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式場にて
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花嫁の入場を告げる鐘の音と共に扉が開く。
場内の視線が、一斉に花嫁に集中した。
カツン、と靴の音が響く。
エレアーナは、扉の開いた先、通路の奥に立つ花婿、ケインバッハを見つめていた。
そして我知らず、幸せそうな笑みを浮かべる。
真っ白の礼服がケインの艶やかな黒髪を際立たせ、そこに佇む姿はまるで芸術作品のようだ。
その姿に、エレアーナはつい見惚れてしまう。
ああ、ついに貴方のもとに嫁ぐのね。
白銀のドレスに身を包んだ私を見て、貴方は眼を大きく見開いて。
それから幸せそうに微笑んだ。
そんな無防備な表情を私だけに見せてくれる貴方が大好きで。
大好きで、大好きで、仕方なくて。
信じてくれるかしら。
私もずっとこの日を待っていたのよ。
沢山の参列者たちの横をゆっくりと通り過ぎる。
一歩ずつ貴方のもとへと近づいていく。
ねぇ、初めて会った時、貴方は私を見て何か感じてくれた?
殿下の後ろに控えていた貴方は、最後に少しだけ会話に加わってくれたわよね。
最初の頃は、表情を決して崩さない貴方が何を考えているのか、いつもすごく不安だった。
普段の無表情の陰に、沢山の感情が隠されている事に気づいたのはいつだったかしら。
カツン。
靴の音が止まる。
今、目の前に貴方がいて。
嬉しそうに、優しそうに、私に微笑みかけてくれる。
私が今どれだけ幸せか、貴方にはわかるかしら。
「・・・エレアーナ」
「はい」
「・・・俺の花嫁はこれほどまでに綺麗な女性だったんだな。もう十分にわかってたつもりだったのに、想像以上に美しくて驚かされる」
「まぁ」
くすくすと笑う私を見つめるケインさまの瞳は、どこか熱がこもっていて。
私の肩に手を置いて、それまで笑んでいた口元がきゅっと引き締まる。
「・・・誓いの口づけをさせてくれ」
そう私に告げると、ケインさまの顔がゆっくりと落ちてきて。
私はそっと目を閉じた。
「エレアーナさま。なんて綺麗・・・」
うっとりと呟くカトリアナを見て、レオンハルトは優しく微笑んだ。
「ふふ、そうだね。本当にお似合いの二人だ」
レオンたちは、王族の席から誓いの口づけを交わす二人を見つめていた。
他の参列者よりも高い場所にしつらえられたその場所からは、会場全体が見渡せる。
今日は、一番の親友と自身の初恋の女性ひととが結ばれた特別な日で。
国内外を問わず様々な立場の人がここに集っている。
見知った顔、久しぶりに見る顔、初めての顔と様々だ。
・・・純粋に結婚を祝うために集まってくれた者たちばかりならばこの上なく嬉しい事なんだけどね。
そう願いたいところだが、王族の一員として、そんな甘い考えばかりを抱いてはいられない。
父が守ってきたこの国の平和を、次に守り繋ぐのは自分なのだから。
こんな日にまでリュークたちに忙しく働いてもらうのは、本当に心苦しいのだけれど。
騎士たちは勿論、諜報機関の者たちも総動員で警護に当たってもらっている。
ラファイエラスさまが守ってくれたこの国の平和を。
エレアーナ嬢が自身を危険に晒してまで炙り出してくれた害悪を。
時間の経過と共にうやむやにしてはいけないから。
レオンハルトの視線が、ふとアリエラの腕に止まる。
その中には穏やかに眠る赤子がいた。
いつか、エレアーナ嬢も子どもを産むだろう。
いつか、カトリアナも僕の子を産んでくれるだろう。
その時、僕らの子どもたちが、あんな風に母の腕の中で穏やかに眠ってくれたらいい。
レオンハルトは、そう願った。
カトリアナの背後で護衛として控えながら、アッテンボローの視線は一人の女性を追っていた。
大勢の中でも目を引く美貌。
凛と立つ姿は、以前と変わらず気高くて。
貴女ほど朝焼けの色が似合う女性はいない。
その髪色のような鮮烈な輝きが、彼女そのものを表しているようだ。
周囲に視線を走らせて、その隣に親族以外の男性が座っていない事に安堵する。
出会ってすぐに自分の気持ちを自覚して。
なのにそれを押し殺して、卑下して、いじけて、周りを羨んで。
でもエレアーナ嬢が、シュリエラ嬢が、カトリアナ嬢が、そしてライナスバージの言葉が。
その何気ない一言が。
少しずつ染み透って、心の中に溜まっていって、自分を少しずつ変えてくれた。
『実際に努力したのは貴方よ』
『賢者くずれは、わたくしの父が呼び寄せたのです』
『自分が成し遂げてきた事に自信をお持ちください』
『オレの憧れなんだよ』
そうやって最後にようやく、他の男に手折られてもいいのかと、思える程になって。
なのに、それからは護衛の任務やら、新しい警備体制を敷くやらで、碌に時間も取れなくて、結局、あの後なかなか会う機会がないまま。
もう遅すぎるだろうか。
君はもう、誰かに手折られてしまっただろうか。
そうでないことを願いつつも、もしそうなってしまっていたら。
その時はせめて、想いだけでも伝えさせてほしい。
貴女が好きだ、と、ただその一言を。
場内の視線が、一斉に花嫁に集中した。
カツン、と靴の音が響く。
エレアーナは、扉の開いた先、通路の奥に立つ花婿、ケインバッハを見つめていた。
そして我知らず、幸せそうな笑みを浮かべる。
真っ白の礼服がケインの艶やかな黒髪を際立たせ、そこに佇む姿はまるで芸術作品のようだ。
その姿に、エレアーナはつい見惚れてしまう。
ああ、ついに貴方のもとに嫁ぐのね。
白銀のドレスに身を包んだ私を見て、貴方は眼を大きく見開いて。
それから幸せそうに微笑んだ。
そんな無防備な表情を私だけに見せてくれる貴方が大好きで。
大好きで、大好きで、仕方なくて。
信じてくれるかしら。
私もずっとこの日を待っていたのよ。
沢山の参列者たちの横をゆっくりと通り過ぎる。
一歩ずつ貴方のもとへと近づいていく。
ねぇ、初めて会った時、貴方は私を見て何か感じてくれた?
殿下の後ろに控えていた貴方は、最後に少しだけ会話に加わってくれたわよね。
最初の頃は、表情を決して崩さない貴方が何を考えているのか、いつもすごく不安だった。
普段の無表情の陰に、沢山の感情が隠されている事に気づいたのはいつだったかしら。
カツン。
靴の音が止まる。
今、目の前に貴方がいて。
嬉しそうに、優しそうに、私に微笑みかけてくれる。
私が今どれだけ幸せか、貴方にはわかるかしら。
「・・・エレアーナ」
「はい」
「・・・俺の花嫁はこれほどまでに綺麗な女性だったんだな。もう十分にわかってたつもりだったのに、想像以上に美しくて驚かされる」
「まぁ」
くすくすと笑う私を見つめるケインさまの瞳は、どこか熱がこもっていて。
私の肩に手を置いて、それまで笑んでいた口元がきゅっと引き締まる。
「・・・誓いの口づけをさせてくれ」
そう私に告げると、ケインさまの顔がゆっくりと落ちてきて。
私はそっと目を閉じた。
「エレアーナさま。なんて綺麗・・・」
うっとりと呟くカトリアナを見て、レオンハルトは優しく微笑んだ。
「ふふ、そうだね。本当にお似合いの二人だ」
レオンたちは、王族の席から誓いの口づけを交わす二人を見つめていた。
他の参列者よりも高い場所にしつらえられたその場所からは、会場全体が見渡せる。
今日は、一番の親友と自身の初恋の女性ひととが結ばれた特別な日で。
国内外を問わず様々な立場の人がここに集っている。
見知った顔、久しぶりに見る顔、初めての顔と様々だ。
・・・純粋に結婚を祝うために集まってくれた者たちばかりならばこの上なく嬉しい事なんだけどね。
そう願いたいところだが、王族の一員として、そんな甘い考えばかりを抱いてはいられない。
父が守ってきたこの国の平和を、次に守り繋ぐのは自分なのだから。
こんな日にまでリュークたちに忙しく働いてもらうのは、本当に心苦しいのだけれど。
騎士たちは勿論、諜報機関の者たちも総動員で警護に当たってもらっている。
ラファイエラスさまが守ってくれたこの国の平和を。
エレアーナ嬢が自身を危険に晒してまで炙り出してくれた害悪を。
時間の経過と共にうやむやにしてはいけないから。
レオンハルトの視線が、ふとアリエラの腕に止まる。
その中には穏やかに眠る赤子がいた。
いつか、エレアーナ嬢も子どもを産むだろう。
いつか、カトリアナも僕の子を産んでくれるだろう。
その時、僕らの子どもたちが、あんな風に母の腕の中で穏やかに眠ってくれたらいい。
レオンハルトは、そう願った。
カトリアナの背後で護衛として控えながら、アッテンボローの視線は一人の女性を追っていた。
大勢の中でも目を引く美貌。
凛と立つ姿は、以前と変わらず気高くて。
貴女ほど朝焼けの色が似合う女性はいない。
その髪色のような鮮烈な輝きが、彼女そのものを表しているようだ。
周囲に視線を走らせて、その隣に親族以外の男性が座っていない事に安堵する。
出会ってすぐに自分の気持ちを自覚して。
なのにそれを押し殺して、卑下して、いじけて、周りを羨んで。
でもエレアーナ嬢が、シュリエラ嬢が、カトリアナ嬢が、そしてライナスバージの言葉が。
その何気ない一言が。
少しずつ染み透って、心の中に溜まっていって、自分を少しずつ変えてくれた。
『実際に努力したのは貴方よ』
『賢者くずれは、わたくしの父が呼び寄せたのです』
『自分が成し遂げてきた事に自信をお持ちください』
『オレの憧れなんだよ』
そうやって最後にようやく、他の男に手折られてもいいのかと、思える程になって。
なのに、それからは護衛の任務やら、新しい警備体制を敷くやらで、碌に時間も取れなくて、結局、あの後なかなか会う機会がないまま。
もう遅すぎるだろうか。
君はもう、誰かに手折られてしまっただろうか。
そうでないことを願いつつも、もしそうなってしまっていたら。
その時はせめて、想いだけでも伝えさせてほしい。
貴女が好きだ、と、ただその一言を。
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