転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第18話 お呼び出し

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「なんですか!あなた達は!」

兄上が大きな声で怒鳴った。

「我々はテッセン伯爵家の騎士団である!この先にはテッセン伯爵家の御令息以外にも第二王子殿下もいらっしゃるのだぞ!
お前達のようなどこの誰かわからぬものを通すわけにはいかん!下がれ!」

騎士のゴツい大きな手が僕の前に伸びてきた。兄上がその手を遮るように僕の前に立った。僕の目の前に兄上の背中。
ドンという音とともに兄上の背中と一緒に後ろに吹っ飛ぶ僕。
背中が何かにぶつかった。地面に転ぶかと思ったのが、転ばなかった。
チラリと銀色の髪が揺れるのが見えた。
見上げると、レオノールさんが僕と兄様を抱き止めてくれたのがわかった。

「何をやっている!」

レオノールさんは真っ直ぐ怖い顔の騎士の方を向いて、凍るような冷たい声音で言った。抱き止めてくれた時、ちょっと暖かかったのに急に空気が冷え込む。


「王宮騎士?」

ゴツゴツ顔の伯爵家の騎士だとかいう人がレオノールさんを見て言った。多分騎士服で判断したんだろう。

「王宮第三騎士団 第二小隊 小隊長のレオノールだ。貴様、彼らがゲンティアナ男爵令息と知っての行動か。」
「え?男爵家の!?」
「知らなかったとしても暴行を働いて許されるものではないぞ!」
「え、あっ……。」
「名を名乗れ!」

レオノールさんの怒声が響いた。青白い魔力がブワッと吹き上がるのが見えた。

至近距離で魔力を浴びたからか、クラクラしてしまって、そこからのちょっと記憶が曖昧だった。ちゃんと徒歩で屋敷に戻ってきたのは覚えているんだけどね。屋敷の離れの食堂で温かいミルクティを飲んでやっと落ち着いた。

目の前にクッキーが並んだお皿があったのでボリボリと齧ってたら、食堂の入り口から兄上が顔をひょこっと出した。

「お、元気になったみたいじゃん。」
「兄上……。あ!大丈夫だった?ドンってされたとこ!」
「ん。余裕余裕。あ、落ち着いたら伯爵令息が謝りに来たいって言ってたんだけど、呼んで良いか?」
「え?」

話が読めない。伯爵令息って誰だ?
頭の上にクエスチョンマークを沢山浮かべたみたいになっていたら、兄上が説明してくれた。

「テッセン伯爵家の令息だよ。伯爵家の騎士が迷惑かけたからって。」
「えー……。」

伯爵家って男爵家よりだいぶ上の爵位だよね。その令息が謝りに来るの?僕に?

「……突き飛ばされたのは兄上だよね。」
「ああ、でもクリスだってあの騎士に嫌な態度取られたじゃないか。もう少しで槍で刺されそうだったし。俺達二人に謝りたいんだって。」
「……そうなの?」

何となく面倒くさいなぁと思っていたら、兄上が苦笑した。

「なあ。面倒だよな。向こうは謝れば満足するんだろうから、とっとと済ませちゃおうよ。」

伯爵令息からしたら、自分のところの騎士団の一員が問題を起こしてモヤモヤしているから、それを解消したいってことなのか。
何だかなぁ、と思うけど。兄上が言うようにさっさと済ませてしまうことにした。

そうして、僕と兄上は着替えてから屋敷の本館に向かった。謝罪を受けるのにわざわざ着替えるのは朝から狩りをしていて、それなりに服が汚れてたからだ。
そして、離れの建物から本館までわざわざ出向いたのは、離れに来てほしくないからだったりする。

男爵邸の本館が客人で占拠されたみたいになっているのだ。離れは自分達の場所として維持しておきたいからね。
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