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その理由
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「礼を言うのが遅くなって悪かったね。言い訳にしかならないけど、後処理に時間がかなり取られてしまって」
「いえ、与えられた任務をこなしただけですから・・・」
申し訳なさそうに謝るレオンハルトに対し、ルナフレイアが慌てて手を振って制止する。
「いや、カトリアナが無事だったのも、賢者くずれを狙う者たちを一掃出来たのも、君の協力がなければ難しかったと思う。少なくとも、もっと被害は出た筈だ」
「そんな・・・」
「だからきちんと礼を言わせてほしい。・・・ありがとう」
ルナフレイアは今、レオンハルトの執務室に呼ばれていた。
今回の任務で特に大きな働きをした者たちに対して、レオンが個人個人に感謝を述べるためだ。
ちなみにベルフェルトは昨日、レオンの執務室に呼ばれている。
「君は、僕たちの結婚式が終わったら領地に戻るそうだね。正直、少し残念だよ。国境警備の重要性は理解しているつもりだけど、諜報機関の人材としても君は申し分なかったからね」
「勿体ないお言葉です」
「リュークザインからも引き留められたんだろ? 縁談もたくさん持ち込まれたらしいじゃないか」
「まあ・・・そうですね」
少し居心地が悪そうに頷いたルナフレイアを見て、レオンも思わず苦笑した。
「・・・無理に引き留めようとは思わないけれど・・・良かったら聞かせてくれないかな。辺境伯領に戻ることにこだわっている理由は、何かあるのかい?」
「それは・・・」
ルナフレアはドレスの裾をきゅっと掴んで、困ったように視線を泳がせた。
そこで初めて気がついたのか、ぽろっと「今日はライナスじゃないんですね」と呟いた。
いきなりの話題転換に、一瞬、きょとんと目を丸くしたレオンは、だがすぐに何のことを言っているのか察したようで、今日はライナスが遅番であることを告げる。
それを聞いたルナフレアは何かを考える素振りを見せたが、「では」と口を開いた。
「ロッテングルム領に戻ろうと思っていた理由は、領主代行をしている姉の補佐を、わたくしがしていたからです」
「・・・お姉さん? 君の姉君が領主代行をしているの? でも君は当主の娘では・・・あ、そっか。ロッテングルムでは・・・」
「ご存知なんですね」とルナフレイアが笑った。
「そうです。我が家門は、その世代で最も武の腕が立つ者が当代の次期領主、跡継ぎになります。そして今のところ、カーン伯父さまに最強と認められているのはわたくしの姉、アリスティシアなのでございます」
「アリスティシア・・・それが君の姉君の名か」
そしてライナスバージが婚約を申し込みたい女性の名。
レオンハルトは、そう頭の中で結論付けた。
「そうか・・・。君ではなくアリスティシア嬢が領主代行をしている、ということは、彼女は君よりも強いという事だね?」
「その通りです。剣に限って言えば、わたくしは姉に、十回のうち三、四回程度しか勝てませんわ」
「それは凄いな。剣以外では?」
「わたくしに勝ち目があるとすれば弓ぐらいでしょうか。・・・今は互いの腕を確かめる術はありませんけれど」
その言い方に引っ掛かりを覚えて、レオンが怪訝そうな眼差しを向ける。
「・・・姉は十年前に片腕を失くしておりますので、弓を引くことは出来ませんの」
「そうなんだ。・・・それは、国境警備に、関係して・・・?」
「まあ、そうですね。密入国した強盗団と闘った際に・・・」
「・・・そうか」
少しの間の後、レオンは再び口を開いた。
「隻腕でも一族で最強とは、素晴らしい武の腕前なのだね」
その言葉に、自慢の姉なんです、とルナフレイアは満面の笑みで答えた。
・・・で、結局、デサイファミスからの秋波を断る理由は聞けずじまいだったんだよな。
ルナフレイアが執務室を辞した後、レオンハルトは話で得た情報を頭の中で整理していた。
まあ、ロッテングルム領にいなければならない理由が他にあるのか、それとも王都にいたくない理由があるのか・・・。
前者であれば調べなければ分からないけど、もし、後者だったとしたら、その理由は・・・十中八九、ベルフェルトかな。
うーん、でも、振られたとかではなさそうなんだよな。
・・・ていうか、あの二人、どう見ても好きあってるよね?
まあ、僕も人のことを言えた義理じゃないけど、もうちょっと自分の気持ちに素直になってみればいいのに。
相思相愛なのに片想いって、側から見てると、どうにも不思議すぎるんだよね。
リュークザインたちなんか、もの凄いスピードでサクッとまとまったけど、あっちの方が珍しいんだろうし。
それにしても、ライナスが恋する相手は、ルナフレイア嬢の姉君か。
窃盗団と闘って捕縛する際に腕を失くした・・・ね。
隻腕だから領地に引きこもってるって風ではなさそうだし、多分、相当の強者なんだろう。
・・・うん。だから「仕留める」って言葉になったんだろうな。
だけど、そんな強い人相手に、二週間で勝負決められるのかな、ライナスは。
っていうか、これで負けたらどうする気なんだろ。
いやいや、僕がライナスの実力を信じてあげなくてどうするんだ。
大丈夫、大丈夫。ライナスならきっと。
うん、きっとアリスティシア嬢を叩きのめして、得意満面の顔で帰って来てくれる筈。
そう信じよう。
・・・なんか、この部分だけ聞くと鬼畜っぽいこと言ってるような気がするけど、そこは気にしちゃいけないんだろうな。
「いえ、与えられた任務をこなしただけですから・・・」
申し訳なさそうに謝るレオンハルトに対し、ルナフレイアが慌てて手を振って制止する。
「いや、カトリアナが無事だったのも、賢者くずれを狙う者たちを一掃出来たのも、君の協力がなければ難しかったと思う。少なくとも、もっと被害は出た筈だ」
「そんな・・・」
「だからきちんと礼を言わせてほしい。・・・ありがとう」
ルナフレイアは今、レオンハルトの執務室に呼ばれていた。
今回の任務で特に大きな働きをした者たちに対して、レオンが個人個人に感謝を述べるためだ。
ちなみにベルフェルトは昨日、レオンの執務室に呼ばれている。
「君は、僕たちの結婚式が終わったら領地に戻るそうだね。正直、少し残念だよ。国境警備の重要性は理解しているつもりだけど、諜報機関の人材としても君は申し分なかったからね」
「勿体ないお言葉です」
「リュークザインからも引き留められたんだろ? 縁談もたくさん持ち込まれたらしいじゃないか」
「まあ・・・そうですね」
少し居心地が悪そうに頷いたルナフレイアを見て、レオンも思わず苦笑した。
「・・・無理に引き留めようとは思わないけれど・・・良かったら聞かせてくれないかな。辺境伯領に戻ることにこだわっている理由は、何かあるのかい?」
「それは・・・」
ルナフレアはドレスの裾をきゅっと掴んで、困ったように視線を泳がせた。
そこで初めて気がついたのか、ぽろっと「今日はライナスじゃないんですね」と呟いた。
いきなりの話題転換に、一瞬、きょとんと目を丸くしたレオンは、だがすぐに何のことを言っているのか察したようで、今日はライナスが遅番であることを告げる。
それを聞いたルナフレアは何かを考える素振りを見せたが、「では」と口を開いた。
「ロッテングルム領に戻ろうと思っていた理由は、領主代行をしている姉の補佐を、わたくしがしていたからです」
「・・・お姉さん? 君の姉君が領主代行をしているの? でも君は当主の娘では・・・あ、そっか。ロッテングルムでは・・・」
「ご存知なんですね」とルナフレイアが笑った。
「そうです。我が家門は、その世代で最も武の腕が立つ者が当代の次期領主、跡継ぎになります。そして今のところ、カーン伯父さまに最強と認められているのはわたくしの姉、アリスティシアなのでございます」
「アリスティシア・・・それが君の姉君の名か」
そしてライナスバージが婚約を申し込みたい女性の名。
レオンハルトは、そう頭の中で結論付けた。
「そうか・・・。君ではなくアリスティシア嬢が領主代行をしている、ということは、彼女は君よりも強いという事だね?」
「その通りです。剣に限って言えば、わたくしは姉に、十回のうち三、四回程度しか勝てませんわ」
「それは凄いな。剣以外では?」
「わたくしに勝ち目があるとすれば弓ぐらいでしょうか。・・・今は互いの腕を確かめる術はありませんけれど」
その言い方に引っ掛かりを覚えて、レオンが怪訝そうな眼差しを向ける。
「・・・姉は十年前に片腕を失くしておりますので、弓を引くことは出来ませんの」
「そうなんだ。・・・それは、国境警備に、関係して・・・?」
「まあ、そうですね。密入国した強盗団と闘った際に・・・」
「・・・そうか」
少しの間の後、レオンは再び口を開いた。
「隻腕でも一族で最強とは、素晴らしい武の腕前なのだね」
その言葉に、自慢の姉なんです、とルナフレイアは満面の笑みで答えた。
・・・で、結局、デサイファミスからの秋波を断る理由は聞けずじまいだったんだよな。
ルナフレイアが執務室を辞した後、レオンハルトは話で得た情報を頭の中で整理していた。
まあ、ロッテングルム領にいなければならない理由が他にあるのか、それとも王都にいたくない理由があるのか・・・。
前者であれば調べなければ分からないけど、もし、後者だったとしたら、その理由は・・・十中八九、ベルフェルトかな。
うーん、でも、振られたとかではなさそうなんだよな。
・・・ていうか、あの二人、どう見ても好きあってるよね?
まあ、僕も人のことを言えた義理じゃないけど、もうちょっと自分の気持ちに素直になってみればいいのに。
相思相愛なのに片想いって、側から見てると、どうにも不思議すぎるんだよね。
リュークザインたちなんか、もの凄いスピードでサクッとまとまったけど、あっちの方が珍しいんだろうし。
それにしても、ライナスが恋する相手は、ルナフレイア嬢の姉君か。
窃盗団と闘って捕縛する際に腕を失くした・・・ね。
隻腕だから領地に引きこもってるって風ではなさそうだし、多分、相当の強者なんだろう。
・・・うん。だから「仕留める」って言葉になったんだろうな。
だけど、そんな強い人相手に、二週間で勝負決められるのかな、ライナスは。
っていうか、これで負けたらどうする気なんだろ。
いやいや、僕がライナスの実力を信じてあげなくてどうするんだ。
大丈夫、大丈夫。ライナスならきっと。
うん、きっとアリスティシア嬢を叩きのめして、得意満面の顔で帰って来てくれる筈。
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