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駄々漏れの気持ち
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「賢者くずれを狙う奴らについての報告は関係者以外には他言無用だよ」
「は」
ケインたちが退室した後、レオンハルトはライナスバージに向かって静かに言い渡した。
「念のために伺いますが、他にこの情報を知る者たちは何人ほどでしょう?」
「父と叔父上、それから勿論リュークザインとベルフェルトに彼らが使う諜報員たち、あとは騎士団長とアッテンボロー、かな」
「ああ、アッテン。そういえばシュリエラ嬢の護衛も兼ねるんでしたっけ」
「うん。今回は賢者くずれの居場所を知る者として最も狙われやすいのがリュークザインとベルフェルトだろ? ベルフェルトには親しい身内はいないが、リュークザインにはシュリエラ嬢がいる。彼女にまで手が伸びる可能性がないわけじゃないからね」
「まあ、でも」と続けて、何やら含みのある笑みを浮かべる。
「な、なんですか」
怖さ半分、興味半分で続きを促すと、少し呆れたような声が返ってきた。
「護衛がつくのを不自然に思わせないためだけに、普通、お見合いなんかさせないよね? まったく、分かりにくい兄心だよ。というか、分かりにくすぎ」
報告書をペラペラめくりながら、呟く。
「妹が可愛くて仕方ないんなら、素直にそう言えばいいのにね」
「全くですね。まぁ、それがリュークザインらしいっちゃ、らしいんですけど」
「うん、まあね」
「あ、そういえば・・・婚約者殿の方は大丈夫なんですかね? ほら、リュークザインの」
「ああ、ラエラ嬢?」
その名前を聞いて、ぷっと吹き出すように笑う。
「殿下?」
「ああ、ごめん。大丈夫だよ、彼女は。何も心配いらない」
「? ・・・そうなんですか?」
このときのライナスは、ラエラのことをまだよく分かっていなかったから、的外れの心配をしていたのだが。
やがてその実力を目の当たりにすることになる。
だが、それはまだ先のこと。
アッテンボローは、顔に熱が集まるのを感じていた。
先ほどから、ずっと手をにぎにぎされているのだ。
「・・・あの、シュリエラ嬢?」
「なんですの?」
「えと、何をしてるのかな? 君は」
「何のことです?」
「あの・・・俺の手。・・・ずっと握ってるけど」
「!」
自覚がなかったようで、そこでぱっと握っていた手を離す。
「軽々しく手に触れるものではありませんわ」
「・・・いや、触ってきたのはシュリエラ嬢の方だが」
「そういう話をしているのではありません!」
「ええ?」
もの凄い剣幕で捲し立てられ、アッテンボローは返答に窮する。
「意味もなく殿方の手に触れるようなはしたない真似など、わたくしは致しませんわ。だ、だからといって、指の傷を確認していたとか、そういう事でもありませんわよ? これは・・・これは、そう、そうですわね、手の大きさを確認しておりましたの」
「・・・えと、それは何のためにかな?」
アッテンボローは、この会話に面白味を感じ始め、軽い気持ちで質問を投げかけた。
だが、ここで突っ込まれることはシュリエラにとって予想外だったようで。
「何のため? ええと、ええと、そうですわね。何のためかと申しますと、それは・・・」
「それは?」
ふんぞり返りながらも視線を泳がせる様がとんでもなく可愛らしい、とアッテンボローは心の中でほくそ笑む。
「て、掌で物の大きさ測ることが出来ると、前にエレアーナさまにお聞きした事があるのです! それで、男性と女性の掌のどちらで測るのかと気になりまして」
「それで俺の手をずっと握りしめていた、と?」
「握りしめていたのではありません。掌の大きさを確認していたのです」
「そうか、俺の誤解だったんだな。刺繍で怪我した指先の傷を気にしてくれたのかと喜びかけたのだが」
「・・・自惚れないでくださいな。その傷は、刺繍が下手なくせにやると貴方が言ったせいで出来たものでしょう?」
「そうだな。君の言う通りだ」
もう可笑しくて堪らなかった。
この勝ち気な女性は、手を握った理由を誤魔化す事だけに必死で、奥のテーブルでお茶を飲むカトリアナ嬢が懸命に笑いを堪えているのにも気付かない。
「分かっていただけたのなら良いのです」
「ああ、よく分かった」
ぶい、と横を向いた彼女の手を、今度は俺がきゅっと握る。
「な?」
「ん? まだ測り終えてなかったみたいだから」
一瞬でシュリエラの顔が赤く染まる。
分かりやすすぎ。
可愛いすぎ。
成程ね。
こういう事か。
今なら、すぐにケダモノ化する殿下の気持ちが分かる気がする。
俺の手を振り解くこともせず、ただ口をぱくぱくさせるシュリエラに、俺はにっと笑いかけて。
「ほら、君もちゃんと握り返して? ちゃんと大きさを測らないと」
そう言った。
トドメに手の甲にでも口づけを落としてみようか。
なんて思いながら。
「は」
ケインたちが退室した後、レオンハルトはライナスバージに向かって静かに言い渡した。
「念のために伺いますが、他にこの情報を知る者たちは何人ほどでしょう?」
「父と叔父上、それから勿論リュークザインとベルフェルトに彼らが使う諜報員たち、あとは騎士団長とアッテンボロー、かな」
「ああ、アッテン。そういえばシュリエラ嬢の護衛も兼ねるんでしたっけ」
「うん。今回は賢者くずれの居場所を知る者として最も狙われやすいのがリュークザインとベルフェルトだろ? ベルフェルトには親しい身内はいないが、リュークザインにはシュリエラ嬢がいる。彼女にまで手が伸びる可能性がないわけじゃないからね」
「まあ、でも」と続けて、何やら含みのある笑みを浮かべる。
「な、なんですか」
怖さ半分、興味半分で続きを促すと、少し呆れたような声が返ってきた。
「護衛がつくのを不自然に思わせないためだけに、普通、お見合いなんかさせないよね? まったく、分かりにくい兄心だよ。というか、分かりにくすぎ」
報告書をペラペラめくりながら、呟く。
「妹が可愛くて仕方ないんなら、素直にそう言えばいいのにね」
「全くですね。まぁ、それがリュークザインらしいっちゃ、らしいんですけど」
「うん、まあね」
「あ、そういえば・・・婚約者殿の方は大丈夫なんですかね? ほら、リュークザインの」
「ああ、ラエラ嬢?」
その名前を聞いて、ぷっと吹き出すように笑う。
「殿下?」
「ああ、ごめん。大丈夫だよ、彼女は。何も心配いらない」
「? ・・・そうなんですか?」
このときのライナスは、ラエラのことをまだよく分かっていなかったから、的外れの心配をしていたのだが。
やがてその実力を目の当たりにすることになる。
だが、それはまだ先のこと。
アッテンボローは、顔に熱が集まるのを感じていた。
先ほどから、ずっと手をにぎにぎされているのだ。
「・・・あの、シュリエラ嬢?」
「なんですの?」
「えと、何をしてるのかな? 君は」
「何のことです?」
「あの・・・俺の手。・・・ずっと握ってるけど」
「!」
自覚がなかったようで、そこでぱっと握っていた手を離す。
「軽々しく手に触れるものではありませんわ」
「・・・いや、触ってきたのはシュリエラ嬢の方だが」
「そういう話をしているのではありません!」
「ええ?」
もの凄い剣幕で捲し立てられ、アッテンボローは返答に窮する。
「意味もなく殿方の手に触れるようなはしたない真似など、わたくしは致しませんわ。だ、だからといって、指の傷を確認していたとか、そういう事でもありませんわよ? これは・・・これは、そう、そうですわね、手の大きさを確認しておりましたの」
「・・・えと、それは何のためにかな?」
アッテンボローは、この会話に面白味を感じ始め、軽い気持ちで質問を投げかけた。
だが、ここで突っ込まれることはシュリエラにとって予想外だったようで。
「何のため? ええと、ええと、そうですわね。何のためかと申しますと、それは・・・」
「それは?」
ふんぞり返りながらも視線を泳がせる様がとんでもなく可愛らしい、とアッテンボローは心の中でほくそ笑む。
「て、掌で物の大きさ測ることが出来ると、前にエレアーナさまにお聞きした事があるのです! それで、男性と女性の掌のどちらで測るのかと気になりまして」
「それで俺の手をずっと握りしめていた、と?」
「握りしめていたのではありません。掌の大きさを確認していたのです」
「そうか、俺の誤解だったんだな。刺繍で怪我した指先の傷を気にしてくれたのかと喜びかけたのだが」
「・・・自惚れないでくださいな。その傷は、刺繍が下手なくせにやると貴方が言ったせいで出来たものでしょう?」
「そうだな。君の言う通りだ」
もう可笑しくて堪らなかった。
この勝ち気な女性は、手を握った理由を誤魔化す事だけに必死で、奥のテーブルでお茶を飲むカトリアナ嬢が懸命に笑いを堪えているのにも気付かない。
「分かっていただけたのなら良いのです」
「ああ、よく分かった」
ぶい、と横を向いた彼女の手を、今度は俺がきゅっと握る。
「な?」
「ん? まだ測り終えてなかったみたいだから」
一瞬でシュリエラの顔が赤く染まる。
分かりやすすぎ。
可愛いすぎ。
成程ね。
こういう事か。
今なら、すぐにケダモノ化する殿下の気持ちが分かる気がする。
俺の手を振り解くこともせず、ただ口をぱくぱくさせるシュリエラに、俺はにっと笑いかけて。
「ほら、君もちゃんと握り返して? ちゃんと大きさを測らないと」
そう言った。
トドメに手の甲にでも口づけを落としてみようか。
なんて思いながら。
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