転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
162 / 334
第1章

第162話 毒耐性魔獣の出処

しおりを挟む
「あの毒耐性を持った魔獣はもしかしてこの木の実を食べたのかな。丸呑みで……」
「その可能性もあるし、木の実を食べて毒状態になった魔獣と戦ったのかもしれない。それか毒状態の魔獣を食べたとか」

魔獣なら、木の実を食べるときにいちいち殻を外さないことの方が多いだろう。リス系の魔獣とかだったら殻を割ったりするかな。
噛み砕いてたべるとしても、口いっぱいに含んで、一部は実を丸ごと飲み込んでしまうこともあるかもしれない。
食べた魔獣の属性が水属性か土属性が強かったら……。

食べた木の実がお腹の中で「呪いの毒」に変化して、その魔獣と戦ったり、食べたりしたら「呪いの毒」がどんどん広がってしまうんじゃないか?

やばいんじゃない?

実験を終えて、光水で解毒した木の実を壺にいれて厳重に密封している様子を眺めながら僕は泉の向こう側の事を考えていた。

「森の奥の泉の向こう側にはこの木の実があるかもしれないよね。……これは、誰かが泉の向こう側に行って採取してきたのかな」
「どうだろう。他所の土地の冒険者が持ち込んだらしいからね」
「他所からきた冒険者?」
「ギルドははっきり言わなかったけど、そんな感じがした」
「冒険者って……」

ふと、手袋が汚れた騎士や眉に傷がある冒険者の事を思い浮かべた。脳裏に浮かんだ光景野中では手袋が汚れていた騎士も冒険者の格好をしていたんだよね。他所からきた冒険者って、もしかして彼らの事だったりする?

ルドおじさんが書いた実験レポートの写しと薬師のおばあちゃんが書いてくれた父上への報告書を預かった。
通常は依頼を受けたら、依頼者以外には結果や情報は漏らさないものだけど、
必要があれば領主への報告はすることになっているのだそうだ。僕と兄上は領主の子からというのもあるけど薬師のおばあちゃんの弟子扱いだから、結果も教えてもらえるし実験もさせてもらえているらしい。

薬師のおばあちゃんの店を出た後、裏手にある冒険者ギルドの前を通った。
遠巻きに見るだけで中には入らないけどね。

何人かギルドに出入りしている人の様子を眺めた。ゲンティアナの騎士をしているのを見た事がある人がいる。
この町の冒険者は元々は騎士だった人が多いのだそうだ。
父上が騎士をしていたときに一緒に仕事をしたり戦ったりしていた人達が、父上が男爵となって領地を得たときに一緒にゲンティアナの地に移り住んできたのだそうだ。

魔獣が多い地で領地を守る騎士は必要だけど、沢山の給金は払えないから冒険者をしながら騎士をしてもらっているらしい。
だからか、この町の冒険者はおじさんが多いイメージだ。とは言っても、冒険者の格好のときにはあまりちゃんと見ていない気がするけど。

「クリス、もう行こう」

冒険者ギルドの前で立ち止まったら、兄上に背中をトンと叩かれた。
眉に傷がある冒険者とか現れないかな、と思っていたのが顔に出ていたのか、ぽんと肩に手を置かれて耳元で小声でささやかれた。

「気になるかもしれないけど、今は報告書を持ち帰るのが先だろう?」
「うん……」

兄上に促されて冒険者ギルドの前から立ち去った。

確かに、もしも眉に傷がある冒険者が現れたとして、捕まえるわけにもいかない。
僕が脳裏の光景で見ただけだから、騎士達と一緒に沼地を荒らした証拠もないし、
毒事件に関わっている証拠もないんだよね。

「……もしも、怪しい人を見つけたら、尾行して父上に知らせるのがよいのかな」

冒険者ギルドからだいぶ離れた位置まで来てから、僕は後ろを振り返ってギルドがある方向をみやった。でも兄上は反対の様子。

「……怪しい人物の尾行は、俺たちじゃなくてもよいだろう。尾行が得意な人にやってもらう方が良い」
 尾行なんて危険なんだぞ。追いかけて路地裏に入ったら、待ち伏せされているなんてこともあるかもしれないぞ」
「ええ!怖!」

そもそも、子供が尾行していたら目立つ、と兄上に駄目出しされてしまった。
確かにそれはそうだね。
そうなると、すぐに連絡ができる道具があったほうがよいだろうか。
何か作れないかなぁ。

しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。 しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた! しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?! 「これ…スローライフ目指せるのか?」 この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!

ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜

ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが…… この世界の文明レベル、低すぎじゃない!? 私はそんなに凄い人じゃないんですけど! スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

処理中です...