転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
247 / 334
第2章

第247話 現在地は秘密

しおりを挟む
「えー?解体、出来るようにならないとダメ?」

メイリがコテン、と首を傾げた。仕草が可愛い!
兄上が渋い顔をして頷いた。

「スキル取得までは行かなくても良いと思うけど、最低限、解体の仕方がわかるくらいまでは出来ておいたほうが良いよ。ここは、都会じゃないんだから。魔獣がウヨウヨいるんだよ」

兄上の言葉にメイリはまだ納得が行っていなかったのか、母様の顔を伺うように見つめた。

母様がニコリと微笑んだ。

「そうね。一通り最低限のことはできた方が良いわ」
「でも、『お客様達』は解体まではやらなかったのでしょう?王都の学園の入学試験だって狩りの経験は訊かれるって言うけれど」
「入学試験ではね。入学後は分からないわよ」

「そうなの!?」

メイリがビックリした様子で目を見開いた。

「王都の学園って、女子生徒に解体をさせるの?女子生徒じゃなくても、貴族の子息子女でしょう?本当に?」

母様は落ち着いた様子でグラスを傾けた。

「魔獣狩りの授業もあると聞くし、必ず解体をするとは言えないけど、無いとも言えないわね。魔獣狩りの経験の為に、わざわざ王族や高位貴族がここまで来たのよ。学園でも魔獣狩りを重要視していると思うわ。いざとなった時に、魔道具の魔石が魔力切れだったりしたら困るでしょう?」
「そうだけど……」

メイリは口を尖らせて不満気にボソボソと呟いた。

メイリは解体は嫌そうだな。つい代わりにやってあげたくなっちゃうけど、学園に入学した時に困るんだったら代わりにやったらまずいよね。
とりあえず小さい魔獣とかを、解体しない状態で持って帰ってあげようかな。

メイリに持ち帰る魔獣の候補として背びれイタチとか二角モグラとかを考えていたら、ブブブと兄上の腕輪が振動した。

「もしもし!父上!お疲れ様です!」

兄上がバッと立ち上がって、背筋を伸ばして「お話」の魔道具に話しかけ、壁に向かってペコっとと頭を下げた。

「はい……はい!わかりました!お気をつけて!」
会話を終えた兄上は、ささっと「収納」から出した板にメモを書いた。

「父上は今どこだった?」
「殿下達に同行している間は、居場所は機密だから、今は魔道具が繋がったって確認だけ。繋がらなくなった場所と直前の場所を後で父上に聞けば良いだろ?」
「そっかぁ」

殿下は命を狙われたりしているから、居場所を知っていたりするのは良くないってことのようだ。
僕としては魔道具がどのくらい離れた距離で使えるかの確認ができれば良いんだ。
今の所、少なくとも町からかなり離れた位置でも会話ができるってことがわかって嬉しい。

朝食後、鍛錬をしたり魔道具の研究をしたりして屋敷で過ごした。
父上と魔道具の繋がりの実験中だったから、結果が気になるし父上と連絡をとっている兄上が屋敷から離れると距離が分かりにくくなってしまうからだ。

短剣につけていた魔石の魔法陣の書き換えを行う。「魔石取り」の魔法陣を刻んでいたけど「皮剥ぎ」と「部位切り出し」の魔法陣も刻んで一度に解体が出来るようにするんだ。
ただ、これだけだとお魚系魔獣の解体はまだできそうも無いから、後で魔魚を沢山釣ってきたいんだよね。
短剣につけていた魔石は結構大きかったから、複数の魔法陣を余裕で刻むことができた。
後で狩りに行った時に試すのが楽しみだ。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

処理中です...