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第1章
第240話 一瞬の対戦
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「それではそろそろ始めるぞ」
ゴーシュさんが審判みたいに、「フッ」の人達と、兄上と父上チームの中間の位置に立った。
僕は母様が居るところに戻った。剣術エリアを区切っている線の外側だ。
剣術エリアは、実戦するゾーンが中心にあり、その周りに木剣だとか備品を置いてあり、休憩するベンチとかもある準備ゾーンがある。騎士の人何人かと辺境伯様は準備ゾーンで見物しているけど、殿下達を含め大半はエリアの外での見物になった。うっかり手放してしまった木剣とかが飛んでいったら危ないから、距離を開けているんだ。兄上と父上が戦うところ、もっと近くで見たいけどなぁ。
実戦ゾーンの周りに風か何かで壁みたいにできないかな。実戦ゾーンを取り囲むように風がグルングルン回ってたら、木剣とかが飛んできても風に巻き込むことができるんじゃないかな。その場合、巻き込んだ木剣も一緒にぐるぐる回っちゃうから、それはそれで見物する時に気になっちゃうかな。
それに、風がグルングルン回っていたら、後から訓練に入る人の出入りも難しくなっちゃうか。
風グルングルン案は却下かなぁ。
剣術ゾーンを隔てる線を見ながら考えていたら、ネイサン殿下達の声が聞こえてきた。
「これ決闘?」
「模擬戦だよね?」
「単に魔道具の使い方の実演じゃなかったのか」
「お怪我されないか心配ですわ」
チラリと様子を見ると、割と近くにリネリア嬢の姿が見えた。心配そうな顔をしている。その隣にはオーキッド伯爵がいた。ネイサン殿下とハロルド君とシェリル嬢はリネリア嬢と通路を隔てて隣りのブロックに並んで立っている。興味深げな様子だ。
辺境伯様も同じブロックにいるけど腕組みしていて偉そうなポーズ。
フッ
また「フッ」が来た!見ると「フッ」の人がニヤニヤしている。ニヤついている口が少し開いた。
「風よ……」
詠唱?
微かに動いた唇の動きを見ると、詠唱を始めたように見えた。
何をする気だろうと思った時、ゴーシュさんが開始の合図に腕を上げた。
「始め!」
もう一人の騎士、金髪マッチョが木剣を手に父上に向かっていく。
ほぼ同時に「フッ」の騎士も前に飛び出した。
ダダッ!
怪我をしているらしい左足を庇いながら飛ぶような動きで素早い。
「……風を打ち付けたまえ!」
ぶつぶつとつぶやいていた詠唱が完成したらしく風の魔法陣が浮かび上がった。風の玉みたいなやつかな。
兄上は振りかぶっていた。
振り下ろした手が開かれると皮袋と一緒に砂が舞う。そして、もう一方の手で触れていたブローチから「螺旋の風」が吹き出し、砂を巻き込んでいく。
「うわ!」
「フッ」の騎士が顔を顰め、目をギュッと瞑った。次の瞬間、「フッ」の騎士の足元に土の壁ができた。
「ガッ」
土の壁に足を取られ、妙な声を上げて「フッ」の騎士がよろけた。痛めているらしい足を地につけ、ガクンとバランスを崩す。
そこに金髪の騎士が吹っ飛んできて、二人で地面に転がった。父上が金髪の騎士を放り投げたようだけど、どうやったか全然見てなかった。もう一回やってみて欲しい。
「……っ終了!」
カンカンカンとゴーシュさんが鐘を鳴らした。
「兄上!父上!」
僕は父上と兄上の元に飛び出した。兄上に抱きつく。
「兄上、お見事でした!」
「おう」
「父上も!ナイス連携です!」
「うむ」
父上は僕の言葉に頷くと、倒れ込んでいる「フッ」の騎士達の方に向かって歩いて行った。
「こっそり魔法を仕込んでも役に立たなかったようだな」
「……っ」
「フッ」の騎士が悔しそうな顔をした。ちなみに、「フッ」の騎士の風玉はブローチの風魔法がぶつかって方向を変えてどこかに飛んでいったんだ。
ゴーシュさんが審判みたいに、「フッ」の人達と、兄上と父上チームの中間の位置に立った。
僕は母様が居るところに戻った。剣術エリアを区切っている線の外側だ。
剣術エリアは、実戦するゾーンが中心にあり、その周りに木剣だとか備品を置いてあり、休憩するベンチとかもある準備ゾーンがある。騎士の人何人かと辺境伯様は準備ゾーンで見物しているけど、殿下達を含め大半はエリアの外での見物になった。うっかり手放してしまった木剣とかが飛んでいったら危ないから、距離を開けているんだ。兄上と父上が戦うところ、もっと近くで見たいけどなぁ。
実戦ゾーンの周りに風か何かで壁みたいにできないかな。実戦ゾーンを取り囲むように風がグルングルン回ってたら、木剣とかが飛んできても風に巻き込むことができるんじゃないかな。その場合、巻き込んだ木剣も一緒にぐるぐる回っちゃうから、それはそれで見物する時に気になっちゃうかな。
それに、風がグルングルン回っていたら、後から訓練に入る人の出入りも難しくなっちゃうか。
風グルングルン案は却下かなぁ。
剣術ゾーンを隔てる線を見ながら考えていたら、ネイサン殿下達の声が聞こえてきた。
「これ決闘?」
「模擬戦だよね?」
「単に魔道具の使い方の実演じゃなかったのか」
「お怪我されないか心配ですわ」
チラリと様子を見ると、割と近くにリネリア嬢の姿が見えた。心配そうな顔をしている。その隣にはオーキッド伯爵がいた。ネイサン殿下とハロルド君とシェリル嬢はリネリア嬢と通路を隔てて隣りのブロックに並んで立っている。興味深げな様子だ。
辺境伯様も同じブロックにいるけど腕組みしていて偉そうなポーズ。
フッ
また「フッ」が来た!見ると「フッ」の人がニヤニヤしている。ニヤついている口が少し開いた。
「風よ……」
詠唱?
微かに動いた唇の動きを見ると、詠唱を始めたように見えた。
何をする気だろうと思った時、ゴーシュさんが開始の合図に腕を上げた。
「始め!」
もう一人の騎士、金髪マッチョが木剣を手に父上に向かっていく。
ほぼ同時に「フッ」の騎士も前に飛び出した。
ダダッ!
怪我をしているらしい左足を庇いながら飛ぶような動きで素早い。
「……風を打ち付けたまえ!」
ぶつぶつとつぶやいていた詠唱が完成したらしく風の魔法陣が浮かび上がった。風の玉みたいなやつかな。
兄上は振りかぶっていた。
振り下ろした手が開かれると皮袋と一緒に砂が舞う。そして、もう一方の手で触れていたブローチから「螺旋の風」が吹き出し、砂を巻き込んでいく。
「うわ!」
「フッ」の騎士が顔を顰め、目をギュッと瞑った。次の瞬間、「フッ」の騎士の足元に土の壁ができた。
「ガッ」
土の壁に足を取られ、妙な声を上げて「フッ」の騎士がよろけた。痛めているらしい足を地につけ、ガクンとバランスを崩す。
そこに金髪の騎士が吹っ飛んできて、二人で地面に転がった。父上が金髪の騎士を放り投げたようだけど、どうやったか全然見てなかった。もう一回やってみて欲しい。
「……っ終了!」
カンカンカンとゴーシュさんが鐘を鳴らした。
「兄上!父上!」
僕は父上と兄上の元に飛び出した。兄上に抱きつく。
「兄上、お見事でした!」
「おう」
「父上も!ナイス連携です!」
「うむ」
父上は僕の言葉に頷くと、倒れ込んでいる「フッ」の騎士達の方に向かって歩いて行った。
「こっそり魔法を仕込んでも役に立たなかったようだな」
「……っ」
「フッ」の騎士が悔しそうな顔をした。ちなみに、「フッ」の騎士の風玉はブローチの風魔法がぶつかって方向を変えてどこかに飛んでいったんだ。
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