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第2章
第324話 新たなターゲット
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年配の黒ローブは、部屋の隅の方の棚の下から二番目の段から木箱を手にした。その木箱を床に置くと、その奥から奥行きが半分位の木箱を引っ張り出した。木箱の中からまた箱が出てくる。黒っぽい箱だ。
大人の男性の手だと片手でなんとか掴める位のその箱を、顎が割れた黒ローブに差し出した。
『……次は、南部だ。ゲンティアナとの領境近くに……』
「ゲンティアナ!」
年配の黒ローブの言葉を聞いて、思わず声を上げてしまった。
「静かに……。よく聞こえなかったわ」
「ごめっ……」
母様に真剣な口調で注意されてしまって、謝ろうと思ったけど、謝ろうと口を開いたら、母様の眉がピクリと動いたので、言葉を飲み込んだ。声を出さずにパクパクと口を動かして、謝りの言葉を表現した。
『ゲンティアナはノアールの担当じゃなかったか?』
『奴からまだ連絡がない。それに、領境といっても。アンソラ側だ』
『……領境に毒など撒いたら、門が封鎖されるんじゃないか』
「それが狙いだ」
『どういうことだ?』
「ゲンティアナとアンソラの間の行き来をさせにくくするってことだ。終わったらとっとと退散するんだな。いずれ辺境伯領への門も通過できなくなるだろう』
『……それは……』
顎が割れた黒ローブな何か言いたげにしていたが、それ以上特に何も言わずに、他の二人と一緒にその場を後にした。後を追いかけようとして、年配の黒ローブにも識別情報をつけなくちゃと、気がついた。
「この人にも識別情報をつけておくね」
年配の黒ローブの靴を狙って識別情報を転写した。パッと年配の黒ローブが足を少し持ち上げた。足元をじっと見下ろし、パッと顔を上げると周囲を見回した。
『誰かいるのか!?』
ギョッとして思わず息を呑む。
『……気のせいか……』
年配の黒ローブはボソリと呟いた後、突然背後を振り向き何かを投げる動作をした。ダンッと何かぶつかるような音がした。黒ローブの目線側の表示を見ると壁にナイフが刺さっている。ナイフは何かを壁に縫い留めているように見えたので大写しにすると、尾っぽが二つに割れたトカゲっぽいものも背にナイフが刺さっているのが見えた。二つの尾はまだピクピクと動いている。見たことないトカゲだけど多分魔獣だ。
『……フン。田舎はこれだから……』
年配の黒ローブは吐き捨てるように言うと、ナイフを壁から引き抜いた。ボトリと、床にトカゲが落ちる。
割れた尾の一本を摘み上げて、奥の扉の向こうに入っていく。通路を通って更に先の扉を開ける。瓶が並んだ棚が天井近くまであるのが見えた。
床に置かれた小さめの樽の中にポイっと尾の割れたトカゲを放り込む。
ドンドンドン
音がしすると黒ローブが顔を上げた。
大人の男性の手だと片手でなんとか掴める位のその箱を、顎が割れた黒ローブに差し出した。
『……次は、南部だ。ゲンティアナとの領境近くに……』
「ゲンティアナ!」
年配の黒ローブの言葉を聞いて、思わず声を上げてしまった。
「静かに……。よく聞こえなかったわ」
「ごめっ……」
母様に真剣な口調で注意されてしまって、謝ろうと思ったけど、謝ろうと口を開いたら、母様の眉がピクリと動いたので、言葉を飲み込んだ。声を出さずにパクパクと口を動かして、謝りの言葉を表現した。
『ゲンティアナはノアールの担当じゃなかったか?』
『奴からまだ連絡がない。それに、領境といっても。アンソラ側だ』
『……領境に毒など撒いたら、門が封鎖されるんじゃないか』
「それが狙いだ」
『どういうことだ?』
「ゲンティアナとアンソラの間の行き来をさせにくくするってことだ。終わったらとっとと退散するんだな。いずれ辺境伯領への門も通過できなくなるだろう』
『……それは……』
顎が割れた黒ローブな何か言いたげにしていたが、それ以上特に何も言わずに、他の二人と一緒にその場を後にした。後を追いかけようとして、年配の黒ローブにも識別情報をつけなくちゃと、気がついた。
「この人にも識別情報をつけておくね」
年配の黒ローブの靴を狙って識別情報を転写した。パッと年配の黒ローブが足を少し持ち上げた。足元をじっと見下ろし、パッと顔を上げると周囲を見回した。
『誰かいるのか!?』
ギョッとして思わず息を呑む。
『……気のせいか……』
年配の黒ローブはボソリと呟いた後、突然背後を振り向き何かを投げる動作をした。ダンッと何かぶつかるような音がした。黒ローブの目線側の表示を見ると壁にナイフが刺さっている。ナイフは何かを壁に縫い留めているように見えたので大写しにすると、尾っぽが二つに割れたトカゲっぽいものも背にナイフが刺さっているのが見えた。二つの尾はまだピクピクと動いている。見たことないトカゲだけど多分魔獣だ。
『……フン。田舎はこれだから……』
年配の黒ローブは吐き捨てるように言うと、ナイフを壁から引き抜いた。ボトリと、床にトカゲが落ちる。
割れた尾の一本を摘み上げて、奥の扉の向こうに入っていく。通路を通って更に先の扉を開ける。瓶が並んだ棚が天井近くまであるのが見えた。
床に置かれた小さめの樽の中にポイっと尾の割れたトカゲを放り込む。
ドンドンドン
音がしすると黒ローブが顔を上げた。
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