転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第214話 氷の魔法実演

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全体的に魔石の大きさや含有する魔力から想定したより魔法の威力が出ていた気がする。魔力を使う効率が良い感じだ。
もしかして、雷魔石で魔法陣を転写したからだろうか。
新たな検証課題ができた気分。

使った魔石の部分にそっと手を触れて魔力をなじませるようにすると
魔石の魔力が少し補充されたのが分かる。
良かった。魔力を補充すれば繰り返し使えそうだ。

贈る時に魔石の魔力が空になっていると困るので、ポケットに入れて
魔力が補充されるように意識しながら、他のブローチも試した。

ちゃんと全部のブローチの魔法が作動した。欠陥品とかがなくて良かった。

最初に試したブローチを確認したら短時間で結構魔力が補充されているようだ。
普通の治癒玉に魔力を補充する時って結構時間がかかるんだけど、
魔石が小さいからかな。

ほっとしていると「さて」とレオノールさんが的に向き直った。

「氷の魔法が見たいのだったわよね」

レオノールさんは掌を的に向けながら優雅に微笑んだ。

氷華の魔法は、的に撃ち込まれた直後にまるで氷の花が咲いたように広がり
対象を凍り付かせる。魔法も綺麗なんだけど魔法陣も綺麗だ。
オマケで、氷の槍や氷の礫の魔法も実演してくれた。

凄い!これ魔法陣魔石作れるかなと思ったんだけど、肝心の魔石はどうなるんだろう。

「レオノールさんって、氷の属性なんですか?」
「そう、とも言えるかもしれないけど基本は水属性なのよ。家系的なものなのか氷魔法が得意なの」
「ほぉぉ!」

レオノールさんの家ではご先祖様にも何人か氷魔法が得意な人がいたのだそうだ。
氷魔法の文献が家に残されていて、練習したらで氷魔法が使えるようになったらしい。
水魔石で再現できるかもしれない。楽しみが増えたなぁ!

「魔獣が檻から逃げても、氷の礫だけで一瞬でやっつけちゃいそうですね!」

氷の礫は、一度に複数個の氷の塊を分散するように飛ばす魔法だ。
魔物の位置を察知して、氷の塊が飛ぶ方向をコントロールしたら
瞬殺じゃないかな。

魔石に刻んだ魔法陣だと、その場で方向を変えるような制御は難しそうだ。
方向を指示するような装置をつけた魔道具にしたらどうだろうかとか
色々イメージが膨らむ。

今すぐ魔法陣魔石を作り始めたいくらい僕はワクワクしていたけど、
レオノールさんの表情は沈んでいた。僕達に向き直って頭を下げた。

「……屋敷に魔獣を入れた檻を運び入れるという話を聞いた時点で
もっと強硬に止めるべきだったわ」

魔獣を入れる檻を用意したのも、ゲンティアナ家の敷地内で檻に入った魔獣を討伐する訓練をすると提案したのも同一人物なのだそうだ。
ゴーシュさんから計画の承認を得るときに「すでにゲンティアナ領主の承諾を得ている」と嘘の同意書も出したということで魔獣の檻が魔法で開いてしまうことが、偶然ではなく計画的だったと判断されたらしい。

「……目立って反感を買うよりは、と控えめにしていたの。
 だから、多少詰めが甘そうな計画でも裏でフォローすれば良いと思っていた。
 そのせいで、貴方達に迷惑をかけてしまう結果となってしまったわ」
「『目立って反感』って、騎士団の中でですか?」

騎士団の中の妬みとかかと思ったけど、レオノールさんは首を横に振った。

「私が活躍をして『後継ぎに』って話が出るのを嫌がる人がいるのよ」
「嫌がった人達がレオノールさんに何かしてくるんですか?」
「ええ……。そうね……」

レオノールさんが苦々しく微笑んだ。
長いまつ毛を伏せる。
ふと、脳裏で見た光景を思い出した。

ーーー良いんです。侯爵家は兄上が継げば良いんだから。
ーーー君がそんな風にわざと他人に侮られるように振る舞っていても、あの第二夫人は安心はしないだろう。
ーーー直接的な攻撃が母上に行かなければそれで良いんです。兄上が後を継ぐまで何とかできれば。

そうだった。レオノールさんは第一夫人のお母さんを守ろうとしているんだったっけ。

「……お母さんを守る為ですか?」

尋ねてみるとレオノールさんは顔をあげて驚いたように見開いた目を向けた。
僕のことを凝視した後、ふっと脱力したように肩を少し下げた。

「……そういえば、私の家族の分もって、解毒ができる治癒玉を譲ってくれたわよね。何か情報が入ってきているのかしら。……流石、ゲンティアナ男爵家だわ」

流石って言われた。父上が何か流石なことをやったことがあるのかな。
父上は格好いいからなぁ。流石なことをやった時もきっと格好良かったんだろうな。
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