転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第171話 気づいてた

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最後の試験形式の訓練が終わった後、撤収作業が始まるとすぐに兄上と一緒に
出入り口付近に移動した。出待ちってやつ?出る前だけど。
殿下達は魔石水を飲んだり、乱れた髪を整えたりしてから、出入り口に向かって歩いてきた。殿下達の前に騎士達。後ろにも騎士達。
出入り口に近づいてきた殿下達と目が合うと、殿下達が手を振ってくれた。僕と兄上はペコリとお辞儀をして、労いの言葉をかけた。

「訓練、お疲れ様でした」
「やあ。余力があったら剣の稽古もしたかったけど、集中して魔法を使うと結構疲れるね。見てた?どうだったかい?」

ネイサン殿下は爽やかな王子様スマイルを浮かべた。表情からすると、満足いった訓練だったようだ。

どうだったと訊かれたけど、どう答えよう。チラリと兄上を見ると兄上は目で微笑んでいた。

「はい。拝見させていただきました。後半、的によく当たるようになっていましたね。お見事でした」
「そうだろう?結構当たるようになってきたよね!」

兄上の言葉にネイサン殿下が嬉しそうに笑った。

確かに、殿下の魔法は後半、的に当たる率が高くなっていた。ただ、威力は半減って感じだった。一回の魔法で込めている魔力も少なくなっていた。
威力が落ちていたから、疲れが出たのかなと思ったけど、命中率が上がったってことは殿下の場合は、魔力を込めすぎない方が魔法をコントロールがしやすいということかな。

「敢えて込める魔力を抑えて、コントロールしてたんですか」
「え?」

魔法を飛ばす方向を定めるために魔力制御をしてたのか、と思って口に出したら、ネイサン殿下に驚いた顔をされてしまった。

「込める魔力を抑えるって?どういう意味?」

殿下が身をかがめ、僕の顔をじっと見つめてくる。聞き返されてどうしようと一瞬焦ったけど、別に不敬な事を言ったりしているわけじゃない気がするので答える。

「……後半の方は火球の大きさが少し小さかったですよね。それに飛ぶ速度もちょっとゆっくりだったから、狙いを定めるために、使う魔力を抑えるようにコントロールしていたのかなって思ったんです」

使っている魔法に込められた魔力量は大体見たらわかるんだけど、火球の大きさは誰の目にもわかりやすいので火球サイズで説明をした。

「魔力を抑えるように意識をしたりはしていなかったんだよ。でも、確かに疲れていて火球も小さかったな……」

ネイサン殿下は納得した様子で呟くように言うと、パッとハロルド君の方を振り向いた。

「ハロルド、使う魔力を抑える方法ってわかるか?」

ネイサン殿下の斜め後ろを歩いてきたハロルド君は、ネイサン殿下に問われて一瞬だけ考えた様子で目をキョロリト動かしてから、手を胸の前に持ってきて掌を上に向けた。うっすらと掌に魔力を纏わせている。

「魔法を撃つ時に掌に魔力を集めるんですが、集まりすぎないように意識はしています」
「ハロルドは、魔力を抑えるのをやってたのか。狙った時はちゃんと的に当たるもんな」
「……」

ネイサン殿下の言葉にハロルド君の瞳が揺れた。掌の魔力が霧散する。

殿下はハロルド君がわざと的を外してたのを気が付いていたみたいだ。
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