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第1章
第16話 急いで帰る
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「探してました。どちらにいらしてたんですか?」
「周辺の視察って言ってあったでしょう、日暮れ前には戻るとも。」
「殿下がご到着されました。」
「……早いわね……。でも、言う場所は考えて欲しいわ。」
周囲の空気がヒンヤリとなる。レオノールさんは近づいてきた騎士の肩を掴んで、少し僕達から離れた場所まで促した。
ボソボソと何か喋っている。
レオノールさんから冷たい空気がビシビシと出ている。オコだ。
ジャンさん達は黙ってその様子をチラチラと伺っている。
レオノールさんと話している騎士、「殿下が」って言ってたよね……。殿下って……、殿下だよね。王子様ってこと?
この国の王子様がこの町に来たの?
レオノールさんと騎士が話している様子を眺めていた兄上が口を開いた。
「あの……。僕らはこの辺で。送っていただきありがとうございました。」
兄上が言った途端、年上っぽい騎士と話をしていたレオノールさんが勢いよくこちらに振り返った。
「あら、ダメよ。ちゃんと送っていくわ。」
「小隊長!」
年上騎士が眉間に皺を寄せて怒ったように言う。
「視察の一環なのよ。じゃあ、また後で。」
「……。」
まだ何か言いたげな年上騎士を置いて、レオノールさんは僕達の方に戻ってきて先に進むように促した。
「……あの、お仕事ですよね。大丈夫なんですか?」
「問題ないわ。騒がせちゃったわね。」
不穏なワードを聞いちゃったし、仕事の内容を詳しく聞くわけにも行かなそうだし、戸惑ってしまう。
レオノールさんはスンと冷めた表情だ。穏やかそうに見えても先ほどまでとは全然顔つきが違う。
一方、ジャンさん達はちょっとソワソワして落ち着きない感じだ。
あ、そうか。ジャンさん達にとっても「仕えている人」が到着したって話だから早く職場に戻りたくなったのかもしれない。
心配げにみたら、ジャンさんと目があった。
「あ、俺達のことは気にするな。食糧調達が任務だから。」
「そうそう!角兎を分けてもらえたしな。」
ベルンさんも、意識したような明るい声で言う。
角兎をあげてしまったことで、僕達を家まで送っていくことがその対価ってことになってしまったようだ。これは早めに帰らないといけない。
「兄上、走って帰る?」
「クリス。僕達が慌ててもしょうがないよ。」
僕はなんだか焦っちゃって落ち着かなかったけど、兄上は結構冷静な様子だ。兄上も多分「殿下」ってワードは聞いていたと思う。
うちの屋敷に殿下は滞在するのだろうか。
レオノールさん達が僕達を家まで送ることを優先してくれているのも気になるけど、辺境伯様と一緒にやってくる「何組か」のことも気になる。
「クリス君、送るくらいどうってことないのだから、心配しなくて良いのよ。」
僕がソワソワしていたからか、レオノールさんが声をかけてくれた。
「そうだよ。何も泣かなくても、」
「え?泣いてないよ。」
「涙目じゃん。」
色々考え込んでいるうちに、目に涙が滲んでいたらしい。余計に気を使わせてしまった。ああー!
町のメイン通りから途中で路地に入り、町の北東方面に向かう道に出る。鍛冶屋とか道具屋とかの店が並んでいる。冒険者ギルドもこの通りにある。
冒険者ギルドの建物は、遠目でもすぐわかる黒っぽい目立つ建物だ。
冒険者ギルドの周辺にはいつもより人が多い気がした。
冒険者ギルドの建物の前を通る時、ジャンさん達はギルドの様子をチラチラと伺っていた。
後で角兎の狩場を聞きに行くのかな。
冒険者ギルドの前を通り過ぎてしばらく進むと店がまばらになってきて、緩やかな坂道になる。小高くなった場所に比較的大きな建物がいくつか見える。
その辺りがゲンティアナ男爵邸なんだけど、その前の道に馬車が列になってる。ちょっと物々しい。
「周辺の視察って言ってあったでしょう、日暮れ前には戻るとも。」
「殿下がご到着されました。」
「……早いわね……。でも、言う場所は考えて欲しいわ。」
周囲の空気がヒンヤリとなる。レオノールさんは近づいてきた騎士の肩を掴んで、少し僕達から離れた場所まで促した。
ボソボソと何か喋っている。
レオノールさんから冷たい空気がビシビシと出ている。オコだ。
ジャンさん達は黙ってその様子をチラチラと伺っている。
レオノールさんと話している騎士、「殿下が」って言ってたよね……。殿下って……、殿下だよね。王子様ってこと?
この国の王子様がこの町に来たの?
レオノールさんと騎士が話している様子を眺めていた兄上が口を開いた。
「あの……。僕らはこの辺で。送っていただきありがとうございました。」
兄上が言った途端、年上っぽい騎士と話をしていたレオノールさんが勢いよくこちらに振り返った。
「あら、ダメよ。ちゃんと送っていくわ。」
「小隊長!」
年上騎士が眉間に皺を寄せて怒ったように言う。
「視察の一環なのよ。じゃあ、また後で。」
「……。」
まだ何か言いたげな年上騎士を置いて、レオノールさんは僕達の方に戻ってきて先に進むように促した。
「……あの、お仕事ですよね。大丈夫なんですか?」
「問題ないわ。騒がせちゃったわね。」
不穏なワードを聞いちゃったし、仕事の内容を詳しく聞くわけにも行かなそうだし、戸惑ってしまう。
レオノールさんはスンと冷めた表情だ。穏やかそうに見えても先ほどまでとは全然顔つきが違う。
一方、ジャンさん達はちょっとソワソワして落ち着きない感じだ。
あ、そうか。ジャンさん達にとっても「仕えている人」が到着したって話だから早く職場に戻りたくなったのかもしれない。
心配げにみたら、ジャンさんと目があった。
「あ、俺達のことは気にするな。食糧調達が任務だから。」
「そうそう!角兎を分けてもらえたしな。」
ベルンさんも、意識したような明るい声で言う。
角兎をあげてしまったことで、僕達を家まで送っていくことがその対価ってことになってしまったようだ。これは早めに帰らないといけない。
「兄上、走って帰る?」
「クリス。僕達が慌ててもしょうがないよ。」
僕はなんだか焦っちゃって落ち着かなかったけど、兄上は結構冷静な様子だ。兄上も多分「殿下」ってワードは聞いていたと思う。
うちの屋敷に殿下は滞在するのだろうか。
レオノールさん達が僕達を家まで送ることを優先してくれているのも気になるけど、辺境伯様と一緒にやってくる「何組か」のことも気になる。
「クリス君、送るくらいどうってことないのだから、心配しなくて良いのよ。」
僕がソワソワしていたからか、レオノールさんが声をかけてくれた。
「そうだよ。何も泣かなくても、」
「え?泣いてないよ。」
「涙目じゃん。」
色々考え込んでいるうちに、目に涙が滲んでいたらしい。余計に気を使わせてしまった。ああー!
町のメイン通りから途中で路地に入り、町の北東方面に向かう道に出る。鍛冶屋とか道具屋とかの店が並んでいる。冒険者ギルドもこの通りにある。
冒険者ギルドの建物は、遠目でもすぐわかる黒っぽい目立つ建物だ。
冒険者ギルドの周辺にはいつもより人が多い気がした。
冒険者ギルドの建物の前を通る時、ジャンさん達はギルドの様子をチラチラと伺っていた。
後で角兎の狩場を聞きに行くのかな。
冒険者ギルドの前を通り過ぎてしばらく進むと店がまばらになってきて、緩やかな坂道になる。小高くなった場所に比較的大きな建物がいくつか見える。
その辺りがゲンティアナ男爵邸なんだけど、その前の道に馬車が列になってる。ちょっと物々しい。
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