193 / 256
からかい、からかわれ
しおりを挟む
レオンハルトから知らされた昨夜の夜会の報告に、カトリアナが嬉しそうに顏を綻ばせる。
「まあまあまあ、そうなんですの。エレアーナさまが、おめでたとは・・・」
「まだ確定はしてないみたいだけどね。今日、医者に診せるんだって」
レオンハルトも我が事のように嬉しそうに話す。
「ケインバッハさまとエレアーナさまとのお子さまでしたら、さぞやお美しいでしょうね」
「うん、男でも女でも、美形なのは間違いないね」
赤子の顔でも想像しているのだろうか。
うっとりとしながらそう呟いたカトリアナは、とても幸せそうだ。
他人の幸せを自分のことのように喜べるこの純粋で愛情深い女性が、レオンハルトは大好きだ。
だからこそ、最近になって発覚した一部の貴族の動きに激怒してもいるのだが。
・・・己の私利私欲で、こんなに無垢で優しい子を害そうとするなんて。
エレアーナが狙われた時とはまた異なる、激情と独占欲と庇護欲が生み出す怒り。
絶対に許さない。
カトリアナに、指一本触れさせてなるものか。
目の前で愛する人が幸せそうに微笑む、この貴重で穏やかな時間を永遠に僕のものにするんだ。
知らず、ぐっと強く握りしめた拳に気づき、意識的に息を吐く。
まあ、ベイベル国側としては、欲しいものを手に入れるために呑んだ交換条件に過ぎないんだろうけど。
「・・・レオンさま?」
目の前にいる幸せの象徴が首を傾げてこちらを見る。
「・・・何でもないよ」
「そう、ですか?」
・・・この子は、こういうのは聡いんだよな。
思わず苦笑が漏れ、どうやって誤魔化そうと考えて、ふとひらめく。
「君と僕の子どもも、きっと可愛いだろうなって、そう思ってさ」
「・・・!」
ほら、命中。
一瞬で真っ赤っ赤だ。
「こど・・・こど・・・子ども・・・。ああ、そう、・・・そうですわよね。ええと・・・わたくしたちも、その・・・いつかは・・・」
「いつか? 式はもう半年後に迫ってるけど?」
「ああ、はい・・・。そう・・・ですね」
ああ、どれだけ揶揄っても飽きないな。
真っ赤になって、あわくって、おどおどする姿が可愛くて。
「あ、あの・・・レオンさま」
「ん?」
「わた、くしも」
「え?」
俯いて、ぼそぼそと話す小さな声がよく聞き取れなくて。
前に体を傾けて耳を寄せる。
「わたくし・・・も、楽しみにしております」
「はい?」
「あの・・・レオンさまとの・・・子どもを授かる日を」
「・・・」
・・・やられた。
ていうか、やり返された。
いや、仕掛けたのは自分なんだけど。
でも、これは。
この答えは、いくらなんでも。
やばい、頬が熱い。
顔に一気に熱が集まるの分かる。
うわ、こんな顔、見られたら。
「レオン、さま?」
・・・見られたら。
椅子に座ったまま、思わずカトリアナをぎゅっと胸の中に閉じ込める。
「え? レオンさま?」
「・・・いいから。暫くこのままでいて」
「あ、・・・はい」
参ったな。
いつだって主導権を握っていたいのに。
君の前では、余裕綽々の男でいたいのに。
こんなんじゃ格好つかない。
まあ、でも。見られてないからセーフ・・・かな?
腕の中にカトリアナを閉じ込めて、安堵の息を吐いて。
・・・そして。
「!」
はたと気がついた。
斜め向かいに無言で立つ警護の茶髪の男に。
そこから少し離れたところに立つカトリアナ付きの警護に。
・・・待てよ。まだいるじやないか。
恐る恐る視線を斜め後ろに流せば、能面のように表情を固まらせている侍女と、目をキラキラさせて喜んでいるもう一人の侍女(護衛)と。
そうだ。
そして、最悪なのがこいつだ。
茶器を片す振りをしながら、にやにやとした笑みを隠そうともしない侍従姿の男。
ちらり、と目をやれば、意図せずあちらの視線と交差して。
人を揶揄うのが趣味というその憎たらしい男は、こちらをじっと見据えながらおもむろに口を開いて。
無言で口をぱくぱくと動かした。
ええと?
ご、ち、そ、う、さ、ま・・・?
って、あいつ・・・!
思わずカトリアナを抱く腕に力が籠る。
「レオンさま?」
「・・・ああ、ごめん。もうちょっとだけ、このままで」
「はい」
カトリアナはそう答えると、大人しく腕の中に納まる。
ああ、可愛い。いや、そうじゃなくて。
くそ、落ち着け。
落ち着け、平常心を保て。
まあ、元はと言えば自分が蒔いた種だけど。
だけど、あいつ、ベルフェルト。
覚えてろよ。
お前の番がきたら、嫌というほど揶揄ってやるからな。
「まあまあまあ、そうなんですの。エレアーナさまが、おめでたとは・・・」
「まだ確定はしてないみたいだけどね。今日、医者に診せるんだって」
レオンハルトも我が事のように嬉しそうに話す。
「ケインバッハさまとエレアーナさまとのお子さまでしたら、さぞやお美しいでしょうね」
「うん、男でも女でも、美形なのは間違いないね」
赤子の顔でも想像しているのだろうか。
うっとりとしながらそう呟いたカトリアナは、とても幸せそうだ。
他人の幸せを自分のことのように喜べるこの純粋で愛情深い女性が、レオンハルトは大好きだ。
だからこそ、最近になって発覚した一部の貴族の動きに激怒してもいるのだが。
・・・己の私利私欲で、こんなに無垢で優しい子を害そうとするなんて。
エレアーナが狙われた時とはまた異なる、激情と独占欲と庇護欲が生み出す怒り。
絶対に許さない。
カトリアナに、指一本触れさせてなるものか。
目の前で愛する人が幸せそうに微笑む、この貴重で穏やかな時間を永遠に僕のものにするんだ。
知らず、ぐっと強く握りしめた拳に気づき、意識的に息を吐く。
まあ、ベイベル国側としては、欲しいものを手に入れるために呑んだ交換条件に過ぎないんだろうけど。
「・・・レオンさま?」
目の前にいる幸せの象徴が首を傾げてこちらを見る。
「・・・何でもないよ」
「そう、ですか?」
・・・この子は、こういうのは聡いんだよな。
思わず苦笑が漏れ、どうやって誤魔化そうと考えて、ふとひらめく。
「君と僕の子どもも、きっと可愛いだろうなって、そう思ってさ」
「・・・!」
ほら、命中。
一瞬で真っ赤っ赤だ。
「こど・・・こど・・・子ども・・・。ああ、そう、・・・そうですわよね。ええと・・・わたくしたちも、その・・・いつかは・・・」
「いつか? 式はもう半年後に迫ってるけど?」
「ああ、はい・・・。そう・・・ですね」
ああ、どれだけ揶揄っても飽きないな。
真っ赤になって、あわくって、おどおどする姿が可愛くて。
「あ、あの・・・レオンさま」
「ん?」
「わた、くしも」
「え?」
俯いて、ぼそぼそと話す小さな声がよく聞き取れなくて。
前に体を傾けて耳を寄せる。
「わたくし・・・も、楽しみにしております」
「はい?」
「あの・・・レオンさまとの・・・子どもを授かる日を」
「・・・」
・・・やられた。
ていうか、やり返された。
いや、仕掛けたのは自分なんだけど。
でも、これは。
この答えは、いくらなんでも。
やばい、頬が熱い。
顔に一気に熱が集まるの分かる。
うわ、こんな顔、見られたら。
「レオン、さま?」
・・・見られたら。
椅子に座ったまま、思わずカトリアナをぎゅっと胸の中に閉じ込める。
「え? レオンさま?」
「・・・いいから。暫くこのままでいて」
「あ、・・・はい」
参ったな。
いつだって主導権を握っていたいのに。
君の前では、余裕綽々の男でいたいのに。
こんなんじゃ格好つかない。
まあ、でも。見られてないからセーフ・・・かな?
腕の中にカトリアナを閉じ込めて、安堵の息を吐いて。
・・・そして。
「!」
はたと気がついた。
斜め向かいに無言で立つ警護の茶髪の男に。
そこから少し離れたところに立つカトリアナ付きの警護に。
・・・待てよ。まだいるじやないか。
恐る恐る視線を斜め後ろに流せば、能面のように表情を固まらせている侍女と、目をキラキラさせて喜んでいるもう一人の侍女(護衛)と。
そうだ。
そして、最悪なのがこいつだ。
茶器を片す振りをしながら、にやにやとした笑みを隠そうともしない侍従姿の男。
ちらり、と目をやれば、意図せずあちらの視線と交差して。
人を揶揄うのが趣味というその憎たらしい男は、こちらをじっと見据えながらおもむろに口を開いて。
無言で口をぱくぱくと動かした。
ええと?
ご、ち、そ、う、さ、ま・・・?
って、あいつ・・・!
思わずカトリアナを抱く腕に力が籠る。
「レオンさま?」
「・・・ああ、ごめん。もうちょっとだけ、このままで」
「はい」
カトリアナはそう答えると、大人しく腕の中に納まる。
ああ、可愛い。いや、そうじゃなくて。
くそ、落ち着け。
落ち着け、平常心を保て。
まあ、元はと言えば自分が蒔いた種だけど。
だけど、あいつ、ベルフェルト。
覚えてろよ。
お前の番がきたら、嫌というほど揶揄ってやるからな。
29
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~
景華
恋愛
「シリウス・カルバン……むにゃむにゃ……私と結婚、してぇ……むにゃむにゃ」
「……は?」
そんな寝言のせいで、すれ違っていた二人が結婚することに!?
精霊が作りし国ローザニア王国。
セレンシア・ピエラ伯爵令嬢には、国家機密扱いとなるほどの秘密があった。
【寝言の強制実行】。
彼女の寝言で発せられた言葉は絶対だ。
精霊の加護を持つ王太子ですらパシリに使ってしまうほどの強制力。
そしてそんな【寝言の強制実行】のせいで結婚してしまった相手は、彼女の幼馴染で公爵令息にして副騎士団長のシリウス・カルバン。
セレンシアを元々愛してしまったがゆえに彼女の前でだけクールに装ってしまうようになっていたシリウスは、この結婚を機に自分の本当の思いを素直に出していくことを決意し自分の思うがままに溺愛しはじめるが、セレンシアはそれを寝言のせいでおかしくなっているのだと勘違いをしたまま。
それどころか、自分の寝言のせいで結婚してしまっては申し訳ないからと、3年間白い結婚をして離縁しようとまで言い出す始末。
自分の思いを信じてもらえないシリウスは、彼女の【寝言の強制実行】の力を消し去るため、どこかにいるであろう魔法使いを探し出す──!!
大人になるにつれて離れてしまった心と身体の距離が少しずつ縮まって、絡まった糸が解けていく。
すれ違っていた二人の両片思い勘違い恋愛ファンタジー!!
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる