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相変わらずなのは
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慌ただしい足音と共に扉が勢いよく開く。
そこには、ほんの数刻前にここを出て行った、レオンハルトの姿があった。
その後ろには、アッテンボローが。
婚約者が心配で、大急ぎで仕事を片付けてきたらしい二人は、それぞれの婚約者のもとへと走り寄る。
レオンハルトに至っては、二人の警護として残っていた者たちへ声をかける余裕すらなかったようだ。
部屋に入るなりカトリアナをぎゅっと抱きしめた。
「・・・お疲れさまでございました、レオンさま」
「うん」
「皆さまのお陰で、ほとんど怖い思いをする事もなく、こうして無事でございます」
「うん、・・・よかった」
この一年の間に随分と背が伸びたレオンハルトは、婚約を申し込んだときにはカトリアナより頭一つ分ほど高い程度だったのが、今は抱きしめると、その胸元にカトリアナがすっぽりと納まるくらいになっている。
部屋の奥では、やはり心配だったのだろう、アッテンボローがシュリエラを抱きしめていた。
まあ、シュリエラの場合は、大人しく抱きしめられるままにはなっていなかったが。
腕のたつ騎士であるアッテンボローは、シュリエラのささやかな抵抗などあってないようなもので。
ぽかぽかと胸を叩かれながらも、気にすることなくぎゅうぎゅうと抱きしめていた。
そして、ここで漸く安心したのか、レオンハルトは腕の中にカトリアナを抱きしめたまま、顔を上げる。
少し離れたところで顔を赤らめて所在なげに立っていたケインバッハと目が合う。
そしてその後ろには、この場に残していった騎士たちが。
うん、ごめん。
僕がこっちでカトリアナを抱きしめてて、アッテンボローがあっちでシュリエラ嬢を抱きしめてたら、そりゃあ途方に暮れちゃうよね。
それでもカトリアナを腕の中から離したくはなくて。
抱きしめたまま、こほん、とひとつ咳払いをして、レオンは口を開いた。
「ええと、ケイン。ここに残って二人を見ていてくれてありがとね」
「・・・ああ。無事に終わってよかった」
「もう終わったから、帰っても大丈夫だよ。詳しい報告は明日にしよう」
「わかった」
最近ずっとエレアーナに付きっきりだったケインバッハは、退出の許可を得ると、いそいそと部屋から出て行った。
そして勿論、居心地悪そうだった騎士たちも。
「・・・カトリアナ」
ここで再び、レオンハルトは腕の中の婚約者に目を向ける。
カトリアナはきっと無意識だろうけど。
君はこうして抱きしめると、僕の胸に軽く頬ずりをするんだよ。
すり、って猫みたいにね。
そうして気持ちよさそうに目を細めて、嬉しそうに笑むんだ。
そのとき、僕がどれだけ嬉しく思っているか、どれだけ愛しいと思っているか、君は知らないんだろうな。
僕の愛しいカトリアナ。
「・・・レオンさま」
「ん?」
カトリアナは、胸元でもぞもぞしながらレオンハルトの顔を見上げる。
「お守り、役に立ちました」
「・・・」
「レオンさまが願いを込めて下さった、わたくしの護身具。あれを使いましたのよ?」
「・・・そうか」
「ルナフレイアさまと入れ代わって侍女姿でここまで戻ってくる時に、騎士服を着た方に声をかけられましたの。そしたらどこか不審に思われたのでしょうね、別の場所に連れて行かれそうになりました」
「・・・それで、小刀を?」
「はい。幸い、ハトの方たちがすぐに駆け付けて下さいまして」
笑いながら報告しているけど、視線は少し揺れている。
そうだよね、か弱いご令嬢だもの。怖かったよね。
背中に回していた腕を解いて、そっと頭を撫でる。
髪型が乱れちゃうけど、もう気にしなくてもいいものね。
「頑張ったね」
「はい、わたくしなりにですが、頑張りました」
「うん、偉かったね。・・・あ、でも、ちょっと腹が立つ、かな」
その言葉に驚いたのか、目を丸くして僕の顔を見上げる。
「あの、何を、でしょうか」
「小刀を取りだしたってことは、その男に見られちゃったんでしょ? カトリアナの・・・足」
「え・・・?」
「悔しいな」
「・・・あの、レオンさま・・・?」
「仕方ないけど。カトリアナはよくやったって思うけど、でもそいつが僕のカトリアナの足を見たかと思うと腹が立つ」
口を尖らせながら、カトリアナの額に、自分のそれをこつん、とくっつける。
「ごめん・・・なさい?」
「カトリアナが謝る事じゃないけどさ・・・そいつ、厳罰に処してやる」
「まあ、レオンさまったら」
ふふ、と可笑しそうに笑うカトリアナを見て、レオンハルトは漸く、問題が一つ片付いたことを実感して。
そして釣られるようにして、笑った。
「・・・あのお二人は相変わらずですわね」
「俺たちだって相変わらずだろ?」
今や二組のカップルだけとなったこの室内で、レオンハルトたちの仲睦まじい様子をそう評したのはシュリエラとアッテンボローだ。
顔を逸らしていないと落ち着きを保てないシュリエラは、アッテンボローに視線を向けられず、ずっとカトリアナたちの方を向いていて。
でも、腕はしっかりとアッテンボローの背に回していた。
そしてアッテンボローは、その間もずっと、そんな意地っ張りのシュリエラの頭頂に、ちゅっちゅっと口づけを落としていたのだった。
そこには、ほんの数刻前にここを出て行った、レオンハルトの姿があった。
その後ろには、アッテンボローが。
婚約者が心配で、大急ぎで仕事を片付けてきたらしい二人は、それぞれの婚約者のもとへと走り寄る。
レオンハルトに至っては、二人の警護として残っていた者たちへ声をかける余裕すらなかったようだ。
部屋に入るなりカトリアナをぎゅっと抱きしめた。
「・・・お疲れさまでございました、レオンさま」
「うん」
「皆さまのお陰で、ほとんど怖い思いをする事もなく、こうして無事でございます」
「うん、・・・よかった」
この一年の間に随分と背が伸びたレオンハルトは、婚約を申し込んだときにはカトリアナより頭一つ分ほど高い程度だったのが、今は抱きしめると、その胸元にカトリアナがすっぽりと納まるくらいになっている。
部屋の奥では、やはり心配だったのだろう、アッテンボローがシュリエラを抱きしめていた。
まあ、シュリエラの場合は、大人しく抱きしめられるままにはなっていなかったが。
腕のたつ騎士であるアッテンボローは、シュリエラのささやかな抵抗などあってないようなもので。
ぽかぽかと胸を叩かれながらも、気にすることなくぎゅうぎゅうと抱きしめていた。
そして、ここで漸く安心したのか、レオンハルトは腕の中にカトリアナを抱きしめたまま、顔を上げる。
少し離れたところで顔を赤らめて所在なげに立っていたケインバッハと目が合う。
そしてその後ろには、この場に残していった騎士たちが。
うん、ごめん。
僕がこっちでカトリアナを抱きしめてて、アッテンボローがあっちでシュリエラ嬢を抱きしめてたら、そりゃあ途方に暮れちゃうよね。
それでもカトリアナを腕の中から離したくはなくて。
抱きしめたまま、こほん、とひとつ咳払いをして、レオンは口を開いた。
「ええと、ケイン。ここに残って二人を見ていてくれてありがとね」
「・・・ああ。無事に終わってよかった」
「もう終わったから、帰っても大丈夫だよ。詳しい報告は明日にしよう」
「わかった」
最近ずっとエレアーナに付きっきりだったケインバッハは、退出の許可を得ると、いそいそと部屋から出て行った。
そして勿論、居心地悪そうだった騎士たちも。
「・・・カトリアナ」
ここで再び、レオンハルトは腕の中の婚約者に目を向ける。
カトリアナはきっと無意識だろうけど。
君はこうして抱きしめると、僕の胸に軽く頬ずりをするんだよ。
すり、って猫みたいにね。
そうして気持ちよさそうに目を細めて、嬉しそうに笑むんだ。
そのとき、僕がどれだけ嬉しく思っているか、どれだけ愛しいと思っているか、君は知らないんだろうな。
僕の愛しいカトリアナ。
「・・・レオンさま」
「ん?」
カトリアナは、胸元でもぞもぞしながらレオンハルトの顔を見上げる。
「お守り、役に立ちました」
「・・・」
「レオンさまが願いを込めて下さった、わたくしの護身具。あれを使いましたのよ?」
「・・・そうか」
「ルナフレイアさまと入れ代わって侍女姿でここまで戻ってくる時に、騎士服を着た方に声をかけられましたの。そしたらどこか不審に思われたのでしょうね、別の場所に連れて行かれそうになりました」
「・・・それで、小刀を?」
「はい。幸い、ハトの方たちがすぐに駆け付けて下さいまして」
笑いながら報告しているけど、視線は少し揺れている。
そうだよね、か弱いご令嬢だもの。怖かったよね。
背中に回していた腕を解いて、そっと頭を撫でる。
髪型が乱れちゃうけど、もう気にしなくてもいいものね。
「頑張ったね」
「はい、わたくしなりにですが、頑張りました」
「うん、偉かったね。・・・あ、でも、ちょっと腹が立つ、かな」
その言葉に驚いたのか、目を丸くして僕の顔を見上げる。
「あの、何を、でしょうか」
「小刀を取りだしたってことは、その男に見られちゃったんでしょ? カトリアナの・・・足」
「え・・・?」
「悔しいな」
「・・・あの、レオンさま・・・?」
「仕方ないけど。カトリアナはよくやったって思うけど、でもそいつが僕のカトリアナの足を見たかと思うと腹が立つ」
口を尖らせながら、カトリアナの額に、自分のそれをこつん、とくっつける。
「ごめん・・・なさい?」
「カトリアナが謝る事じゃないけどさ・・・そいつ、厳罰に処してやる」
「まあ、レオンさまったら」
ふふ、と可笑しそうに笑うカトリアナを見て、レオンハルトは漸く、問題が一つ片付いたことを実感して。
そして釣られるようにして、笑った。
「・・・あのお二人は相変わらずですわね」
「俺たちだって相変わらずだろ?」
今や二組のカップルだけとなったこの室内で、レオンハルトたちの仲睦まじい様子をそう評したのはシュリエラとアッテンボローだ。
顔を逸らしていないと落ち着きを保てないシュリエラは、アッテンボローに視線を向けられず、ずっとカトリアナたちの方を向いていて。
でも、腕はしっかりとアッテンボローの背に回していた。
そしてアッテンボローは、その間もずっと、そんな意地っ張りのシュリエラの頭頂に、ちゅっちゅっと口づけを落としていたのだった。
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