転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第163話 沼地事件の推測

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すぐに連絡できる道具もだけど、河原の時みたいに絡まれた時の対策の道具も用意しておきたかったんだよね。
それと、沼地が荒らされていた時、森の中の様子がちょっと変だなって思ったタイミングで見に行けば良かったなってちょっと思っている。
だけど、見に行ったらあの河原の騎士達がいたんだったら対抗手段も必要だったんだよね。

沼地のことを考えたら惨状を思い出す。沼地を囲んでいる木の根元や藪が焼け焦げていた。赤や青や灰色のキノコも見当たらなかった。

薬師のおばあちゃんのところで、少し考えていたことを思い出した。
灰色キノコがこの辺りでは沼地にしか生えていないということは、厨房に差し入れとして運ばれてきた木箱の中の灰色キノコはいつ何処で採取されたのかってことだ。

沼地で採ってきたものだった場合は、採取ができるタイミングは沼地が荒らされる前しかない。例えば早朝とか沼地を荒らした連中が来るよりも、ずっと前に森に食糧の採取にきてたのかもしれない。

それか沼地を荒らしたタイミングで、キノコを採取してたとか?

「クリス、どうした?」

考えながら歩いていたら歩く速度が遅くなったのか、前を歩いていた兄上が振り返って引き返してきた。

「うん……。灰色キノコはこの辺だと森の沼地でしか取れないって言っていたよね。
厨房に運ばれてきた木箱のやつって、いつ採取されたのかと思って。
厨房にキノコが入った木箱があったのって、沼地が荒らされていた日じゃなかったっけ」

僕の言葉に兄上は難しそうな顔をして首を捻った。

「……早朝とか、沼地が荒らされた時より前の時間に採取されたって可能性はあるけど……。それだと、沼地が荒らされた調査をしているときに、採取に行ったときには何事もなかったとか、何か証言がありそうだけど何も聞いてないよな。
他で入手してゲンティアナに食糧として持ち込んできた可能性もゼロではないけど、それならもっと早く野営で中毒事件がおきているだろうし」
「厨房にキノコを持ってきた人も沼地を荒らした人と関係があるってことかな。キノコを採ってから沼地を燃やした……」
「証拠隠滅かな。毒キノコを採取したことをごまかすために、沼地を燃やしたんじゃないか」
「でも、沼地ごと燃やすまでする必要あるかな?一本、二本採ったってわからないでしょう?」
「大量に採ったんだろう。毒を精製するのには量が必要だろうし。
 毒キノコが採取されてたのが察知されたら、毒に警戒されるから燃やしたんじゃないか」

厨房に毒キノコ入りの木箱を持ってきた騎士は沼地を荒らした事件と関連していると兄上も僕も同じ結論に至った。
「初討伐」のお祝いの時の毒事件もだ。

沼地で大量に灰色キノコを採取して、ごまかす為に沼地ごと焼いた。
厨房の差し入れに毒キノコを混入して、ジャックが調理して殿下の口に入ることを期待したんじゃないかな。
わざとじゃないって、アピールする為に野営の騎士達の食事にも混ぜたんだろう。
うまくいかなかったから、宴で毒を盛る作戦にしたんだと思う

怖い推測になっちゃった。

でもそう考えると沼地が荒らされた原因が腑に落ちる気がする。

「……厨房に差し入れを持ってきた騎士についても、調査もらった方がよいな」

兄上は「ふぅ」と溜息を吐いてからポンと僕の肩を叩いた。

「今のも合わせて父上に報告だな」

兄上がちょっと大股で早足で歩き出したので僕は慌てて追いかけた。
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