226 / 334
第1章
第226話 焼きたてパンと出発の予感
しおりを挟む
魔道具の簡単なお試しが終わったので本館の厨房に向かった。既に兄上は指輪と腕輪を身につけている。兄上は人差し指に指輪を嵌めていた。少し大きめだけど魔力を通す時にやりやすいんだって。
厨房近くになると、廊下にパンを焼いた香ばしい香りが漂っていた。
厨房にパンを受け取りに行くついでに、角兎の肉を渡して、ハーブ漬けにするのと、猫さんにあげる分を頼む予定だ。
「おはよう。あれ、パンの量凄くない?」
ジャックが早朝からパンを焼いているのは珍しくないんだけど、厨房を除くと焼き上がったパンがやけに高く積み上げられているのが目に留まった。
「おはようございます!朝食の分の他に、多めにパンを用意して欲しいとのことでして」
ジャックが説明をすると、兄上が納得した様子で頷いた。
「あー……。外での食事用か」
「外での食事?」
「今日、出発するってことじゃないかな。お客様達が」
「え?すぐ出発しちゃうってこと?」
「朝食の準備はしてるんだから、出発するとしても朝食の後だろう。外も今のところ騒がしくなかったし」
お客様達が出発と聞いてドキッとした。思ったより急だ。でも兄上の予想では、出発をするとしても朝食後だから慌てなくて大丈夫みたいだ。確かに、すぐに出発なら門の辺りに馬車が並んでたり荷物を運んだりとか慌ただしくなるだろうけど、さっき見た限りでは特に変わった様子はなかった。
殿下達とブローチの魔道具の実演会を約束しているのは朝食の前だから大丈夫みたいだ。でも、水瓶を注文に行ってくれる余裕はないかもしれない。
「水瓶間に合わないかな。そうなったら毒耐性カップだけでも渡すようにする?」
「頼まれた物でもないし、間に合わなかったら仕方ないさ」
間に合わなかったらどうしようって僕は心配になっちゃったんだけど、兄上はあまり気にしていなさそうだった。「その時はその時」だって。
それでも、急ぎ目に薬師のおばあちゃんのところに向かう。焼きたてパンは冷めないように「収納」に閉まった。猫さん用の角兎肉はジャックが味付けなしで蒸して冷ましたものを用意してくれることになった。
厩舎に馬を取りに行ったら、もうボブが待っていた。ボブ用に用意した焼きたてパンの包みを渡したら嬉しそうに受け取ってくれた。
早朝のちょっとひんやりと引き締まったみたいな空気って結構好きだ。少しずつ赤みを増してくるまだ薄暗い空も、これから何か始まるみたいでちょっとワクワクしてくる。
薬師のおばあちゃんのお店に行ってすぐ、用件を伝えながら焼きたてパンを渡した。ほかほかした袋を手にして、薬師のおばあちゃんの口角がちょっと持ち上がった。
「出来立てのナッツのペーストとベリーのジャムがあるんだ。このパンに合いそうだよ。食べておいき」
「あ、今日はあまり時間がないんだ……」
「ルドが依頼を確認している間に摘めれば摘むと良いさ」
ナッツのペーストとベリーのジャムは薬師のおばあちゃんの手作りだと思う。食べたい!
薬師のおばあちゃんが渡したパンをよく切れるナイフでサクッと切って、大皿に乗せてテーブルの上に置いた。ナッツのペーストとベリーのジャムがそれぞれ入った小さい器も出してくれた。その場で、自分でパンに塗って適当に食べろってことのようだ。
「ナッツのやつとジャムを合わせて食べるのがオススメだよ!」
僕が作ったサンプルの毒耐性カップの底を覗き込んでから、ルドおじさんが僕達に顔を向けてウィンクした。
「面白いね!魔法陣なしだから、簡単に作れる。量産しろって言われても問題ないよ」
大皿に乗せられたパンを一切れ手に取って、ナッツのペーストとジャムを半分ずつ塗って、合わせるように半分に折ってからガブリと齧ってにっこりした。
「焼きたてパンだと格別だね!」
美味しそう!伺うように兄上を見上げたら、兄上が頷いてくれたので、僕もパンを一切れ手に取って、ルドおじさんの食べ方を真似してみた。コクのあるナッツのペーストと、ベリーの酸味が合わさって美味しい!
ルドおじさんは、毒耐性の水瓶づくりを快く引き受けてくれた。ルドおじさんは土魔法が得意だから、毒耐性魔石を水瓶に固定する作業も魔法でサクサク出来るようだ。
注文が入るかはまだ分からないって説明をしたけど、いくつか作っておいて、売れなかったら冒険者ギルドにでも売るって言って早速、空の水瓶を出してきて作り始めた。
厨房近くになると、廊下にパンを焼いた香ばしい香りが漂っていた。
厨房にパンを受け取りに行くついでに、角兎の肉を渡して、ハーブ漬けにするのと、猫さんにあげる分を頼む予定だ。
「おはよう。あれ、パンの量凄くない?」
ジャックが早朝からパンを焼いているのは珍しくないんだけど、厨房を除くと焼き上がったパンがやけに高く積み上げられているのが目に留まった。
「おはようございます!朝食の分の他に、多めにパンを用意して欲しいとのことでして」
ジャックが説明をすると、兄上が納得した様子で頷いた。
「あー……。外での食事用か」
「外での食事?」
「今日、出発するってことじゃないかな。お客様達が」
「え?すぐ出発しちゃうってこと?」
「朝食の準備はしてるんだから、出発するとしても朝食の後だろう。外も今のところ騒がしくなかったし」
お客様達が出発と聞いてドキッとした。思ったより急だ。でも兄上の予想では、出発をするとしても朝食後だから慌てなくて大丈夫みたいだ。確かに、すぐに出発なら門の辺りに馬車が並んでたり荷物を運んだりとか慌ただしくなるだろうけど、さっき見た限りでは特に変わった様子はなかった。
殿下達とブローチの魔道具の実演会を約束しているのは朝食の前だから大丈夫みたいだ。でも、水瓶を注文に行ってくれる余裕はないかもしれない。
「水瓶間に合わないかな。そうなったら毒耐性カップだけでも渡すようにする?」
「頼まれた物でもないし、間に合わなかったら仕方ないさ」
間に合わなかったらどうしようって僕は心配になっちゃったんだけど、兄上はあまり気にしていなさそうだった。「その時はその時」だって。
それでも、急ぎ目に薬師のおばあちゃんのところに向かう。焼きたてパンは冷めないように「収納」に閉まった。猫さん用の角兎肉はジャックが味付けなしで蒸して冷ましたものを用意してくれることになった。
厩舎に馬を取りに行ったら、もうボブが待っていた。ボブ用に用意した焼きたてパンの包みを渡したら嬉しそうに受け取ってくれた。
早朝のちょっとひんやりと引き締まったみたいな空気って結構好きだ。少しずつ赤みを増してくるまだ薄暗い空も、これから何か始まるみたいでちょっとワクワクしてくる。
薬師のおばあちゃんのお店に行ってすぐ、用件を伝えながら焼きたてパンを渡した。ほかほかした袋を手にして、薬師のおばあちゃんの口角がちょっと持ち上がった。
「出来立てのナッツのペーストとベリーのジャムがあるんだ。このパンに合いそうだよ。食べておいき」
「あ、今日はあまり時間がないんだ……」
「ルドが依頼を確認している間に摘めれば摘むと良いさ」
ナッツのペーストとベリーのジャムは薬師のおばあちゃんの手作りだと思う。食べたい!
薬師のおばあちゃんが渡したパンをよく切れるナイフでサクッと切って、大皿に乗せてテーブルの上に置いた。ナッツのペーストとベリーのジャムがそれぞれ入った小さい器も出してくれた。その場で、自分でパンに塗って適当に食べろってことのようだ。
「ナッツのやつとジャムを合わせて食べるのがオススメだよ!」
僕が作ったサンプルの毒耐性カップの底を覗き込んでから、ルドおじさんが僕達に顔を向けてウィンクした。
「面白いね!魔法陣なしだから、簡単に作れる。量産しろって言われても問題ないよ」
大皿に乗せられたパンを一切れ手に取って、ナッツのペーストとジャムを半分ずつ塗って、合わせるように半分に折ってからガブリと齧ってにっこりした。
「焼きたてパンだと格別だね!」
美味しそう!伺うように兄上を見上げたら、兄上が頷いてくれたので、僕もパンを一切れ手に取って、ルドおじさんの食べ方を真似してみた。コクのあるナッツのペーストと、ベリーの酸味が合わさって美味しい!
ルドおじさんは、毒耐性の水瓶づくりを快く引き受けてくれた。ルドおじさんは土魔法が得意だから、毒耐性魔石を水瓶に固定する作業も魔法でサクサク出来るようだ。
注文が入るかはまだ分からないって説明をしたけど、いくつか作っておいて、売れなかったら冒険者ギルドにでも売るって言って早速、空の水瓶を出してきて作り始めた。
329
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる