転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第310話 馬車の追跡

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馬車が東に進んでいく。遠ざかっていくと位置情報を東に進めて、再表示をする。目測を誤って、行き過ぎちゃったりしたら
戻ってみたり、少し待ってみたり。
馬車が進む速度は人が歩く速度より速いから、位置情報を頻繁に切り替えないといけない。ちょっと大変だ。

「クリス、大丈夫か?」
「うーん……。大丈夫だけど……。操作が忙しいね……」

僕が魔道具の位置情報変更にかかりっきりになっていたら兄上が声をかけてきてくれた。
数値を指定していくだけで難しくもないんだけど、黒ローブ達の会話も馬車に近づいた時しか聞こえないし、
ひたすら馬車の進路に合わせて位置情報を変えていくだけの単純作業でちょっと飽きてきた。
もっと効率の良い方法はないかな。

「数字が座標なのか?変わろうか?」
「え?やってみる?」

兄上が魔道具の操作を変わってくれると言うので、魔道具を差し出すと、長椅子の背もたれに深々と寄りかかっていたメイリが
パッと立ち上がった。

「わたしもやる!」
「え?メイリも?」

進んでいく馬車の「写し絵」を眺めているのに飽きたのかもしれない。
メイリも魔道具の操作をしたいと言い出した。

「じゃあ、やり方を教えるね」

兄上とメイリに魔道具の使い方を教える。いつの間にか父上と母様もすぐ傍まで来て僕の手元を覗き込んでいた。
そんな凄い作業じゃないんだけどね。
説明をしながら二回ほど実演して見せて、兄上とメイリにも実際に何度かやってみてもらった。


「もうちょっと左!」
「戻って、戻って!」
「ああ~、惜しい!」
「見えた!馬車だ!」


指定した位置が、馬車の見える範囲からズレてしまうと、皆であれこれ指示する声をかけて大騒ぎだ。
なんだか楽しい。

馬車に乗っている人達は自分達が目標になって大騒ぎされているとは気がつかないかな。

兄上もメイリも何回か試しているうちに、移動する馬車を追いかけて位置を指定するのに慣れてきたようだ。
時々、位置がズレて見失っても、すぐに修正できる様になった。

兄上とメイリが馬車の追跡をする魔道具の操作を買って出てくれたので
僕は少し手が空いたから、魔道具の調整をすることにした。

位置指定をするのはちょっと遊びみたいにもなって楽しいんだけど、馬車がこのまま何時間も移動を続けるのだとしたら、ずーっと位置を調整しながら追いかけることになってしまいそうで大変だ。兄上とメイリが交代でやってくれたとしても何時間もだと疲れちゃうよね。

何とか、手で位置を指定する作業が少なくなる方法はないかなと考える。

自動で後を追いかけてくれれば良いんだけど、そんな風にできないかな。

馬車の形状の情報を覚えておいて馬車を探すようにする?
出来たとしても同じ形の馬車があったら、全然違うところに行っちゃうかもしれないな。
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