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第1章
第95話 解毒剤を渡す
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僕が土魔法の魔法陣を眺めていると、背後から足音が聞こえてきた。
「それも埋めて大丈夫?」
レオノールさんが近づいてきて僕の足元にある背びれイタチの死骸を指し示した。
「あ、この背びれイタチの魔石がちょっと見たいんですけど……。」
「魔石が欲しいの?」
「見てみたいだけです。」
僕が狩った獲物じゃないし、魔石が欲しいわけじゃないんだ。ちょっと魔石がどんな状態なのかが気になっただけなんだよね。
レオノールさんは僕が言ったことを理解してくれたのかわからないけど、首をちょっとだけ傾げて微笑んだ。
「埋めちゃう予定だから、欲しければ背びれイタチ本体でも魔石でも好きにして良いわよ。魔石、取り出せる?私が取りましょうか?」
「自分で取れます。ありがとうございます!」
好きにして良いと言うならありがたく魔石をもらうことにした。
僕はレオノールさんにお礼を言ってから、しゃがみ込みナイフを取り出して背びれイタチの腹を縦に切り裂いた。
切り裂いたところから溢れ出てきた血を水魔法で洗い流しながら、ナイフの先で探って魔石を取り出した。
「あら。……無詠唱で水魔法……。」
僕の様子を見ていたレオノールさんが呟くように言葉を漏らした。魔石を取り出すのにイチイチ水魔法は使わないのかな。贅沢だって思われたのかな。
「魔獣の血はあまり素手では触らない方が良いって聞くから……。」
「そう……。」
僕は水魔法を使った理由をレオノールさんに伝えてから、もう一度水魔法を発動させて魔石を洗った。手拭き布で魔石の水気を拭き取ってから指先で摘むように持って陽の光に翳した。
透明感があって深い緑色の綺麗な魔石だ。思った通り魔力の含有量が多い。
大きさも通常より大きいと思う。背びれイタチの魔石を見るのはかなり久しぶりだけど、以前見た背びれイタチの魔石は麦粒くらいの大きさだったのが、これは一回りくらいは大きい。ひょいとレオノールさんが首を伸ばして僕の手元を覗き込んだ。
「背びれイタチの魔石って意外と立派な魔石だったのね。」
「この魔石は特に大きい方だと思います!普通はもっと小さいです。」
綺麗な魔石が手に入って嬉しい!でも、思ったより大きい魔石だったからレオノールさんも欲しいかな。
「要りますか?」
レオノールさんに魔石を差し出すと、レオノールさんはちょっと目を大きく開いてから首を横に振って微笑んだ。
「クリス君が持って帰りなさい。この大きさなら売れるわよ。」
魔石は僕が持って帰って良いって再確認したのでお礼を言って、腰につけた巾着に魔石をしまう。魔石を持ったまま巾着の中に手を入れたら、指の先に小瓶が当たった。
薬師のおばあちゃんに作ってもらった光水の小瓶だ。
ちょうど良い!と思って僕は光水の小瓶を2本取り出して、レオノールさんに差し出した。
「これ、薬師のおばあちゃんにもらった解毒剤の試供品です。よかったらどうぞ!」
「解毒剤?いや、魔石のお礼は不要よ!」
「じゃあ、お礼じゃなくても良いんで、よかったら持っててください。レオノールさんに持っていてもらいたいんです!」
レオノールさんにどうやって光水を渡そうか考えていたけど、とりあえず差し出しちゃったんだから、受け取って欲しい。
急に解毒剤とか言われても戸惑っちゃうかもしれないけど。
「……。」
「……じゃあ、一本だけ貰うわね。ありがとう。」
僕が光水の小瓶を差し出したまま、じっとレオノールさんを見上げていたらレオノールさんが、仕方ないという感じで小瓶の一つを手にしてくれた。
「二本ともどうぞ!」
「一本で良いわよ。」
「いえ!二本とも受け取ってください!」
「そう……。ではいただくわ。」
グイグイと光水の小瓶をレオノールさんに押し付けて、何とか光水を二本とも受け取ってもらえた。ちょっと強引だったかもしれない。
僕にお礼を言った後、レオノールさんは光水の小瓶を懐にしまってそのまま訓練の土囲いの方に向かって歩いて行く。土囲いの近くにいる騎士の人達にレオノールさんが何やら声をかけていた。レオノールさんに何か言われた騎士は、土魔法で掘られた穴の方に駆けて行って背びれイタチの死骸を穴に放り込んだ。
「それも埋めて大丈夫?」
レオノールさんが近づいてきて僕の足元にある背びれイタチの死骸を指し示した。
「あ、この背びれイタチの魔石がちょっと見たいんですけど……。」
「魔石が欲しいの?」
「見てみたいだけです。」
僕が狩った獲物じゃないし、魔石が欲しいわけじゃないんだ。ちょっと魔石がどんな状態なのかが気になっただけなんだよね。
レオノールさんは僕が言ったことを理解してくれたのかわからないけど、首をちょっとだけ傾げて微笑んだ。
「埋めちゃう予定だから、欲しければ背びれイタチ本体でも魔石でも好きにして良いわよ。魔石、取り出せる?私が取りましょうか?」
「自分で取れます。ありがとうございます!」
好きにして良いと言うならありがたく魔石をもらうことにした。
僕はレオノールさんにお礼を言ってから、しゃがみ込みナイフを取り出して背びれイタチの腹を縦に切り裂いた。
切り裂いたところから溢れ出てきた血を水魔法で洗い流しながら、ナイフの先で探って魔石を取り出した。
「あら。……無詠唱で水魔法……。」
僕の様子を見ていたレオノールさんが呟くように言葉を漏らした。魔石を取り出すのにイチイチ水魔法は使わないのかな。贅沢だって思われたのかな。
「魔獣の血はあまり素手では触らない方が良いって聞くから……。」
「そう……。」
僕は水魔法を使った理由をレオノールさんに伝えてから、もう一度水魔法を発動させて魔石を洗った。手拭き布で魔石の水気を拭き取ってから指先で摘むように持って陽の光に翳した。
透明感があって深い緑色の綺麗な魔石だ。思った通り魔力の含有量が多い。
大きさも通常より大きいと思う。背びれイタチの魔石を見るのはかなり久しぶりだけど、以前見た背びれイタチの魔石は麦粒くらいの大きさだったのが、これは一回りくらいは大きい。ひょいとレオノールさんが首を伸ばして僕の手元を覗き込んだ。
「背びれイタチの魔石って意外と立派な魔石だったのね。」
「この魔石は特に大きい方だと思います!普通はもっと小さいです。」
綺麗な魔石が手に入って嬉しい!でも、思ったより大きい魔石だったからレオノールさんも欲しいかな。
「要りますか?」
レオノールさんに魔石を差し出すと、レオノールさんはちょっと目を大きく開いてから首を横に振って微笑んだ。
「クリス君が持って帰りなさい。この大きさなら売れるわよ。」
魔石は僕が持って帰って良いって再確認したのでお礼を言って、腰につけた巾着に魔石をしまう。魔石を持ったまま巾着の中に手を入れたら、指の先に小瓶が当たった。
薬師のおばあちゃんに作ってもらった光水の小瓶だ。
ちょうど良い!と思って僕は光水の小瓶を2本取り出して、レオノールさんに差し出した。
「これ、薬師のおばあちゃんにもらった解毒剤の試供品です。よかったらどうぞ!」
「解毒剤?いや、魔石のお礼は不要よ!」
「じゃあ、お礼じゃなくても良いんで、よかったら持っててください。レオノールさんに持っていてもらいたいんです!」
レオノールさんにどうやって光水を渡そうか考えていたけど、とりあえず差し出しちゃったんだから、受け取って欲しい。
急に解毒剤とか言われても戸惑っちゃうかもしれないけど。
「……。」
「……じゃあ、一本だけ貰うわね。ありがとう。」
僕が光水の小瓶を差し出したまま、じっとレオノールさんを見上げていたらレオノールさんが、仕方ないという感じで小瓶の一つを手にしてくれた。
「二本ともどうぞ!」
「一本で良いわよ。」
「いえ!二本とも受け取ってください!」
「そう……。ではいただくわ。」
グイグイと光水の小瓶をレオノールさんに押し付けて、何とか光水を二本とも受け取ってもらえた。ちょっと強引だったかもしれない。
僕にお礼を言った後、レオノールさんは光水の小瓶を懐にしまってそのまま訓練の土囲いの方に向かって歩いて行く。土囲いの近くにいる騎士の人達にレオノールさんが何やら声をかけていた。レオノールさんに何か言われた騎士は、土魔法で掘られた穴の方に駆けて行って背びれイタチの死骸を穴に放り込んだ。
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