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第1章
第91話 背びれイタチ狩り
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屋敷に戻ってすぐに森の沼地が荒らされていることを報告しようと思ったんだけど、父上は今日も辺境伯様達と朝早くから出かけていて不在だった。ひとまず母様にだけ報告をした。
急いで数人の騎士が状況を確認に行くことになったんだけど案内はボブがすることになった。僕と兄上は殿下達の狩りの案内をしろと言われてしまったんだ。
「……非常事態だと思うんだけどな。」
兄上は殿下達の案内を優先しろと言われて不満そうだったけど、母様は首を横に振って厳しい表情をした。
「非常事態だからよ。誰がどういう意図でやったのかわからないのだから、お客様に危険が及ぶ可能性がないとも限らないわ。
もしも闇雲に火魔法を放つ者が、ネイサン殿下達が訓練をしている場に現れたらどうするの?」
「……それもそうだね。」
「ゴーシュ様にも伝えておくわ。できれば訓練で出かける事自体を中止にしていただきたいのだけど……。」
母様はゴーシュさんに連絡をしたり、沼地の状況確認をする騎士を手配したりと忙しそうに動いていた。
殿下達の午後の狩場での訓練自体は結局行うことになったのだけど、
角トカゲのいる湿地は森に近いので、急遽別の狩場へ案内をすることになった。
森の近くではない場所で、狩りの難易度が低めの場所ということで、西の荒地に向かうことにした。西の荒地の岩場には角兎が生息しているけれど、殿下達の狩りの標的として考えているのは岩場の角兎ではなく、平地の石がゴロゴロしている場所に入る背びれイタチだ。
小さいけど背中にトゲトゲした背びれがついたイカついイタチで、毛皮がなければパッと見は少し丸みがあるトカゲみたいにも見える。
「そちらに一匹いきました!」
「よし!ハァァ!!」
「惜しい!もう一度どうぞ!」
荒地の一角に土魔法で腰の高さくらいの壁を作って囲んだ狭いスペースに騎士が背びれイタチを追い立てる。
囲みの入り口のところで待機をしていたネイサン殿下が囲みの中に追い立てられた背びれイタチに向かって剣をを振り下ろす。
背びれイタチは横にぴょんと飛んで剣撃を避け、ネイサン殿下が振るった剣の先が地面に叩きつけられた。
近くに立っている騎士が慌てずに槍の絵で背びれイタチを叩いて、押し戻した。
背びれイタチの鳴き声が響いた。
僕と兄上は並んで土の囲いの外から眺めている。近くでは他の騎士さん達がもう一つ土の囲いの作成中だ。
追加で作っている囲いは、シェリル嬢とリネリア嬢の訓練用だそうだ。
男子チーム、女子チームにそれぞれ分かれて、騎士が囲いの中まで追い立てた背びれイタチを交代で討伐するらしい。
ガツっと何度も剣先が地面に叩きつけられる音がする。その度に騎士が槍の柄や盾を使って、背びれイタチにダメージを与えてから殿下の前に追いやる。
少しずつ背びれイタチの動きが鈍くなったからか、段々と剣の攻撃が背びれイタチに当たるようになり、遂に背びれイタチが動かなくなった。
「「「お見事!」」」
「ふぅ~。」
騎士達がネイサン殿下を褒め称え、ネイサン殿下は一仕事終えた様子で渡されたハンカチで汗を拭った。
パチパチとシェリル嬢とリネリア嬢が手を叩いた。
「流石ですわ。」
「お見事でした!」
ネイサン殿下は、軽く手を上げてシェリル嬢とリネリア嬢の賞賛に応え、囲いの外で見ていたハロルド君に声をかけた。
「交代だ。次はハロルドの番だよ。……思ったよりすばしっこかった。」
「お疲れ様でした。殿下。」
ハロルド君はネイサン殿下に労いの言葉をかけた後、囲いの中に立った。
急いで数人の騎士が状況を確認に行くことになったんだけど案内はボブがすることになった。僕と兄上は殿下達の狩りの案内をしろと言われてしまったんだ。
「……非常事態だと思うんだけどな。」
兄上は殿下達の案内を優先しろと言われて不満そうだったけど、母様は首を横に振って厳しい表情をした。
「非常事態だからよ。誰がどういう意図でやったのかわからないのだから、お客様に危険が及ぶ可能性がないとも限らないわ。
もしも闇雲に火魔法を放つ者が、ネイサン殿下達が訓練をしている場に現れたらどうするの?」
「……それもそうだね。」
「ゴーシュ様にも伝えておくわ。できれば訓練で出かける事自体を中止にしていただきたいのだけど……。」
母様はゴーシュさんに連絡をしたり、沼地の状況確認をする騎士を手配したりと忙しそうに動いていた。
殿下達の午後の狩場での訓練自体は結局行うことになったのだけど、
角トカゲのいる湿地は森に近いので、急遽別の狩場へ案内をすることになった。
森の近くではない場所で、狩りの難易度が低めの場所ということで、西の荒地に向かうことにした。西の荒地の岩場には角兎が生息しているけれど、殿下達の狩りの標的として考えているのは岩場の角兎ではなく、平地の石がゴロゴロしている場所に入る背びれイタチだ。
小さいけど背中にトゲトゲした背びれがついたイカついイタチで、毛皮がなければパッと見は少し丸みがあるトカゲみたいにも見える。
「そちらに一匹いきました!」
「よし!ハァァ!!」
「惜しい!もう一度どうぞ!」
荒地の一角に土魔法で腰の高さくらいの壁を作って囲んだ狭いスペースに騎士が背びれイタチを追い立てる。
囲みの入り口のところで待機をしていたネイサン殿下が囲みの中に追い立てられた背びれイタチに向かって剣をを振り下ろす。
背びれイタチは横にぴょんと飛んで剣撃を避け、ネイサン殿下が振るった剣の先が地面に叩きつけられた。
近くに立っている騎士が慌てずに槍の絵で背びれイタチを叩いて、押し戻した。
背びれイタチの鳴き声が響いた。
僕と兄上は並んで土の囲いの外から眺めている。近くでは他の騎士さん達がもう一つ土の囲いの作成中だ。
追加で作っている囲いは、シェリル嬢とリネリア嬢の訓練用だそうだ。
男子チーム、女子チームにそれぞれ分かれて、騎士が囲いの中まで追い立てた背びれイタチを交代で討伐するらしい。
ガツっと何度も剣先が地面に叩きつけられる音がする。その度に騎士が槍の柄や盾を使って、背びれイタチにダメージを与えてから殿下の前に追いやる。
少しずつ背びれイタチの動きが鈍くなったからか、段々と剣の攻撃が背びれイタチに当たるようになり、遂に背びれイタチが動かなくなった。
「「「お見事!」」」
「ふぅ~。」
騎士達がネイサン殿下を褒め称え、ネイサン殿下は一仕事終えた様子で渡されたハンカチで汗を拭った。
パチパチとシェリル嬢とリネリア嬢が手を叩いた。
「流石ですわ。」
「お見事でした!」
ネイサン殿下は、軽く手を上げてシェリル嬢とリネリア嬢の賞賛に応え、囲いの外で見ていたハロルド君に声をかけた。
「交代だ。次はハロルドの番だよ。……思ったよりすばしっこかった。」
「お疲れ様でした。殿下。」
ハロルド君はネイサン殿下に労いの言葉をかけた後、囲いの中に立った。
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