【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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嘘と真実

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ここまで話して漸く分かった。

これは告白も同然の叫びである、と。

好きになりたくない、でも側にいて欲しい、だからどうか私の心を揺らさないで。
好きだと分からせないで。

・・・つまりはそういう事だろう。

人のことをとやかくは言えないが。
彼女も、なんと拗れた感情の持ち主なのか。

・・・だが。

俺の心の鎖を断ち切ってくれたのが君であれば。
君の鎖を断ち切るのは、当然、俺であるべきで。

そうでなければ困るのは俺で。

胸の中に彼女を閉じ込める腕に、自然と力が籠る。

・・・そんなに怖がるほど、俺を好きになってくれてありがとう。

だから、どうか。
その想いを認めてほしい。

「・・・シュリエラ、俺の話を聞いてくれ」

宥めるように、優しく、ゆっくりと話しかける。

「例えば、俺が君に何の気持ちもないとして、ただ兄君に頼まれたからという理由で婚約者の役を引き受けたとしたら・・・君は安心するのか?」

シュリエラは答えない。

「もし君がそれで安心するのだと言うのなら、そういうことにしてもいい。・・・ただ、俺の心にある想いは、変わらず君を愛し続けるけれど」

シュリエラの肩がぴくりと震えた。

「口にさえ出さなければ、君が心安らかになるというのであれば、喜んで俺は沈黙する」
「・・・」
「それで君が笑っていられるのなら、俺は生涯、君への想いを口にしない。・・・もし、俺がそう約束したら、君は俺と結婚してくれるだろうか?」
「・・・」
「シュリエラ」

気が強くて、裏表がなくて、繊細で、意地っ張りで、脆い人。
そして、心も姿も美しい人。

俺の心を自由にしてくれた人。
不器用な生き方しか出来ない君が、大好きだ。

「黙れというのなら、いくらでも黙る。俺は、心の中でだけ君に愛を囁こう」

腕の中を覗き込んで、俯いたままのシュリエラの顎を片手で掬う。
仕方なしに顔を上げて俺を見上げたシュリエラの瞳は真っ赤だ。

・・・そんな無防備な顔をするな。理性が飛ぶ。
今は優しくしてあげなきゃいけないのに。

努めて声を低くする。
・・・落ち着いて聞こえるように。

「そうして欲しいのなら約束する。だから・・・俺と結婚してくれないか」

シュリエラは困ったように眉を下げて、口をへの字に曲げて、俺を睨みつけた。

「・・・誰が貴方となんか・・・」

そう言って、シュリエラはアッテンボローの胸の中に顔を埋める。
言葉とは裏腹の可愛すぎる仕草に、思わず口角がくっと上がる。

「君こそ嘘を吐いている。さっきあの男に言った言葉を思い出せ。君は何て言った? 君は俺を選んだと言っただろう?」
「あ・・・あれは・・・」
「兄君の決定は正しかったと、そうも言ったじゃないか。・・・だろう?」
「だからあれは・・・別に・・・」

腕の中でわたわたするシュリエラが可愛すぎて、ついつい追い詰めたくなって更に追撃する。

「シュリエラともあろう者が、まさかあれは出まかせでした、なんて言わないよな?」
「・・・」
「君はいい加減なことを言うような人じゃないもんな」
「・・・」
「いやあ、あの時は涙が出るほど嬉しかったっけ」
「・・・う~~~」

なにやら腕の中で謎の唸り声を上げ始め、おっと、やりすぎたかと思ったものの。
悔しくて堪らないのか、胸にぐりぐりと頭を押し付けてくるものだから、一体これは何の拷問だと、ぎゅっと固く抱きすくめた。

「・・・苦しい・・・ですわ・・・」

胸元からぶはっと顔を上げたシュリエラが恨めしそうに俺を見上げる。

「シュリエラ、愛してる」

そんな俺の言葉を聞いて、シュリエラは目を丸くして、それからぷっとむくれて。

「・・・口に出さないと仰ったではないですか」
「だって結婚してくれるって言わなかったし」

そうやり返して、ふっと笑う。

ああ、でも。
もう、さっきみたいには動揺してないみたいだ。

シュリエラの口元に浮かんだ微かな笑みに、安堵の気持ちが広がる。

「観念しろ。口に出して言うか言わないかの違いだけだ。結局、俺は君に惚れている」
「もう、貴方という方は・・・」
「結婚、承諾してくれるな?」

じっとその眼を見つめながら囁くと、シュリエラはやっと浮かんだばかりの微笑を消して、つい、と顔を逸らしてしまう。

だが、逸らしたせいでアッテンボローの正面に現れた彼女の耳が、薄闇でもはっきりと分かるくらいに色づいているのがよく見えて。

それだけで心がほわりと温かくなる。

「・・・仕方ないですわね」

シュリエラはぽそりと呟いた。

「後で後悔なさっても知りませんわよ」と。
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