【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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「まぁまぁ、今日はこんな朝からおいで下さったのですね。助かりますわ。ねぇ、エレアーナさま?」

なぜかやたら嬉しそうなアリエラに、少々戸惑いながらもエレアーナは答える。

「そうですね。レオンさま、ケインさま、そしてライナスさま、今日は早くからありがとうございます」
「礼なんていらないよ。今日はたまたま時間が空いててね、行くところができて、僕たちもちょうど良かったんだ」
「荷物運びでも、テント設営でも、くぎ打ちでも、何でもしますから言ってくださいね。オレそういうの慣れてるんで」

先月の南区の孤児院で開催したバザーに引き続き、今回の北区、ホルヘ孤児院でのバザーにも、レオンたちはやって来た。

但し、今回は客ではなく、一参加者、お手伝い要員として。
しかも開催時刻よりもずっと早い時間に到着して待機していた。

エレアーナの知らない間に、レオンたちは何回かホルヘ孤児院に足を運んでいたようで、子どもたちは3人の顔を見るなり喜んで飛びついていた。

まぁ、いつの間にあんなに仲良く……。

やはり男性に対しては遠慮がないのだろうか、子どもたちはエレアーナといるときの様子とまったく違っていて。

「……小さな子どもたちと遊ぶ麗しい殿方たち。なんて素敵な光景なんでしょう……」
「えぇ、本当、尊いわ……」

例によって、隣でマスカルバーノ姉妹2人が感動して盛り上がっているが、エレアーナはもう突っ込むことはやめにした。

そしてそのまま、子どもたちと遊ぶレオンやケインたちを黙って眺めることにしたが、腕にしがみついたり、背中にのっかったり、肩までよじ登ろうとしたりと、なかなかなもので。

うーん、ワイルドさが半端ない。

そうよね、子どもだもの。
目いっぱい体動かしたいわよね。

……でも、王族や高位貴族の方々相手にタックルをかますって、ちょっと、いえ、かなり大問題じゃないのかしら……?

ふと心配がよぎるも、あの3人が子どもたちを不敬罪に問うような方々ではないことは、もう十分すぎるほど知っているから。
その器の大きさに、心の中で、改めて感謝して、甘えることにした。

「お疲れさまです。みなさま、子どもたちにすっかり懐かれてましたね」
「本当ですわ。子どもたちもいつもより元気いっぱいで、なんだかとても嬉しそうでした」

エレアーナたちの護衛に加え、レオンたち3人の男手が加わったことで、屋台や販売会場などの準備も通常より早く終わり、開場前に少し休憩を取ることができた。

「ライナスさまは、木みたいによじ登られてましたわね」
「ああ、あれね。ほんと、子どもって元気ありあまってますよね~」

ライナスは肩をくるくると回しながら、にかっと笑う。

「そうそう、それでオレ、ちょっと思ったんですよ。孤児院の子どもたちに、何かもっと体を動かす機会があるといいんじゃないかって」

ライナスの言葉に、隣に座っていたレオンとケインが反応する。

「なるほど、それはいいかもしれない。子どもたちにも運動は必要だし、体も強くなるしね」
「……走り回るだけでは長く続かない。庭に運動目的を兼ねた遊具を置いてみるのはどうだろう」
「ああ、それいいね、ケイン。遊びと運動を兼ねるわけだね。うーん、そうすると、小さい子でもケガしないで楽しめるように考えないといけないね。形状はなるべくシンプルにした方がいいかな」
「大きければ共有できるが、小さいものなら数も必要になるな」
「確かに。庭のスペースのことも考えに入れとかないとね。城に戻ってから、もっとよく調べてみよう」

冷たい水で喉を潤しながら、あっという間に子どもたちの健康と福祉を考えた案件が一つ、話し合われるのを目撃して。
彼らのその視点に、子どもたちへの気遣いに、とても驚いてしまった。

前からお優しい方々だったけど、でもどこか、少し……変わった?

なんだか知らない人を見ているような、不思議な気分になって。

男の方って、こうなのかしら。
こんな、急に、大人になる、みたいな。

いつもと同じ、なのに、どこかがものすごく違う。

ぱちぱちと目を瞬かせているエレアーナをよそに、いつのまにか、男性陣はまた子どもたちにもみくちゃにされていて。

ケインの腰に下がる短剣を男の子が珍しそうに指でつつく様子に気づいて、ライナスがどこからか長い木の枝を2本拾ってきた。

「よーし、いっちょやってみるか?」

棒をかまえて笑いかける。その子も真似して両手で棒を構えて。
2人とも、目がきらきらしている。

ふふ、嬉しそう。そうよね、男の子って剣士とか騎士とかにあこがれるよね。

……と、そのときふと、閃いて。

「あの、希望する子たちに、剣を教えるのはどうでしょうか?」
「「え?」」

ライナスさまと男の子が、声を被せて同時にこちらを見る。
続けてレオンさまとケインさまも。

「えぇと、ちょっと待って。……いや、でも……うん、確かに体を動かせるし、自分の身も守れるようになる、か。それに、もし適性があるとわかれば……」
「……騎士になる道が開かれるな」
「うん。それに、たとえ騎士になれるほどの適性がなかった場合でも、剣の心得があれば……街の自警団として働ける……かも」

ぶつぶつと話し込む2人をよそに、棒を持った男の子が大声で叫ぶ。

「きしー? ぼく、なるー! きしになりたーい!」

2人の話にライナスも入ってくる。

「あの、だとしたら、なんですけど……、子どもたちを教える程度だったら、引退して平民にもどった元騎士たちでも、できるんじゃないですかね?」
「……なるほど」
「……例えば、負傷などで騎士職を降りた者……とか?」

レオンとケインが顔を見合わせて頷く。

「福祉教育活動にも貢献できるし、再雇用や人材発掘にもなる。一石二鳥どころじゃないな。さすがだね、エレアーナ嬢」
「ああ」
「いやー、大したもんですね」

……え? 私?
……いやいやいや、違うでしょ。今のどう考えても私ではないですよね?

レオンさまやケインさまたち、みなさんが言ったことでしたよね?
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