【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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友人には恵まれまして

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デビュタントを迎え、社交界の仲間入りを果たしたエレアーナは、一つ重要な事実を知った。

それは、自分は友人に恵まれた、という事。

エレアーナ自身、社交が好きなタイプではなくて。
デビュー以降は夜会にも顔を出さなければならないが、それまでは家同士のお茶会にも参加する事は殆どなかった。

病院や孤児院、学校などの慰問や支援で忙しかったから。

王太子の婚約者候補としての顔合わせすら、欠席を繰り返してきたくらいだ。

マスカルバーノ家の令嬢たちが訪ねてくるまでは、実際、令嬢方の誰とも交流がなかった。

だから、社交が何たるかを身をもって知ったのは、デビュタント以降のことで。

遅ればせながら、やっと知ったのだ。

良縁を望む貴族や令嬢たちの羨望や嫉妬が、当たり前のようにそこら中にあるという事を。

「あんなの普通ですわよ。大抵の令嬢はやっている事ですわ。エレアーナさまのように呑気な方は、そうそういらっしゃらないもの」

当たり前だと呆れ顔で話すのはシュリエラで。
その横で、苦笑しているのがアリエラたちだ。

エレアーナは、ケインバッハの婚約者である。
そして、ケインバッハはこの国の宰相の一人息子で。

有能で地位の高い父親を持ち、ケインバッハ自身も文武両道の誉れが高く、彫刻像のような見目も麗しく、夜会の場では遠くから見惚れている令嬢たちも多くいる。

王太子の親友であり、側近として仕える一の臣下で。

更にロッテングルム騎士団長のお気に入りで、王太子付きの護衛ライナスバージの弟分でもあって。

これでもか、とばかりに良い条件が付きまくりの超優良物件だったらしい。

だが、無口で無表情のケインバッハは、これまで常に王太子の側に控え、どの令嬢も近づける事をせず、ある意味、令嬢たちは、まだまだフリーの状態が続くと安心しきっていた。

そこに。
突然、婚約者が現れたのだ。

しかもお相手は、王太子呑気婚約者になるだろうともっぱらの噂だったエレアーナ・ブライトン公爵令嬢で。

噂とは異なり、彼女が収まったのは王太子の婚約者ではなく、宰相の一人息子、ケインバッハのは婚約者の座だった。

王太子の婚約者となる事を願っていた者たちにとっては朗報だったが、ケインバッハを密かに慕っていたかなりの数の令嬢たちは、嫉妬の炎を燃え盛らせたようで。

そういう訳で、ささやかな意地悪やちょっとした陰口などが、絶賛進行中な訳だ。

まぁ、エレアーナは、正直、驚きはしたものの、気にもしていない訳だが。

咎めるのが難しいほどの、小さな小さな嫌がらせ。
騒ぎ立てる方が狭量だと、言われてしまう程度の。

「まぁ、確かにそういう事はよくありますわ。シュリエラさまのように、正々堂々と真正面から突っ込んで来て喧嘩を仕掛ける無謀な方なんて、普通いらっしゃいませんもの。大抵は陰でこそこそと、つまらない事をやるのですわ」
「何だか、人をイノシシのように言われた気がするのですけれど」
「とんでもございませんわ、シュリエラさま。わたくしは褒めたのでございますよ? 分かりやすく、人目にもつきやすい攻撃をして下さるなんて、周りが動きやすくて、こちらとしては有難いだけですもの」

最近、アイスケルヒと親しくしていることで、こちらも同じく嫌がらせの渦中にあるアリエラは、にっこりと微笑んだ。

「まぁ、気にする必要はありません。自分が選ばれなかったからといって、陰でこそこそつまらない嫌がらせをやる人間の器の大きさなど、たかが知れていますわ」
「そうですわ、エレアーナさま。そういう時は、にっこり笑ってデュールを頭からかけてやれば良いのです」
「・・・それはお止めなさいませ、シュリエラさま。あからさまで分かりやすい仕返しは、相手にとって好都合だとお話したばかりではありませんか」

以前よりは丸くなったとはいえ、感情をストレートに出す素直すぎる性格はそのままで、正面から返り討ちにする気満々のシュリエラに、アリエラたちは苦笑するしかなく。

それでも、今回シュリエラが怒っているのは、エレアーナのためで。
それが分かっているから、皆もきつく言えないで、つい笑ってしまうのだ。

「ふふ、皆さま、ありがとうございます。こんなに心配していただけて、わたくしは幸せ者にございますわ」

嬉しそうなエレアーナに、その場にいる皆が笑顔に包まれる。

しかし、そこでアリエラは何かに閃いたようで、いきなり妹の方に向き直る。
目をきらりと輝かせながら、頬に手を当て考え込むような仕草でこんな事を呟いた。

「ケインバッハさまの婚約者で、令嬢たちがこれだけ騒ぐのだもの、レオンハルトさまの婚約者になる方はきっともっと大変でしょうね。お相手のご令嬢は、嫉妬の炎で焼き殺されないよう気をつけないといけないわ。ねぇ、貴女もそう思うでしょ? カトリアナ」
「・・・え? ええ。そうですね、お姉さま」

姉からの揶揄いまじりの脅迫に、顔面蒼白になるカトリアナであった。
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