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第1章
第239話 対戦準備
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対決と言っても、決闘みたいなものじゃない。
シチュエーションとしては側に護衛もいて急に自分に敵が向かってきた時に、魔法で一瞬だけ攻撃のタイミングを逸らすというものだ。
怪我してたって魔法も使えるだろうし、大人になるまで訓練を続けてきた騎士は強いのに決まっているから、兄上が心配だ。
父上は止めに入るかと思ったのに、護衛役とか言って兄上の隣に立っちゃった。まあ、父上がいたら大丈夫なのかな。
というか父上一人で十分じゃない?
「フッ」の人も足を負傷しているみたいなのに、なんで話に乗っちゃったんだろう。
ゾロゾロと剣術エリアに移動して行った。
一緒にいたもう一人の騎士も参戦するようだ。「フッ」の騎士は足を引き摺りながら剣術エリアの中央まで来た。もう一人の騎士も少し離れて立つ。
「フッ。この足だからって舐めないでもらいたい。最初の一撃が通ったら、こちらの勝ちだ。勝ったら、そのブローチを貰おう」
「「はあ!?」」
「フッ」の人は兄上が胸につけていたブローチを指差した。
「フッ」の人の言葉を聞いて、僕と兄上が同時に声を出してしまった。びっくり。何言ってるんだろう。
「……役に立たないと言いながら何故欲しがるんですか?」
兄上が呆れたように言う。
「閣下がご所望ゆえ」
「断る!」
父上のよく通る声が響いた。
「これはあくまでも、魔道具の使用方法に実演に過ぎない。不当な要求など受け入れない」
「フッ。勝つ自信がないんだろう」
「負けることはないが、そもそも勝負ではない」
「フッ。そんなこと……」
父上と「フッ」の騎士が言い争っている間に、僕は兄上に駆け寄った。
「ねえ。兄上。ビヨンってしてないと使いにくいみたいだったよ」
「ビヨンって何だ?」
「ブローチ。手で持った方が良いかも。後、これ」
兄上に小さい皮袋を差し出した。
「重、……砂か」
「うん。父上もいるし、兄上なら、きっと大丈夫だけど、ブローチの機能を役立てたいから渡しておくね」
「うーん……」
「あとね、よく燃える液体とか投げてから火魔法を使ったらどうかと思ったけど……、火傷とかしたら危ないかな?」
「それはやめておこう……」
僕が小さい瓶を見せると兄上が眉間に皺を寄せ首を横に振った。
兄上は砂の入った皮袋を軽く上下させながら難しい顔をする。
「砂を使うのもやめておこう。このブローチ単体の機能を見せた方が良いだろうし、殿下達が実際に使うとしたら切り札にしておいた方が良いだろ」
「切り札?」
「とっておきの手段ってやつだよ。……もし……」
兄上は少し身をかがめて、僕の耳元で囁いた。
「……まだ、誰か敵がいたとしたら、手の内は見せない方が良いんじゃないかと思うんだ」
兄上の纏う気配がピリッと警戒したものに変わった。
兄上はこの中にまだ怪しい騎士とかがいるかもって思っているみたいだ。
「フッ」の騎士だって結構怪しい方だもんね。
「ヘッ」とか「ホッ」だったら良かったかな?「ヘッ」だと捻くれているみたいな感じがするからダメか。
「ホッ」だと、常に心配しまくってからホッとしている人みたいだな。「ホッ」の人居ないかな。
「『フッ』てこともあるけど、『とっておき』はまだあるよ。よく燃える液体もそうだし、砂の代わりに赤い粉を撒くとか」
「『フッ』ってなんだ?危なそうなことするなよ?赤い粉って目に入ったら悲惨じゃないか。絶対やるなよ?他のも試すな。砂だけで十分だ」
赤い粉はスパイスの一種だ。シチューとかお肉とかに使われているとピリ辛で美味しいけど、触った後に目とか擦ると刺激が強すぎて大変なんだ。赤い粉を使った料理もお客様には出さないメニューだったな。
良く燃える液体の使い方で考えているのは、相手の手前に液体の入った瓶を投げつけてから火魔法を使う方法と燃えた火を風魔法で巻き込む方法だ。風魔法で火が消えるかもしれないけど、火魔法の魔力が残っていれば燃えたまま風と一緒に飛んでいくかもしれない。
風魔法に火魔法を巻き込んだ場合、どうなるか気になるけど、絶対試すなって言われちゃった。
その代わり、じゃないけど、砂は使ってみてくれるらしい。
元々完全に身を守れるような魔道具ではないし、護衛の騎士さんが使い方を知っている方が安全だろうって考え直したそうだ。
シチュエーションとしては側に護衛もいて急に自分に敵が向かってきた時に、魔法で一瞬だけ攻撃のタイミングを逸らすというものだ。
怪我してたって魔法も使えるだろうし、大人になるまで訓練を続けてきた騎士は強いのに決まっているから、兄上が心配だ。
父上は止めに入るかと思ったのに、護衛役とか言って兄上の隣に立っちゃった。まあ、父上がいたら大丈夫なのかな。
というか父上一人で十分じゃない?
「フッ」の人も足を負傷しているみたいなのに、なんで話に乗っちゃったんだろう。
ゾロゾロと剣術エリアに移動して行った。
一緒にいたもう一人の騎士も参戦するようだ。「フッ」の騎士は足を引き摺りながら剣術エリアの中央まで来た。もう一人の騎士も少し離れて立つ。
「フッ。この足だからって舐めないでもらいたい。最初の一撃が通ったら、こちらの勝ちだ。勝ったら、そのブローチを貰おう」
「「はあ!?」」
「フッ」の人は兄上が胸につけていたブローチを指差した。
「フッ」の人の言葉を聞いて、僕と兄上が同時に声を出してしまった。びっくり。何言ってるんだろう。
「……役に立たないと言いながら何故欲しがるんですか?」
兄上が呆れたように言う。
「閣下がご所望ゆえ」
「断る!」
父上のよく通る声が響いた。
「これはあくまでも、魔道具の使用方法に実演に過ぎない。不当な要求など受け入れない」
「フッ。勝つ自信がないんだろう」
「負けることはないが、そもそも勝負ではない」
「フッ。そんなこと……」
父上と「フッ」の騎士が言い争っている間に、僕は兄上に駆け寄った。
「ねえ。兄上。ビヨンってしてないと使いにくいみたいだったよ」
「ビヨンって何だ?」
「ブローチ。手で持った方が良いかも。後、これ」
兄上に小さい皮袋を差し出した。
「重、……砂か」
「うん。父上もいるし、兄上なら、きっと大丈夫だけど、ブローチの機能を役立てたいから渡しておくね」
「うーん……」
「あとね、よく燃える液体とか投げてから火魔法を使ったらどうかと思ったけど……、火傷とかしたら危ないかな?」
「それはやめておこう……」
僕が小さい瓶を見せると兄上が眉間に皺を寄せ首を横に振った。
兄上は砂の入った皮袋を軽く上下させながら難しい顔をする。
「砂を使うのもやめておこう。このブローチ単体の機能を見せた方が良いだろうし、殿下達が実際に使うとしたら切り札にしておいた方が良いだろ」
「切り札?」
「とっておきの手段ってやつだよ。……もし……」
兄上は少し身をかがめて、僕の耳元で囁いた。
「……まだ、誰か敵がいたとしたら、手の内は見せない方が良いんじゃないかと思うんだ」
兄上の纏う気配がピリッと警戒したものに変わった。
兄上はこの中にまだ怪しい騎士とかがいるかもって思っているみたいだ。
「フッ」の騎士だって結構怪しい方だもんね。
「ヘッ」とか「ホッ」だったら良かったかな?「ヘッ」だと捻くれているみたいな感じがするからダメか。
「ホッ」だと、常に心配しまくってからホッとしている人みたいだな。「ホッ」の人居ないかな。
「『フッ』てこともあるけど、『とっておき』はまだあるよ。よく燃える液体もそうだし、砂の代わりに赤い粉を撒くとか」
「『フッ』ってなんだ?危なそうなことするなよ?赤い粉って目に入ったら悲惨じゃないか。絶対やるなよ?他のも試すな。砂だけで十分だ」
赤い粉はスパイスの一種だ。シチューとかお肉とかに使われているとピリ辛で美味しいけど、触った後に目とか擦ると刺激が強すぎて大変なんだ。赤い粉を使った料理もお客様には出さないメニューだったな。
良く燃える液体の使い方で考えているのは、相手の手前に液体の入った瓶を投げつけてから火魔法を使う方法と燃えた火を風魔法で巻き込む方法だ。風魔法で火が消えるかもしれないけど、火魔法の魔力が残っていれば燃えたまま風と一緒に飛んでいくかもしれない。
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