転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第190話 魔剣じゃなくて

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解体系の魔法陣魔石を一通り試した後は、他の解体スキルも鍛える目的で
持っていない解体スキルの作業を意識的にやるようにした。

黎明の泉では、毒耐性の魔石をもった魔獣を狩るのが主目的だけど
黒く爛れていない魔獣を何体か解体をした。

「おや……。何だか出来たでさぁ」

「ボブ、どうしたの?」

ボブの声を聞いて、兄上が解体の手を止めて振り向いた。
ボブの方を見ると、キラキラした魔法陣の残滓のようなものが見えた。
「もしかして、スキル?」
「お、そうなの?」

兄上がボブに駆け寄って狐魔獣の遺骸を差し出した。魔石を抜いたものらしく
胸の辺りがパックリと割れて血が滴っている。

「やってみてよ」
「……やってみるでさぁ。何だか魔力を使う気がするんでさぁ」

ボブが狐魔獣の遺骸を受け取って、毛皮にナイフを突き入れた。
ふわっと魔法陣が浮かび上がり、ズルリと皮が剥がれた。

「ふうぅ……。意識してやると疲れるんでさぁ」

ボブが袖で額の汗を拭った。
皮剥のスキルとして意識すると魔力の消費が激しいらしい。
何体か試してもらったら、解体する魔獣の大きさによっても使用する魔力量に差があるそうだ。
確かに、小さい魔獣と巨大な魔獣だったら解体の労力だって違うからね。

「『皮剥ぎ』も魔法陣にして、他の魔法陣と組み合わせたら、一気に解体できるようになるかな」
「角とか牙取りは必要なんじゃないか?」
「そうだった……」

解体系スキルが幾つに分かれているのかもわからないんだよね。
毛皮がある魔獣と、鳥系の魔獣とかによっても違うのかもしれないし。
魔魚だったら鱗取りとかもスキルもあるんだろうか。

魔法陣を組み合わせた魔石を作るのは、組み合わせを試してからの方が良いかもしれない。

毒耐性の魔石も結構集まったし、解体の練習も何回か出来たので、屋敷に戻ることにした。

戻る途中で茂みから脚長跳び兎が飛びかかってきた。
解体の魔法陣魔石の使い方のことをぼーっと考えていて、槍の距離じゃなかったので短剣を手にした。飛びかかってきた脚長跳び兎を短剣で切付けた後、
続いて飛んできた跳び兎に短剣を投げつけた。
掌に魔力を集めて、次の攻撃に備えたが、もう向かってくる脚長跳びうさぎはいなかった。

「魔石出てるじゃん」
「え?」

兄上に指摘されて見てみると、地面に転がっている脚長跳び兎の側には魔石も一緒にあった。

「……『魔石取り』しちゃったってこと?」
「それは、恐ろしいでさぁ」

生きた魔獣に「魔石取り」の魔法剣を使ったら、魔石が取れるのか?

もしや即死の魔剣みたいになっちゃったのかと、びっくりしたんだけど、流石にそんなことはなかった。

帰り道に出くわした魔獣で試しまくってみたところ、元々短剣の一撃で倒せるくらいの魔獣は一撃で魔石も出てきたけど、大きい魔獣だとそうはいかなかった。
胸に短剣を突き刺した時のダメージ度なのか、斬った箇所の魔石との距離なのかは不明だけど、普通だったらかなりのダメージは負わせたけど致命傷じゃないというくらいの傷の深さでも魔石が飛び出してきた。でも、位置が急所を大きくそれていたりすると発動しなかった。

「即死の魔剣じゃなかった」
「即死の魔剣じゃなくて良かったよ」

兄上がほっと安堵の息を吐いた。

よく考えたらただの解体スキルの一種なんだから、そんな魔剣みたいなことが出来るはずも無いんだけどね。




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