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懐かしいひと
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その偉大なる恩人は、王城の正門からではなく、裏からひっそりと、ほとんどの人に知られることなくやって来た。
曰く、顏を知られるのも面倒だし、記憶操作は可能だがそれもまた億劫である、と。
相変わらずの飄々としたその人柄に、再会した面々は思わず笑いを隠せない。
「みな息災のようだな」
高低のない静かな声が、皆の思いに懐かしさを引き起こす。
「ラファイエラスさまのお陰です。本当によくぞいらして下さいました」
満面の笑みで賢者ラファイエラスを出迎えたのは、国王夫妻と王太子レオンハルト、そしてダイスヒル宰相、王弟ミハイルシュッツらだ。
さあさあと追い立てるように貴賓室へと連れて行く。
「おいおい。そう急かさずとも、私は別に逃げたりはしないぞ」
「何を仰いますか。ラファイエラスさまに限っては、その信用はございませんよ。なにせ人目につくことを極端にお嫌いになられるお方ですからな」
本来であれば、国賓として大々的に出迎えたかったところだが、ラファイエラスの性格からしてそれを良しとはしない。
そんなラファイエラスが、レオンハルトたちの婚姻の儀の際、祝福を捧げるために登壇してくれるというのだから、それは気も使うというものだろう。
通された貴賓室では、リュークザインとベルフェルトが待っていた。
本日は侍従の代わりに、この二人がこの部屋の雑事を取り仕切ることになっている。
「私がここを去った後に、いろいろとめでたいことが続いたようだな。エレアーナはケインバッハと結婚し、子どもも身籠っていると聞く。そしてリュークザイン、お前も妻を娶ったそうだな」
「はい。可能であれば、後ほど妻を連れて挨拶をさせていただきたく思いますが」
「勿論だ」
ラファイエラスは嬉しそうに笑いながら頷いた。
「リュークザイン。本当は、お前の式の時にも顔を出したかったのだがな。既にお前の家には私の好意の証を表している。あまり一つの家門に集中するのも後々の災いにつながる故、遠くから祈らせてもらうことにした」
「・・・勿体ないお言葉、ありがとうございます」
「エレアーナとケインバッハの式も同様だ。ここでの挨拶で済ませることを許してくれ」
その言葉に、「分かっております」と、シュタインゼンが深々と頭を下げた。
ここで、ラファイエラスはふと思いついたように、顎に手を当てる。
「待てよ。そうは言っても、私が送ったあの花はブライトン家のものとなっているのだな。であれば、エレアーナが嫁いだダイスヒル家にも一つ送らねばならぬ」
「それは有難いお心遣いにございますな。あの枯れることのないと噂に高い永遠に咲き続ける賢者の花を、我が家にも頂けるのですか?」
「ああ。レオンハルトの式の際に空から降らせようと思っていたのだ。その時に一つ、エレアーナに拾わせるがよい。・・・いいか、エレアーナに拾わせるのだぞ?」
「は、畏まりました」
その言葉の意図がよく分からないながらも、シュタインゼンは頷いた。
それに満足そうに目を細めると、ラファイエラスは次にレオンハルトへと目を向けた。
「さて、レオンハルト」
「はい」
「お前もいよいよ婚姻を迎えるのか。お相手の姫君はさぞや麗しい女性なのだろうな」
「ええ、それはもう」
レオンハルトは嬉しさを隠すこともせず、満面の笑みで頷いた。
「カトリアナという名の女性です。姿も心も、優しく美しく、そして、とても控えめで愛らしい子です。柔らかくてさらさらの紺の髪に、可愛らしくて穏やかな朱の瞳。人の注目を浴びることより、一歩下がって皆の笑顔を見守る事を好みます。本当に素敵な女性なんです。是非、後でラファイエラスさまにご紹介させてください」
勢い込んで一気に話すレオンハルトの様子に、流石のラファイエラスも苦笑を漏らす。
「そうか。どうやらべた惚れのようだな。素晴らしい女性を射止めたようでなによりだ。会うのを楽しみにしている。・・・ああ、そうだ。先ほどの花の話だが」
「はい?」
「レオンハルト、お前の花嫁にも、私が降らせた花を一つ拾わせるように。侍女でも付添人でも駄目だ。花嫁自身が拾い上げるのだぞ」
レオンハルトは一瞬、不思議そうにぱちぱちと目を瞬かせたが、すぐに「分かりました」と頷いた。
「花嫁は・・・カトリアナ、と言ったか。花の所有者には賢者からの祝福が注がれる。それを持つ家門も同様だ。大切にしてくれ」
「勿論です。王家の家宝とさせていただき、代々、ラファイエラスさまの名前と共に語り継がせていただきます」
そう大真面目に答えるレオンハルトに、ラファイエラスは「大げさだ」と笑いだした。
曰く、顏を知られるのも面倒だし、記憶操作は可能だがそれもまた億劫である、と。
相変わらずの飄々としたその人柄に、再会した面々は思わず笑いを隠せない。
「みな息災のようだな」
高低のない静かな声が、皆の思いに懐かしさを引き起こす。
「ラファイエラスさまのお陰です。本当によくぞいらして下さいました」
満面の笑みで賢者ラファイエラスを出迎えたのは、国王夫妻と王太子レオンハルト、そしてダイスヒル宰相、王弟ミハイルシュッツらだ。
さあさあと追い立てるように貴賓室へと連れて行く。
「おいおい。そう急かさずとも、私は別に逃げたりはしないぞ」
「何を仰いますか。ラファイエラスさまに限っては、その信用はございませんよ。なにせ人目につくことを極端にお嫌いになられるお方ですからな」
本来であれば、国賓として大々的に出迎えたかったところだが、ラファイエラスの性格からしてそれを良しとはしない。
そんなラファイエラスが、レオンハルトたちの婚姻の儀の際、祝福を捧げるために登壇してくれるというのだから、それは気も使うというものだろう。
通された貴賓室では、リュークザインとベルフェルトが待っていた。
本日は侍従の代わりに、この二人がこの部屋の雑事を取り仕切ることになっている。
「私がここを去った後に、いろいろとめでたいことが続いたようだな。エレアーナはケインバッハと結婚し、子どもも身籠っていると聞く。そしてリュークザイン、お前も妻を娶ったそうだな」
「はい。可能であれば、後ほど妻を連れて挨拶をさせていただきたく思いますが」
「勿論だ」
ラファイエラスは嬉しそうに笑いながら頷いた。
「リュークザイン。本当は、お前の式の時にも顔を出したかったのだがな。既にお前の家には私の好意の証を表している。あまり一つの家門に集中するのも後々の災いにつながる故、遠くから祈らせてもらうことにした」
「・・・勿体ないお言葉、ありがとうございます」
「エレアーナとケインバッハの式も同様だ。ここでの挨拶で済ませることを許してくれ」
その言葉に、「分かっております」と、シュタインゼンが深々と頭を下げた。
ここで、ラファイエラスはふと思いついたように、顎に手を当てる。
「待てよ。そうは言っても、私が送ったあの花はブライトン家のものとなっているのだな。であれば、エレアーナが嫁いだダイスヒル家にも一つ送らねばならぬ」
「それは有難いお心遣いにございますな。あの枯れることのないと噂に高い永遠に咲き続ける賢者の花を、我が家にも頂けるのですか?」
「ああ。レオンハルトの式の際に空から降らせようと思っていたのだ。その時に一つ、エレアーナに拾わせるがよい。・・・いいか、エレアーナに拾わせるのだぞ?」
「は、畏まりました」
その言葉の意図がよく分からないながらも、シュタインゼンは頷いた。
それに満足そうに目を細めると、ラファイエラスは次にレオンハルトへと目を向けた。
「さて、レオンハルト」
「はい」
「お前もいよいよ婚姻を迎えるのか。お相手の姫君はさぞや麗しい女性なのだろうな」
「ええ、それはもう」
レオンハルトは嬉しさを隠すこともせず、満面の笑みで頷いた。
「カトリアナという名の女性です。姿も心も、優しく美しく、そして、とても控えめで愛らしい子です。柔らかくてさらさらの紺の髪に、可愛らしくて穏やかな朱の瞳。人の注目を浴びることより、一歩下がって皆の笑顔を見守る事を好みます。本当に素敵な女性なんです。是非、後でラファイエラスさまにご紹介させてください」
勢い込んで一気に話すレオンハルトの様子に、流石のラファイエラスも苦笑を漏らす。
「そうか。どうやらべた惚れのようだな。素晴らしい女性を射止めたようでなによりだ。会うのを楽しみにしている。・・・ああ、そうだ。先ほどの花の話だが」
「はい?」
「レオンハルト、お前の花嫁にも、私が降らせた花を一つ拾わせるように。侍女でも付添人でも駄目だ。花嫁自身が拾い上げるのだぞ」
レオンハルトは一瞬、不思議そうにぱちぱちと目を瞬かせたが、すぐに「分かりました」と頷いた。
「花嫁は・・・カトリアナ、と言ったか。花の所有者には賢者からの祝福が注がれる。それを持つ家門も同様だ。大切にしてくれ」
「勿論です。王家の家宝とさせていただき、代々、ラファイエラスさまの名前と共に語り継がせていただきます」
そう大真面目に答えるレオンハルトに、ラファイエラスは「大げさだ」と笑いだした。
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