから」
「それはそうかもしれないけど・・・それだけではないんだ。その、色々と発覚したことで・・・」
口ごもるベネディクトに、ティターリエは問う。
「・・・もしかして、ライツェンバーグ侯爵家のことでしょうか? 父の罪で取り潰しになるのですか?」
「っ、いや、取り潰しではないが・・・ただ、君のお父上は侯爵ではなくなると思う」
「王家に偽りを語ったのですもの。当然の処罰ですわ」
ああでも、とティターリエは頬に手を当て、首を傾げた。
「弟はまだ三歳ですから、親類が爵位を得ることになるのでしょうか」
「・・・」
「後継になれる息子がやっと生まれたと父はあんなに喜んでたのに、不思議なものですね。その父の行いで、弟は継ぐ家を失くすことになるなんて」
「・・・あなたも、侯爵令嬢ではなくなってしまうよ?」
「私は、二年前からもう侯爵令嬢ではありません。今さら気にしたりはしませんわ。
それより、アンナのことを教えていただけませんか。私を連れ出した意図を理解していただいたとしても、アンナは罪に問われてしまうのでしょうか」
じっとエメラルドの瞳に見つめられ、ベネディクトはこんなときなのに頬がじわじわと赤くなる。
「・・・ええと、正直に言うと、このままなかったことにするのも、もちろん出来なくはない。だけど、それは少し危険があるみたいでね」
「危険、ですか・・・?」
「ああ。ライツェンバーグ侯爵に処罰を下すとき、あるいは下した後に、彼がアンナの名前を口にする可能性がある。
そうなった場合、今度はアンナの罪をもみ消した王家に疑惑の目が向けられてしまう。もちろん、父上はそうならないよう手を回すつもりでおられるけれど、何事も万が一があるからね」
なんらかの罰を与えた形にしないと、後々に面倒が起きる可能性がある、と言われてしまえばその通りで、ティターリエは仕方ないと肩を落とした。
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