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ミシェルの独白④
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ミシェルは結婚して以降、王子妃としての役割をこなしながら、実家の諜報部隊の力を借りて、国王陛下夫妻関連の情報収集に励んでいた。
いずれ復讐するにも情報は持っていて損ではない。
復讐には使えない情報でも、もし何か脅す必要が出た時などに使える場合もある。
ミシェルが実家に諜報部隊を借りたいと願ったら、彼女の父と兄はすぐに快諾し、精鋭諜報員を貸し出した。
探っていると国王の方で思いがけない情報を手に入れた。
国王には存在を隠している婚外子がいるという情報だ。
余程慎重に隠していたらしく、どうも国王の妻の王妃も知らないようである。
その婚外子の名前を見て、ミシェルはとても驚いた。
セルジュ・ボナール伯爵令息。
その人は、ミシェルが学園の生徒だった頃、生徒会室で机を並べて一緒に仕事をした先輩だったからだ。
情報によると、セルジュは今現在、王宮の文官として仕官している。
彼は実母が彼が生まれて一年も経たない内に亡くなったので、実母の兄が当主であるボナール伯爵家に養子として引き取られていることもあり、ボナール伯爵家の次期当主になれる立場でもないから、仕官して生計を立てていること自体に驚きはない。
灯台下暗しとはまさにこのことを言うのだろうとはミシェルは思った。
財務関係の部署に所属していることまでわかったので、ミシェルは久々に彼に会うことにした。
ミシェルが様々な部署に顔を出すこと自体は珍しくないし、セルジュの所属する部署にも訪問したことはあるのだが、その部署のトップと少し話をするだけですぐ退室していたので、これまで顔を合わせてはいなかった。
そうと決まれば、ミシェルは早速セルジュの所属する部署の執務室へ足を運ぶ。
扉をノックして対応した文官にセルジュの名を告げ、彼を呼び出して欲しいと告げる。
少しして、セルジュがやって来た。
「セルジュ先輩……! お久しぶりです!」
セルジュはミシェルの知る姿のままだった。
彼と言えば、学園時代と相も変わらずしっかりと目元が隠れるほど前髪を伸ばし、さらに黒縁眼鏡をかけている。
だが、前髪をしっかり上げて眼鏡を外したその素顔は非常に整っていることをミシェルは知っている。
「ミシェル嬢……? ああ、ついうっかり昔の癖でそう呼んでしまったけれど、この呼び方は適切ではないね。今は王子妃殿下と呼ぶのが正しい。しがない一文官である私を王子妃殿下が呼び出すなんて一体どうしたんだい?」
「私、セルジュ先輩にお話がありますの。話の内容が他の者に漏れると困るので、私と先輩の二人きりで。ただ、私の立場的に王宮の中で二人きりで会うのは難しいので、来週の土曜の3時頃、城下町のノワールという喫茶店の個室を予約しておりますので、来て頂けませんか?」
「重要な話のようだし、わかったよ」
「では、お待ちしていますわね。今日は久々にセルジュ先輩に会えて嬉しかったですわ。もし、この呼び出しについて何故呼び出しされたのか聞かれたら適当に誤魔化しておいて下さい」
それから数日経ち、約束を交わした土曜。
約束通り、ミシェルとセルジュはノワールの個室で顔を突き合わせていた。
とりあえず紅茶とお茶菓子を注文し、それを楽しみつつ話を進める。
学生時代の思い出話や近況話から始め、ある程度場が温まったところで、ミシェルは本題を切り出す。
「……ねぇ、セルジュ先輩。先輩は実は国王陛下の婚外子……ですわよね?」
いずれ復讐するにも情報は持っていて損ではない。
復讐には使えない情報でも、もし何か脅す必要が出た時などに使える場合もある。
ミシェルが実家に諜報部隊を借りたいと願ったら、彼女の父と兄はすぐに快諾し、精鋭諜報員を貸し出した。
探っていると国王の方で思いがけない情報を手に入れた。
国王には存在を隠している婚外子がいるという情報だ。
余程慎重に隠していたらしく、どうも国王の妻の王妃も知らないようである。
その婚外子の名前を見て、ミシェルはとても驚いた。
セルジュ・ボナール伯爵令息。
その人は、ミシェルが学園の生徒だった頃、生徒会室で机を並べて一緒に仕事をした先輩だったからだ。
情報によると、セルジュは今現在、王宮の文官として仕官している。
彼は実母が彼が生まれて一年も経たない内に亡くなったので、実母の兄が当主であるボナール伯爵家に養子として引き取られていることもあり、ボナール伯爵家の次期当主になれる立場でもないから、仕官して生計を立てていること自体に驚きはない。
灯台下暗しとはまさにこのことを言うのだろうとはミシェルは思った。
財務関係の部署に所属していることまでわかったので、ミシェルは久々に彼に会うことにした。
ミシェルが様々な部署に顔を出すこと自体は珍しくないし、セルジュの所属する部署にも訪問したことはあるのだが、その部署のトップと少し話をするだけですぐ退室していたので、これまで顔を合わせてはいなかった。
そうと決まれば、ミシェルは早速セルジュの所属する部署の執務室へ足を運ぶ。
扉をノックして対応した文官にセルジュの名を告げ、彼を呼び出して欲しいと告げる。
少しして、セルジュがやって来た。
「セルジュ先輩……! お久しぶりです!」
セルジュはミシェルの知る姿のままだった。
彼と言えば、学園時代と相も変わらずしっかりと目元が隠れるほど前髪を伸ばし、さらに黒縁眼鏡をかけている。
だが、前髪をしっかり上げて眼鏡を外したその素顔は非常に整っていることをミシェルは知っている。
「ミシェル嬢……? ああ、ついうっかり昔の癖でそう呼んでしまったけれど、この呼び方は適切ではないね。今は王子妃殿下と呼ぶのが正しい。しがない一文官である私を王子妃殿下が呼び出すなんて一体どうしたんだい?」
「私、セルジュ先輩にお話がありますの。話の内容が他の者に漏れると困るので、私と先輩の二人きりで。ただ、私の立場的に王宮の中で二人きりで会うのは難しいので、来週の土曜の3時頃、城下町のノワールという喫茶店の個室を予約しておりますので、来て頂けませんか?」
「重要な話のようだし、わかったよ」
「では、お待ちしていますわね。今日は久々にセルジュ先輩に会えて嬉しかったですわ。もし、この呼び出しについて何故呼び出しされたのか聞かれたら適当に誤魔化しておいて下さい」
それから数日経ち、約束を交わした土曜。
約束通り、ミシェルとセルジュはノワールの個室で顔を突き合わせていた。
とりあえず紅茶とお茶菓子を注文し、それを楽しみつつ話を進める。
学生時代の思い出話や近況話から始め、ある程度場が温まったところで、ミシェルは本題を切り出す。
「……ねぇ、セルジュ先輩。先輩は実は国王陛下の婚外子……ですわよね?」
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