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第10話
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イアンとルシア、クロードのやり取りを見ていたファニーが騒ぎ立てる。
「きゃあ、素敵な人!! イアン様なんかよりずっと素敵! ねえねえ、私はちょうどフリーになったし、あなたもルシアと別れて私のものにならない? もうすぐ平民になっちゃう可哀そうな私が良い男をもらっても罰は当たらないはずよ! あなただってこんなに可愛い私を奥さんに出来るんだから嬉しいわよね!」
ファニーはクロードの腕を取り、自分の胸元へぎゅっと押し付けようとしたが、クロードはすげなく振り払う。
「お断りする。ルシアから婚約者を奪っておいて、フリーになったかと思えば、ルシアの婚約者候補と紹介された僕をまたルシアから奪い取ろうとする。そんな性悪な子なんてお断りだ。第一、僕にも好みがある。君みたいな頭が悪くて下品な子なんてタイプじゃない。君はお呼びじゃないんだ」
「またまた照れちゃって……」
「照れてなんかいない。本当にお断りだ」
「……とか言っちゃって。私の気を惹きたいだけよね?」
「しつこい。陛下、この子に職を斡旋すると仰っていましたが、この様子では斡旋した陛下の顔に泥を塗りかねない。職を斡旋するのではなく、まず修道院送りにして性根を叩き直すべきかと思います。この子を野放しにして、しつこくまとわりつかれてはたまらない」
陛下はため息をつきながら口を開く。
「……そのようじゃの。近衛よ、ファニー嬢をムーランス修道院へ送れ。修道院へは後で余から手紙を出しておく」
ムーランス修道院とは国中で一番戒律が厳しい修道院である。
問題を起こした貴族令嬢の多くはムーランス修道院に送られており、一度入ったらもう二度と外に出られないとも言われている。
「いやー!!! 修道院なんか行きたくない!!!」
嫌がるファニーの腕を近衛兵が掴み、ズルズルと引っ張っていく。
様々な予定外の事態もあったが、これでカルマ男爵夫妻とファニーは会場から退場した。
「イアン様。あなたもここにはもう用はないでしょう。あなたもお帰り下さい」
「わかった……」
イアンはとぼとぼと出入り口に向けて歩を進める。
乱入してきた時は威勢よかったが、今や見る影もない。
それも彼の今後のことを考えたら自然とそうなるであろう。
でもそれは彼自身が選び、行動した結果のこと。
勝手に乱入してきて、最終的に自滅したのは彼自身の言動によるものであって、ルシアがそうなるよう陥れた訳ではない。
「皆様、お騒がせして大変申し訳ございませんでした。紹介するところから仕切り直させて頂きます。ルシア、皆様にご挨拶を」
ルシアは優雅にカーテシーをし、挨拶をする。
「次期シャンタル公爵家当主としてご紹介にあずかりましたルシア・ローレルです。正式に公爵家当主となるのは私が結婚してからになりますし、本日お越し頂いた皆様に比べるとまだまだ若輩者ですが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します」
ルシアが挨拶を終えるとあちこちから拍手が上がった。
「それでは、お食事の用意も出来ましたので、皆様、各々お楽しみ頂けたらと思います。本日はお越し頂き、ありがとうございました」
こうしてシャンタル公爵家での次期公爵家当主お披露目パーティーは幕を閉じた。
「きゃあ、素敵な人!! イアン様なんかよりずっと素敵! ねえねえ、私はちょうどフリーになったし、あなたもルシアと別れて私のものにならない? もうすぐ平民になっちゃう可哀そうな私が良い男をもらっても罰は当たらないはずよ! あなただってこんなに可愛い私を奥さんに出来るんだから嬉しいわよね!」
ファニーはクロードの腕を取り、自分の胸元へぎゅっと押し付けようとしたが、クロードはすげなく振り払う。
「お断りする。ルシアから婚約者を奪っておいて、フリーになったかと思えば、ルシアの婚約者候補と紹介された僕をまたルシアから奪い取ろうとする。そんな性悪な子なんてお断りだ。第一、僕にも好みがある。君みたいな頭が悪くて下品な子なんてタイプじゃない。君はお呼びじゃないんだ」
「またまた照れちゃって……」
「照れてなんかいない。本当にお断りだ」
「……とか言っちゃって。私の気を惹きたいだけよね?」
「しつこい。陛下、この子に職を斡旋すると仰っていましたが、この様子では斡旋した陛下の顔に泥を塗りかねない。職を斡旋するのではなく、まず修道院送りにして性根を叩き直すべきかと思います。この子を野放しにして、しつこくまとわりつかれてはたまらない」
陛下はため息をつきながら口を開く。
「……そのようじゃの。近衛よ、ファニー嬢をムーランス修道院へ送れ。修道院へは後で余から手紙を出しておく」
ムーランス修道院とは国中で一番戒律が厳しい修道院である。
問題を起こした貴族令嬢の多くはムーランス修道院に送られており、一度入ったらもう二度と外に出られないとも言われている。
「いやー!!! 修道院なんか行きたくない!!!」
嫌がるファニーの腕を近衛兵が掴み、ズルズルと引っ張っていく。
様々な予定外の事態もあったが、これでカルマ男爵夫妻とファニーは会場から退場した。
「イアン様。あなたもここにはもう用はないでしょう。あなたもお帰り下さい」
「わかった……」
イアンはとぼとぼと出入り口に向けて歩を進める。
乱入してきた時は威勢よかったが、今や見る影もない。
それも彼の今後のことを考えたら自然とそうなるであろう。
でもそれは彼自身が選び、行動した結果のこと。
勝手に乱入してきて、最終的に自滅したのは彼自身の言動によるものであって、ルシアがそうなるよう陥れた訳ではない。
「皆様、お騒がせして大変申し訳ございませんでした。紹介するところから仕切り直させて頂きます。ルシア、皆様にご挨拶を」
ルシアは優雅にカーテシーをし、挨拶をする。
「次期シャンタル公爵家当主としてご紹介にあずかりましたルシア・ローレルです。正式に公爵家当主となるのは私が結婚してからになりますし、本日お越し頂いた皆様に比べるとまだまだ若輩者ですが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します」
ルシアが挨拶を終えるとあちこちから拍手が上がった。
「それでは、お食事の用意も出来ましたので、皆様、各々お楽しみ頂けたらと思います。本日はお越し頂き、ありがとうございました」
こうしてシャンタル公爵家での次期公爵家当主お披露目パーティーは幕を閉じた。
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