転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第258話 黒ローブ

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ギャン!

狼系魔獣が悲鳴のような声を上げた。血飛沫が飛ぶ。
魔獣の勢いがなくなった様子を見て、短剣の柄を掴み、喉元目掛けて突き立てた。

パーン!
何かが弾けた。
肉だ。

狼系魔獣の喉元に短剣を突き立てた次の瞬間、弾けるようにして魔獣がバラバラになった。
ボトボトと切り分けられたような部位が地面に落ちる。真っ黒な大きな魔石がゴロリと落ちた。

「うわぁ」

兄上がちょっと嫌そうな声を上げた。

まだ、後方では魔鷹が羽根をばたつかせていた。ギラついた目でコチラを睨み、向かってこようとしている。

風刃を連続で放ちつつ、近づいた。胸の辺りに短剣を突き立てようとしたら身を捩って逃げようとする。

「解体は仕留めてからで良いだろ!」

ザン!と兄上が剣を振るって魔鷹の首を切り落とした。
スパンっと魔鷹の頭が飛び、草むらにバウンドしながら転がる。

近くで見るとかなり大きい魔鷹だった。魔鷹にも色々種類があるのかな。
ピクリとも動かなくなった魔鷹の胸元に「解体」の短剣を突き立てた。
黒い魔石と共にバラバラの部位が地面に落ちる。肉に土がつくのはちょっとと思って、「収納」に回収した。

魔鷹の肉って食べられるのかな。

そんな考えが頭をよぎった時、誰かが動く気配を感じた。
ハッとして振り向くと、黒いローブの人物が川の中央付近にある岩に飛び移る姿が見えた。

ブン!とボブの右腕が唸りを上げながら振り下ろされた。投げられたナイフが黒ローブの人物の足に刺さる。

黒ローブはバランスを崩したけど、そのまま川を渡ろうとしている。
ボブが黒ローブの足を狙ったのを見て、僕も弓を構えて足を狙った。

バシャーン!と大きな音を立てて黒ローブが川に落ちた。
川の流れに飲み込まれて流されていく。

「逃すな!」

兄上が駆け出した。走りながら「収納」からロープ付きのナイフと取り出して、川の中に投げ込んだ。

泉の向こう側の魔獣を狩る時に使うロープだ。簡単には切れない。ナイフも特殊な返がついていて、抜けにくくなっている。
黒ローブは水の中でもがいていたけど、こちらの岸に引き寄せられた。

すかさずボブが、手際よく縛っていく。

「あの魔獣はお前が仕掛けたんだろう!何の真似だ!」
「……知るかっ……。うう……」

顔を歪めながら吐き捨てるように言う人物。ローブのフードが外れると、眉に傷がある顔が顕になった。
脳裏で見た光景の通り、眉に傷がある男が苦しげに唸り声を漏らしている。

《毒状態》

《ハイイロローダケエキス》
《毒》

毒鑑定が反応した。毒!
ハッとしてよく見ると腰にくくりつけている皮袋から液体が漏れ出ている。
その液体に対して毒鑑定が反応していることようだ。


《ハイイロローダケエキス》
《毒》
「これ毒……」

皮袋に手を伸ばそうとすると兄上に止められた。

「毒を無闇に触るなよ」

漏れ出た毒に直接触らないように、木の枝で皮袋の口をこじ開けてみると、割れた状態の小瓶が見えた。
毒の入った瓶が割れて、毒の液が漏れ出ているようだ。

「うう……」

黒ローブの男が痙攣するようにピクピクと身を震わせた。

「傷口から毒が入ったのか」

黒ローブの男はずぶ濡れなのでわかりにくいが
ナイフで刺された傷口に、漏れ出た毒液がかかったらしい。
だから毒状態になっているのか。
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