転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第238話 バチバチな展開

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「ナスタチウム閣下。治癒魔石は、あくまでも装飾品に付与された一部に過ぎないものです。過度な効果は期待なさらないでください」

ズイッと出てきて僕の前に立ったのは父上。目の前に黒いマントの壁。圧!僕に向けてではないけど、父上からも圧が出ているのを感じる。

「試してみねばなんとも言えまい」
「試してから『期待した効果が出なかった』などと言われても困りますので」
「他の魔法から判断するに効果は高くなかろう。だが治癒というだけで希少であるからな」

辺境伯様と父上の間で、バチバチと圧がぶつかっている感じだ。

フッ

あ、「フッ」がここで?

「閣下。子供騙しなのは承知しておりますゆえ。フッ」

足を引きずっていた騎士さんが、辺境伯様に話しかけた。「フッ」だ。この人が「フッ」の人だ!下唇は突き出してない。

浅黒い肌をしていて、顎が二つに割れているマッチョな人だ。もしや「フッ」はあの顎から出ているんじゃ……。

「子供騙しと思われているなら使わないほうが賢明だと思いますが?」

父上から若干「怒り」の気配がする。

「使ってやってやると言っているのだよ。フッ」

「フッ」の人が発した言葉に怒ったのか母様からも「怒り」の気配がしてきたよ。僕の肩に乗せた手にギュギュッと力が入っているし。

「フランクリン!失礼ですわよ」
「お嬢様。失礼いたしました。フッ」

シェリル嬢が注意すると、「フッ」の騎士は一応謝ったのかな?でも、シェリル嬢に対して謝ったのかな。「フッ」の騎士は悪びれない様子だ。
辺境伯様も咎める様子はなさそう。

「なんだか微妙な雰囲気だね」

ネイサン殿下の言葉の直後、ゴーシュさんがズンと一歩前に踏み出して魔力の圧を振り撒いた。シンとその場が静まる。
ネイサン殿下は、首を傾げた。

「この後、訓練終了の挨拶をしようと思ってたのに、どうして揉めてるの?」

「「「「申し訳ございません」」」」

辺境伯様と父上と「フッ」の騎士とかが謝る。

ネイサン殿下は小さく頷くと、辺境伯様を見た。

「治癒の魔石の効果は僕も気になるから、ここで試すのは良いけど揉めないで欲しいな」
「は!お心を煩わせてしまい大変申し訳ございません」

辺境伯様が頭を垂れた。ネイサン殿下は更に「フッ」の騎士に声を掛けた。

「それと君。『子供騙し』って言ってたよね。それってこのブローチが子供騙しってこと?」

「フッ」の騎士は気まずげに俯いた。
辺境伯様が小さい低い声で「答えよ」と促すと口を開いた。

「……恐れながら……、装飾品としてはご立派な品ですが、付与された魔法は攻撃力は高いものではなく、役には立たないと思われますゆえ」

ギュッと僕の肩に乗せられた手に力が入る。ちょっと痛い。

「役に立たないかなぁ……」

クルッとネイサン殿下が頭を動かして、こちらに顔を向けた。

「ねえ。クリス君。このブローチの魔法、役に立たないのかな?」
「え?」

ネイサン殿下が僕に話しかけたので、ギョロリとみんなの視線が僕の方に向けられた。そろそろと顔を動かして父上の後ろから姿が見えやすいようにした。
ブローチの機能を説明していた時の視線より、ずっと鋭い。ビクッとしたけど母様がクイッと僕の肩を引き寄せた。柔らかい感触を後頭部に感じた。

「えーと……。ちょっとした機能なので……」
「ちょっとしたものなら、『ちょっと』は役に立つよね?」
「えー……」

僕のお腹に回された母様の腕に力が入った。何となく答えるなって言っている気がして、どう返事をしようかと迷っていたらタタっと兄上が駆け寄ってきて、僕の前に立った。

「機能についてはご説明した通りです。役に立つかは使い方かと思います」

兄上が答えると、ネイサン殿下がニコリとした。

「じゃあ、役に立つ使い方を見せてもらえる?……そうだな。そこの騎士、対決したら?」
「は?」

なぜか突然、「役に立つ使い方の実演」ってことで、「フッ」の騎士と兄上が対決することになってしまった。怖!
僕が答えてたら僕が対決することになってたの?怖!でも兄上だって心配だよ!断っちゃえば良いのに!
大人の騎士なんて強いに決まってるのに!どうなっちゃうの?
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