転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第65話 実験素材確保

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もう日が暮れているから、薬師のおばあちゃんに相談するのは明日になっちゃうな。
とりあえず、ドームの果物のうち一つは取っておいて、もう一つでいくつか試してみることにした。

最初に思いついたのは、昼間に毒耐性の魔石を泉の水につけておいたものだ。
時間が経った水を見てみると、なんとなくキラキラしている。魔石の方も内包物のキラキラが増しているように見えた。

なんとなくだけど、行けそうな気がする。

小さめの水差しを二つ持ってきて、魔石水を水差しに注ぎ入れた。

ドームの果物を一粒とって、水差しの魔石水の中にぽちゃんと入れた。
ドームの果物の粒が輝きながら静かに水差しの底に沈んでいった。そこまで沈んでも粒が光を放っていて、幻想的なランプのように見えた。

「綺麗ね……。」

メイリが水差しの灯りを感心したように見つめた。

もう一つの水差しに、今度はドームの果物の粒を潰して果汁を垂らした。

パアッと一瞬眩しいほどの光が輝いた。ギョッとしたけど、慌てて水差しを倒したりしないように気持ちを落ち着けながら手を引っ込め、メイリと二人で暫く無言で様子を眺めた。
やがて光は落ち着いて、ドームの果物と同じくらいのほのかな光具合に落ち着いた。

メイリが僕の腕にちょっとだけ手を添えていった。

「ねえ。クリス兄様……。これって『当たり』なんじゃない?」
「うん……。そうかも……。」

ほのかに輝く水を見つめていると「聖属性」という言葉が浮かんでくる。多分、何か効果がある水になったと思う。

「明日……、薬師のおばあちゃんに見てもらおう。……ずっとこの状態になのかも気になるし……。」

魔石水は魔石が入っていない状態だと、効果が薄れるのが早い。それを考えるとこの水の輝きも一晩経ったら消えてしまうかもしれない。

「魔石が入っている方も試してみたら?」
「うーん……。今、魔石が入っているこの状態を薬師のおばあちゃんに見せてからにするよ。」

魔石が入っている方が状態が確実に状態が維持できるような気はする。だけど、パーっと輝く状態とかも見てもらいたい。

暫く、光水を眺めていたら、母上と兄上が離れに戻ってきた。父上はまだ辺境伯様達と飲んでいるらしい。

ドームの果物で光水ができたことを話したら、母様も兄上も驚愕していた。

「ああ!食べてしまったわ!滅多に採取できないと言われて……。」
「俺も……、そんなことなら取っておけばよかったよ。」

光水自体に驚いたというより、凄い効能がありそうな入手困難な果物を夕食のデザートに食べてしまったという後悔が先に立ったらしい。
母様はすぐにマーサを呼んで、ジャックにドームの果実の残りをとっておくように指示を出した。

そしてまだ落ち着かずにブツブツと言っている。

「もし、晩酌に出していたらそれも回収してもらおうかしら。」
「辺境伯様にお出ししたものを回収するのはちょっと……。」
「大丈夫だよ。お酒に合う感じじゃなかったじゃない。」

屋敷に残っている全てのドームの果実を回収しそうな勢いの母様を僕と兄上で宥めた。
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