転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第226話 焼きたてパンと出発の予感

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魔道具の簡単なお試しが終わったので本館の厨房に向かった。既に兄上は指輪と腕輪を身につけている。兄上は人差し指に指輪を嵌めていた。少し大きめだけど魔力を通す時にやりやすいんだって。

厨房近くになると、廊下にパンを焼いた香ばしい香りが漂っていた。
厨房にパンを受け取りに行くついでに、角兎の肉を渡して、ハーブ漬けにするのと、猫さんにあげる分を頼む予定だ。

「おはよう。あれ、パンの量凄くない?」

ジャックが早朝からパンを焼いているのは珍しくないんだけど、厨房を除くと焼き上がったパンがやけに高く積み上げられているのが目に留まった。

「おはようございます!朝食の分の他に、多めにパンを用意して欲しいとのことでして」

ジャックが説明をすると、兄上が納得した様子で頷いた。

「あー……。外での食事用か」
「外での食事?」
「今日、出発するってことじゃないかな。お客様達が」
「え?すぐ出発しちゃうってこと?」
「朝食の準備はしてるんだから、出発するとしても朝食の後だろう。外も今のところ騒がしくなかったし」

お客様達が出発と聞いてドキッとした。思ったより急だ。でも兄上の予想では、出発をするとしても朝食後だから慌てなくて大丈夫みたいだ。確かに、すぐに出発なら門の辺りに馬車が並んでたり荷物を運んだりとか慌ただしくなるだろうけど、さっき見た限りでは特に変わった様子はなかった。

殿下達とブローチの魔道具の実演会を約束しているのは朝食の前だから大丈夫みたいだ。でも、水瓶を注文に行ってくれる余裕はないかもしれない。

「水瓶間に合わないかな。そうなったら毒耐性カップだけでも渡すようにする?」
「頼まれた物でもないし、間に合わなかったら仕方ないさ」

間に合わなかったらどうしようって僕は心配になっちゃったんだけど、兄上はあまり気にしていなさそうだった。「その時はその時」だって。

それでも、急ぎ目に薬師のおばあちゃんのところに向かう。焼きたてパンは冷めないように「収納」に閉まった。猫さん用の角兎肉はジャックが味付けなしで蒸して冷ましたものを用意してくれることになった。

厩舎に馬を取りに行ったら、もうボブが待っていた。ボブ用に用意した焼きたてパンの包みを渡したら嬉しそうに受け取ってくれた。

早朝のちょっとひんやりと引き締まったみたいな空気って結構好きだ。少しずつ赤みを増してくるまだ薄暗い空も、これから何か始まるみたいでちょっとワクワクしてくる。

薬師のおばあちゃんのお店に行ってすぐ、用件を伝えながら焼きたてパンを渡した。ほかほかした袋を手にして、薬師のおばあちゃんの口角がちょっと持ち上がった。

「出来立てのナッツのペーストとベリーのジャムがあるんだ。このパンに合いそうだよ。食べておいき」
「あ、今日はあまり時間がないんだ……」
「ルドが依頼を確認している間に摘めれば摘むと良いさ」

ナッツのペーストとベリーのジャムは薬師のおばあちゃんの手作りだと思う。食べたい!
薬師のおばあちゃんが渡したパンをよく切れるナイフでサクッと切って、大皿に乗せてテーブルの上に置いた。ナッツのペーストとベリーのジャムがそれぞれ入った小さい器も出してくれた。その場で、自分でパンに塗って適当に食べろってことのようだ。

「ナッツのやつとジャムを合わせて食べるのがオススメだよ!」

僕が作ったサンプルの毒耐性カップの底を覗き込んでから、ルドおじさんが僕達に顔を向けてウィンクした。

「面白いね!魔法陣なしだから、簡単に作れる。量産しろって言われても問題ないよ」

大皿に乗せられたパンを一切れ手に取って、ナッツのペーストとジャムを半分ずつ塗って、合わせるように半分に折ってからガブリと齧ってにっこりした。

「焼きたてパンだと格別だね!」

美味しそう!伺うように兄上を見上げたら、兄上が頷いてくれたので、僕もパンを一切れ手に取って、ルドおじさんの食べ方を真似してみた。コクのあるナッツのペーストと、ベリーの酸味が合わさって美味しい!

ルドおじさんは、毒耐性の水瓶づくりを快く引き受けてくれた。ルドおじさんは土魔法が得意だから、毒耐性魔石を水瓶に固定する作業も魔法でサクサク出来るようだ。

注文が入るかはまだ分からないって説明をしたけど、いくつか作っておいて、売れなかったら冒険者ギルドにでも売るって言って早速、空の水瓶を出してきて作り始めた。
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