転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
164 / 334
第1章

第164話 戻って報告

しおりを挟む
屋敷に戻ってきたら、正門にはゲンティアナの騎士より王宮騎士の方が多くいて、普段より物々しい雰囲気だ。
でも、僕と兄上は問題なく門を通過できた。門に向かって歩いてくるのを見られていたからか、普通に「おかえりなさい」って言われただけだった。

正門から入ったところでボブが出迎えてくれた。

「坊ちゃん達、二人で狩りに行ってしもうたと思ったでさぁ」
「あ……」

ボブがちょっと困ったように眉を下げた。
そういえば、狩りに行くときはボブも一緒に行くことになっていたんだった。
出かける時にボブに声を掛けてなかった、と思ったけど兄上は特に動じた様子もなく返事をした。

「薬師の店に行っていただけだよ」
「今は何処に行くにも用心せんといけんでさぁ」
「うん。そうだね。今度からそうするよ。出かける時、ボブに声をかけるね。
この後、狩りに出かけようとおもってたんだけど、ちょっと時間食っちゃったから出発が遅れそうだよ」
「わしはいつでもええでさぁ」

薬師のおばあちゃんの店から森に直行する予定の積りだったけど、
当面の狩りはボブも同行することになってたんだった。
兄上は最初から一度屋敷に戻ってからボブに声を掛けて出かけるつもりだったのかな。

薬師のおばあちゃんのところで紫色の木の実の実験をしたから、
いつもより狩りに出発する時間が遅くなってしまった。父上に紫色の木の実の報告と沼地事件で考えたことの報告もしないといけない。
すぐには出発ができなさそうだ。

「午後までに戻ってこれるかな。午後は訓練場に顔を出すんだよね」
「急げば午後には戻れると思うよ。馬を走らせれば大丈夫じゃないか?昼食をゆっくり食べられないかもしれないけど」
「昼食かぁ」

昼食はメイリと一緒に食べる予定だったから、ちょっとは余裕をもって食べたいな。

「狩りを手短にすればよい?」
「そうだけど。焦ると狩りに集中できなくなるから、急いで狩ろうとするなよ。
 遅くなったらなったで仕方ない。午後の訓練だって約束しているわけじゃないんだから」
「うん」

ちょっと出発が遅くなっても黎明の泉のところに狩りに行く予定を変えないのは
泉の水を汲みに行くのと、出来るだけ毒耐性の魔石を手に入れたいからだ。
紫色の木の実の件があって、ますます、泉の水と毒耐性の魔石が必要になってきた。
「収納」スキルが手に入って本当に良かったと思う。
泉の水も多く運べるからね。

今日は父上は狩りに出かけていないらしいので、兄上と二人で父上の執務室に報告書を持って行った。

「……今度は『呪いの毒』だと……」

報告書に目を通した父上は、一瞬だけブワッと燃え上がるように魔力を放出させた。
すぐにスッと通常通りの雰囲気に戻った。

厨房に運び込まれた木箱の毒キノコと沼地の関連について兄上が話した時は
特に魔力が吹き上がったりはしなかった。落ち着いている様子だ。
騎士への尋問とかで、情報を得ていたのかもしれない。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

処理中です...