転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
19 / 334
第1章

第19話 インテリメガネ

しおりを挟む
屋敷の本館の応接室のうち一番離れに近い部屋で会うという連絡を入れてもらってから、兄上と一緒に本館に向かう。
ハロルド・テッセン伯爵令息。

想像した姿は何となく堅苦しそうなプライドが高そうな感じの貴族令息。呼び出すくらいだからキリッとしていて賢そう。お勉強ができるタイプかな。「インテリメガネ」って感じ。

深緑色の髪を七三分けにして、王都で流行っている銀縁の眼鏡。時々眼鏡のブリッジ部分をクイッと押し上げる。
15歳位年齢の勉強ができて理屈っぽいイメージ。
まあ、勝手な想像だけど、何となくそんなイメージが頭に浮かんだ。

ーーー君に何がわかるって言うんだい?失った者は、もう戻ってくることはないのだよ。

ふとそんな台詞が思い浮かんだ。
癖毛の水色の髪の青白い顔をした少女が横たわったまま力無く深緑色の髪の少年に笑いかける。

ーーー兄様、笑って。眉間の皺が癖になっちゃうわ。
ーーーラミル……。

泣きそうなインテリメガネの横顔。

頭の中に色んな絵が浮かんでくることは前にもあったけど、台詞までついちゃったよ。
僕、脚本家か何かになれるかな。

「クリス。ぼーっとしてるとコケるぞ。」
「え?……うわっ!」

本館の裏口の少し手前で、敷石に足の先を引っ掛けてつんのめった。ダーンと前に出した足を踏ん張る。
転ばなかったのでセーフ!

「ほら、ぼーっと歩いてるから!」

兄上が呆れた声で言う。

「セーフだったでしょ。」
「いや。見られてるよ。アウト。」
「え?」

兄上に言われて前方を見ると、深緑色の髪の人物が立ってこちらを見ていた。

「あ!」

イメージの中のインテリメガネにそっくり!ただ髪型は七三分けじゃなくて、前髪をバサっと下ろした無造作ヘアだ。

「ゲンティアナ家の長男のローレンと次男のクリストファーです。」

僕が転けそうになったことには触れず、何食わぬ様子で応接室に入って挨拶をした。

「……ハロルド・テッセンだ。」

深緑色の髪の少年が名乗った。威圧的ではないけれど、機嫌は良くなさそう。
ハロルド君の背後には騎士が二人と執事っぽい人が立っている。
騎士二人は、兄上を突き飛ばしたいかつい顔の騎士と同じ騎士服を着ているのでちょっと身構えてしまう。

無表情でこちらをじっとこちらを見ている。「害意」というほどじゃないけれど、こちらを警戒しているみたいな感じを受ける。
執事の人は柔らかく微笑んでいるけれど、この人の方が怖い気がする。
「警戒」と言う感じじゃないんだけど、会った途端に僕達のことを観察してた。腰の水筒、めっちゃ見られてた。

「この度はテッセン伯爵家の騎士が失礼した。」

ハロルド君が小さく目を伏せて言う。頭は下げない。

「……謝罪は受け取りました。」

兄上が静かに応えた。よそ行きの声だ。背筋もピンと伸ばしていて、格好良い!

「「……。」」

会話が途切れる!あれ、もしかして僕が何か言わなきゃ行けなかったのかな?でもそういう流れでもなかったよね?

「……それでは。失礼します。」

兄上がぺこりとお辞儀をしたので、僕も合わせた。さっさと切り上げてしまう作戦。

「あ、ちょっと待ちたまえ。」

扉の方に向かおうとした時、ハロルド君が呼び止めた。兄上が一瞬固まり、ゆっくりと振り返った。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。 しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた! しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?! 「これ…スローライフ目指せるのか?」 この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!

ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜

ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが…… この世界の文明レベル、低すぎじゃない!? 私はそんなに凄い人じゃないんですけど! スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

処理中です...