【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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お前はそれでいいんだよ

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なんか、今日の展開が凄い。
怒涛の一日ってやつ? 

朝一番に、エレアーナ嬢襲撃事件の首謀者と実行犯とのよくわからない仲間割れの話を聞いたかと思ったら、ラスボスは賢者くずれと対決しなきゃいけないっていうし。
殿下とケインにくっついてブライトン邸に行ったら、エレアーナ嬢のほっぺたは真っ赤に腫れてるし、挙句、殿下は何やら難しい事を言いはじめるし。

オレ、騎士だからね。
難しい話は、あまり、わからないのよ。

というか、剣の話しか興味ないっていうか・・・って、何言い出してんの、殿下?

陛下は、殿下の婚約者をまだ決めるつもりじゃなかったって。

なになに? オレの聞き間違い?

・・・違う。殿下、マジで言ってる。

その後、オレは殿下の言葉から、王族としての覚悟を知った。
正直、そんなに深く、オレたち臣民のことを考えてくれていたなんて、思わなかったから。

なんか、陛下ごめんなさい、ありがとうって感じで。

でも、まぁ、とにかく、殿下の婚約者は、今はまだ、見つけない方が良かったみたいで。
婚約者探しの話を囮にするところを、婚約者本人が囮になっちゃったっていうか。

殿下はそれを、自分の失敗だって謝るんだけど。
ついでに、さらっと真顔でのろけるんだけど。

別に言わなきゃバレなかったのに、って、オレなんかは思っちゃうんだけどな。

なんだろう、やっぱり次期国王として、清廉潔白であろうとしているのか、それとも何か、人としての矜持があるのか。

・・・なんて、真剣に考えてけど、途中からオレ、わかっちゃったんだよね。
これは別に、次期国王として人として云々うんぬんとかじゃなくて(いや、それもあるんだろうけどさ)、ただの男としての意地なんだって。

だって、わざわざ婚約話を白紙に戻すって言うんだよ?
あんだけ、のろけといて。
挙句、白紙に戻したそばから、改めて告白してさ。

ケインに、次はお前の番だって、煽ってるし。

意地っ張りも、ここまでくるとすごいよ。ある意味、尊敬するよ。

ていうか、オレだったら、ライバルにチャンスなんてやらないしね、絶対。
取られたくないもん。

・・・いや、でも。
もしかして、もしかしてだけど。

・・・ホントは、自分よりそいつの方が好きなんじゃないかって、その後も、ずっと心配しながら彼女と一緒にいる方が辛いって、ことなのかな。

・・・うん、それはちょっと、わかるけど。
でも、それでもオレは、ここまで思い切ったことは出来ない、だろうな。

殿下がエレアーナ嬢の前に跪いて、手に取った彼女の髪に口づけを落とす姿は、まるで古代の芸術作品みたいで、なんだか神聖さすら感じて。

わぁ~、絵になるな~・・・なんて感心してたけど。
・・・けど。

今、気づいちゃった。
これ。

ケインもやるの? え? 出来るの?

殿下の愛の告白の後に、こんな照れもなく、さらりと、甘い言葉を囁ける美少年王子の後に、(イケメンだけど)無骨なお前が、告白するの?

えええ~っ? やる? やるの?

ううっ。なんか急に観客気分になってきちゃったよ。
ああ、不謹慎でスミマセン。

どうにも気になって、さり気なく、隣のケインの様子を伺ってみると、・・・なんか固まってるし。

あ~あ、こいつも、気がついちゃったんだな。

どうすんだろ。ここで逃げたら、もう勝負は終わったようなもんだけど。
ていうか、ぶっちゃけ、終わりだけど。

こっちをちらりと見たから、激励を込めて、にっこりと笑ってやった。
なのに、なんでだよ。なんかムッとして、あっち向いちゃうし。

オレ、立場ビミョーなんだからな。
お前のことは可愛い弟分だと思ってるし、でも殿下もなんか応援したくなっちゃうし、それによく考えたら、殿下ってオレの主だし。

お前を応援するのも勇気がいるんだぞ。

・・・なんて思ってたら、来ちゃったよ。順番。

殿下がケインの前に立って、さらに挑発する。
なんだろ。殿下、ここに来て更にひと皮むけた?

甘いだけの雰囲気じゃなくなって。
甘いんだけど、しなやかっていうか。

殿下って、実はすっごいメンタル強い人なんじゃないの?

対するケインは、ギコギコと、音が鳴りそうなくらいのぎこちなさで立ち上がる。

うわ~、大丈夫かよ? お前。

でも、やっぱり殿下は、ケインに弱くて甘い殿下でもあって。

「負けるつもりはないからね。せいぜい格好いい台詞で告白しておいで」

そんな敵に塩を送るような、男らしい激励の言葉で、ケインを煽るのだ。

それを聞いたケインの顔つきが、きゅっと締まる。

レオンからの告白だけで、もう真っ赤っ赤になってるエレアーナ嬢の元に、ゆっくりと歩み寄って、膝を折る。

お前も相当なイケメンだからな。負けず劣らず絵になるよ。

でも、その後が、・・・やっぱり、ケインで。
言葉が、たどたどしくて、途切れ途切れで、なかなか出てこない。

ああ、でもなぁ。
・・・うん、でも、いいんじゃないか。お前は、それで。

ちらり、隣に並ぶ殿下の様子を覗き見る。

うん、思った通り。
なんか嬉しそうに笑ってる。

そうだよ、ケイン。
お前は、それで、いいんだよ。

美しい言葉を流れるように語るよりも、心に浮かんだことを、ひとつひとつ、ゆっくり紡ぎだしていけば。

エレアーナ嬢なら、きっとわかってくれるから。
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