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第1章
第96話 魔法での訓練
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とりあえず、レオノールさんに光水を渡すことはできたけど「解毒剤」と言っただけで「呪いの毒」に効くとは伝えていない。
もしも「呪いの毒」がついたナイフで刺されるような事が本当に起きたとしも、その時に光水を使ってもらえるかわからないんだよなぁ。
だけど、いきなり「呪いの毒」なんて言ったってびっくりされちゃうよね。受け取ってもらえただけ良いのかな。
レオノールさんの遠ざかっている後ろ姿をじっと見つめていた。
なんとかレオノールさんに説明をしたい気持ちと、本当に起きるかどうかわからない事なのに言ってどうするんだという気持ちがごちゃごちゃと入り混じる。
実際に起きるかどうか、僕だって半信半疑だ。いや半分も信じてないかも。ただ少しでも安心したいんだよね。
モヤモヤと考えていると土囲いがある方からワイワイと和やかな声が聞こえてきた。殿下たちが集まって談笑している。
どうやら休憩タイムになったようだ。今日はバーベキューはしないみたいけど、騎士が土魔法で作ったらしい小さい竈門に火を起こしていて、その側にメイドさんが片手鍋を持って立っている。お茶を淹れるようだ。
視線を感じたので振り向くと兄上が僕に向かって手招きをしていた。兄上の元に駆け寄っていくと、僕達の分もお茶を用意してもらえるらしい。
土の囲い塀の中に設置された臨時のティータイム会場に同席することになった。
「何度か挑戦しているうちに、かなり慣れてきたと思う。さっきは一発目でかなりのダメージを与えることができたよ。」
「あれはお見事でした。」
「ハロルドだって二発目で倒せていたじゃないか。」
「たまたま当たりどころが良かったようです。」
背びれイタチが出没する、ゴツゴツと大きな石と丈の高い雑草だらけの荒地の上にテーブルと椅子を置いてティータイム。
ちょっと不思議な感じがする。兄上と僕は感想を求められる訳でもなかったので黙って一緒に座ってお茶を飲んで彼らが話すのを聞いていた。
訓練に手応えを感じているようで、殿下達の表情は明るい。
「リネリア嬢の順番の時に、土に埋めて背びれイタチを動かなくさせていたでしょう。あれを見ていて思ったんだけど……。」
「え?私、もしかして何かまずいことをしてしまったかしら?」
シェリル嬢がお茶を一口飲んでから口を開くと、名前を呼ばれたリネリア嬢がちょっと不安げな顔をした。
「まずいことは何もないわ。背びれイタチを動けなくするなら、魔法を当てる練習もできないかなと思ったのよ。」
「なるほど、それは良いかもしれない。」
シェリル嬢の提案に殿下が反応を示す。右手の掌をグーパーさせて笑った。
「そろそろ手が痛くなってきたからな。魔法の訓練に切り替えるのも良さそうだ」
「それは確かにそうですね。」
ネイサン殿下の言葉にハロルド君が涼しげな笑みを浮かべて頷いた。
そろそろ日が傾き始めたから、休憩後に何巡か訓練をしたら終了の予定らしいのだけど終盤は剣や弓ではなく攻撃魔法の実施訓練ということになったようだ。
土魔法を使っていた騎士さんが魔石水をラッパ飲みし始めた。魔力、大丈夫かな。魔法陣魔石を使わずに、魔法だけでやっているのは大変そうだ。
リネリア嬢の訓練分だけじゃなくて、全員分の訓練の度に土魔法で背びれイタチを埋めていると大変なんじゃないかなと心配になったけれど、結局、魔法での攻撃訓練は一人1セットで終了となった。
土に半分埋めた状態の背びれイタチを魔法で攻撃をしていたけれど、なかなか魔法が当たらなかったり、当たっても致命傷に至らなかったりして、魔法を連発した魔力の方が先に心許なくなってきてしまったらしいのだ。
フラフラになっている感じではなかったんだけど、少し息が上がってきたから無理しないことにしたらしい。
「……難しいな。魔法は。」
「そうですね。当たっても剣ほどダメージを与えられませんでした。」
「リネリア嬢の魔法は凄く上手くなってたわね。」
「い、いえ。結局、魔法をぶつけるのにかなり近くまで行ってしまいました。」
「それでも、昨日、訓練場で見た時と全然違ったわ!」
全員、魔法での討伐をすることができたようだった。ネイサン殿下とハロルド君は的での練習の時くらい離れた距離から魔法を放っていた。
シェリル嬢とリネリア嬢は、殿下達よりは標的との距離を短くしてチャレンジをしていたのだけど、リネリア嬢は更に何歩か前に出て水魔法を放っていたのだ。
褒められてリネリア嬢は恐縮しているみたいに見えたけれど、狩りの成果を感じていたのか満足げな笑みを浮かべていた。
もしも「呪いの毒」がついたナイフで刺されるような事が本当に起きたとしも、その時に光水を使ってもらえるかわからないんだよなぁ。
だけど、いきなり「呪いの毒」なんて言ったってびっくりされちゃうよね。受け取ってもらえただけ良いのかな。
レオノールさんの遠ざかっている後ろ姿をじっと見つめていた。
なんとかレオノールさんに説明をしたい気持ちと、本当に起きるかどうかわからない事なのに言ってどうするんだという気持ちがごちゃごちゃと入り混じる。
実際に起きるかどうか、僕だって半信半疑だ。いや半分も信じてないかも。ただ少しでも安心したいんだよね。
モヤモヤと考えていると土囲いがある方からワイワイと和やかな声が聞こえてきた。殿下たちが集まって談笑している。
どうやら休憩タイムになったようだ。今日はバーベキューはしないみたいけど、騎士が土魔法で作ったらしい小さい竈門に火を起こしていて、その側にメイドさんが片手鍋を持って立っている。お茶を淹れるようだ。
視線を感じたので振り向くと兄上が僕に向かって手招きをしていた。兄上の元に駆け寄っていくと、僕達の分もお茶を用意してもらえるらしい。
土の囲い塀の中に設置された臨時のティータイム会場に同席することになった。
「何度か挑戦しているうちに、かなり慣れてきたと思う。さっきは一発目でかなりのダメージを与えることができたよ。」
「あれはお見事でした。」
「ハロルドだって二発目で倒せていたじゃないか。」
「たまたま当たりどころが良かったようです。」
背びれイタチが出没する、ゴツゴツと大きな石と丈の高い雑草だらけの荒地の上にテーブルと椅子を置いてティータイム。
ちょっと不思議な感じがする。兄上と僕は感想を求められる訳でもなかったので黙って一緒に座ってお茶を飲んで彼らが話すのを聞いていた。
訓練に手応えを感じているようで、殿下達の表情は明るい。
「リネリア嬢の順番の時に、土に埋めて背びれイタチを動かなくさせていたでしょう。あれを見ていて思ったんだけど……。」
「え?私、もしかして何かまずいことをしてしまったかしら?」
シェリル嬢がお茶を一口飲んでから口を開くと、名前を呼ばれたリネリア嬢がちょっと不安げな顔をした。
「まずいことは何もないわ。背びれイタチを動けなくするなら、魔法を当てる練習もできないかなと思ったのよ。」
「なるほど、それは良いかもしれない。」
シェリル嬢の提案に殿下が反応を示す。右手の掌をグーパーさせて笑った。
「そろそろ手が痛くなってきたからな。魔法の訓練に切り替えるのも良さそうだ」
「それは確かにそうですね。」
ネイサン殿下の言葉にハロルド君が涼しげな笑みを浮かべて頷いた。
そろそろ日が傾き始めたから、休憩後に何巡か訓練をしたら終了の予定らしいのだけど終盤は剣や弓ではなく攻撃魔法の実施訓練ということになったようだ。
土魔法を使っていた騎士さんが魔石水をラッパ飲みし始めた。魔力、大丈夫かな。魔法陣魔石を使わずに、魔法だけでやっているのは大変そうだ。
リネリア嬢の訓練分だけじゃなくて、全員分の訓練の度に土魔法で背びれイタチを埋めていると大変なんじゃないかなと心配になったけれど、結局、魔法での攻撃訓練は一人1セットで終了となった。
土に半分埋めた状態の背びれイタチを魔法で攻撃をしていたけれど、なかなか魔法が当たらなかったり、当たっても致命傷に至らなかったりして、魔法を連発した魔力の方が先に心許なくなってきてしまったらしいのだ。
フラフラになっている感じではなかったんだけど、少し息が上がってきたから無理しないことにしたらしい。
「……難しいな。魔法は。」
「そうですね。当たっても剣ほどダメージを与えられませんでした。」
「リネリア嬢の魔法は凄く上手くなってたわね。」
「い、いえ。結局、魔法をぶつけるのにかなり近くまで行ってしまいました。」
「それでも、昨日、訓練場で見た時と全然違ったわ!」
全員、魔法での討伐をすることができたようだった。ネイサン殿下とハロルド君は的での練習の時くらい離れた距離から魔法を放っていた。
シェリル嬢とリネリア嬢は、殿下達よりは標的との距離を短くしてチャレンジをしていたのだけど、リネリア嬢は更に何歩か前に出て水魔法を放っていたのだ。
褒められてリネリア嬢は恐縮しているみたいに見えたけれど、狩りの成果を感じていたのか満足げな笑みを浮かべていた。
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