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1章
めくるめく人生に終止符を
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ああ、これはもうダメかもしれない。
腹部に刺さった両刃のナイフは内臓にまで達していたのだろう。恐らく胆汁が漏れ出しているせいもあるのか。刺された箇所が焼けるように熱い。消化酵素恐るべし。
とにかく出血が酷い。
なぜこんなことにしまったんだろう。
海水浴に来ていた僕の名前は澪(みお)21歳。男につける名前じゃねぇだろって小中高で散々いじられるとなると随分ドライな対応になるものだ。
大学生にもなり3度目の夏休み、当たり前のようにバイトのない日は泳いでいた。それがどうだ。今朝早くにひと泳ぎしていただけなのに、今日はどうしてか偶々若い女性客に、偶々居合わせた酒臭い不良達が目に入ってしまったのだ。普段は6時過ぎ、こんな早い時間にビキニ姿の女性がいるなんてことはない。
きっと酒に酔った連中には格好のカモのように映ったことだろう。
見て見ぬ振りすればいい。見過ごす選択も頭の中で過ぎる。
しかし、朝早いため周りを見渡しても他に彼女を救ってくれるひとは居ない。
ここで見捨てては薄情というもの。何かあれば罪悪感に駆られるのは目に見えている。
おい!嫌がってんだろ!絡んでんじゃねぇよ。
はぁ?
近づきながら、不良達に声をかける。
自分の後ろに彼女を誘導し、身を以て牽制する。
話し合いでどうにか解決しようとするも悪酔いしているようだ。2人組の不良らは聞く耳を持たない。
それどころか男の1人が急に殴りかかってきたのだ。自己防衛だと言い聞かせ、拳を受け止め、捻りあげる。痛みで呻く不良aを突き飛ばすとよろけ、尻餅をつく形で倒れこむ。もう1人はそんな連れの姿をみて盛大にお腹を抱えて、笑っている。
僕はくるりと後ろを向き、女性を連中から遠ざける意味も兼ねて、一時的にでも帰ることを勧める。
ついてなかったね。また今度来た時は楽しんで、今日は海水浴は諦めて帰りな。
取り敢えず脱衣所まで付いてくから。
耳打ちで彼女に伝え、促す。
自分で言うのも何だが、スマートな立ち振る舞いだったと思う。
脱衣所に向かう途中、刃物を持った不良に刺されさえしなければ。
激昂した彼はふらふらと酔った勢いそのまま何かしら叫びながら此方に向かって来た。今にも転けそうな連れの姿をみて笑い転げている友人の声が煽られているかのようで、余計に苛つかせているのだろう。
酒に呑まれた屑にすら、少しばかり情けをかけた彼は受け止めてやることにした。それが過ちだった。突っ込んできた彼は体で受け止め、その程度ではビクともしないぞ。と言うつもりだったのだが、腹部に鋭い痛みが走ったのだ。
ヒヒっ。
そんな笑い声をあげた不良を突き飛ばした澪は異物が自分の体から抜けるのが見えた。
トサっと砂の上に落ちたのはナイフだった。刃渡り15センチほどだろうか。
情けをかけた自分が愚かしくなったのと同時に、人を刺して笑っている屑がどうしても許せなくなった。
彼はナイフを手に取り、お返しとばかりに右腕に突き刺した。
酔いが醒めたのだろう、うぎゃああああと叫び、蹌踉めきながら連れの元へと向かい、助けを乞う姿は滑稽だった。
流石に不味いと思ったのだろう、笑うのをやめ、睨みつけながら手を貸す連れに、
まだやるか!!
と、声を張り上げる。
腹部から血を流している相手とは言え、ナイフを持った威勢の良い声に臆したのか、立ち去る不良達。
あまりの恐怖に女性は腰を抜かして、絶句してしまっている。
すみません。立てますか?ほんとに申し訳ないんですけど、救急車とか呼んで貰えると助かります。
腹部からの出血の量が早い。虚勢を張ったせいもあるのだろう。
携帯が脱衣所のロッカールームにあるから、す、すぐ取ってきます!!
コクコクと彼女の返事に頷くと、走って携帯を取りに行く後ろ姿が視界に入る。
ここで最初の自問に自答するならば、自分の甘さが招いた結果だろう。
行動には結果が伴ってくるとはよく言ったものだ。その責任は自分にある。
こんなカタチで自分の人生に終止符を打つことになろうとは。
意識はそこで途絶えた。
腹部に刺さった両刃のナイフは内臓にまで達していたのだろう。恐らく胆汁が漏れ出しているせいもあるのか。刺された箇所が焼けるように熱い。消化酵素恐るべし。
とにかく出血が酷い。
なぜこんなことにしまったんだろう。
海水浴に来ていた僕の名前は澪(みお)21歳。男につける名前じゃねぇだろって小中高で散々いじられるとなると随分ドライな対応になるものだ。
大学生にもなり3度目の夏休み、当たり前のようにバイトのない日は泳いでいた。それがどうだ。今朝早くにひと泳ぎしていただけなのに、今日はどうしてか偶々若い女性客に、偶々居合わせた酒臭い不良達が目に入ってしまったのだ。普段は6時過ぎ、こんな早い時間にビキニ姿の女性がいるなんてことはない。
きっと酒に酔った連中には格好のカモのように映ったことだろう。
見て見ぬ振りすればいい。見過ごす選択も頭の中で過ぎる。
しかし、朝早いため周りを見渡しても他に彼女を救ってくれるひとは居ない。
ここで見捨てては薄情というもの。何かあれば罪悪感に駆られるのは目に見えている。
おい!嫌がってんだろ!絡んでんじゃねぇよ。
はぁ?
近づきながら、不良達に声をかける。
自分の後ろに彼女を誘導し、身を以て牽制する。
話し合いでどうにか解決しようとするも悪酔いしているようだ。2人組の不良らは聞く耳を持たない。
それどころか男の1人が急に殴りかかってきたのだ。自己防衛だと言い聞かせ、拳を受け止め、捻りあげる。痛みで呻く不良aを突き飛ばすとよろけ、尻餅をつく形で倒れこむ。もう1人はそんな連れの姿をみて盛大にお腹を抱えて、笑っている。
僕はくるりと後ろを向き、女性を連中から遠ざける意味も兼ねて、一時的にでも帰ることを勧める。
ついてなかったね。また今度来た時は楽しんで、今日は海水浴は諦めて帰りな。
取り敢えず脱衣所まで付いてくから。
耳打ちで彼女に伝え、促す。
自分で言うのも何だが、スマートな立ち振る舞いだったと思う。
脱衣所に向かう途中、刃物を持った不良に刺されさえしなければ。
激昂した彼はふらふらと酔った勢いそのまま何かしら叫びながら此方に向かって来た。今にも転けそうな連れの姿をみて笑い転げている友人の声が煽られているかのようで、余計に苛つかせているのだろう。
酒に呑まれた屑にすら、少しばかり情けをかけた彼は受け止めてやることにした。それが過ちだった。突っ込んできた彼は体で受け止め、その程度ではビクともしないぞ。と言うつもりだったのだが、腹部に鋭い痛みが走ったのだ。
ヒヒっ。
そんな笑い声をあげた不良を突き飛ばした澪は異物が自分の体から抜けるのが見えた。
トサっと砂の上に落ちたのはナイフだった。刃渡り15センチほどだろうか。
情けをかけた自分が愚かしくなったのと同時に、人を刺して笑っている屑がどうしても許せなくなった。
彼はナイフを手に取り、お返しとばかりに右腕に突き刺した。
酔いが醒めたのだろう、うぎゃああああと叫び、蹌踉めきながら連れの元へと向かい、助けを乞う姿は滑稽だった。
流石に不味いと思ったのだろう、笑うのをやめ、睨みつけながら手を貸す連れに、
まだやるか!!
と、声を張り上げる。
腹部から血を流している相手とは言え、ナイフを持った威勢の良い声に臆したのか、立ち去る不良達。
あまりの恐怖に女性は腰を抜かして、絶句してしまっている。
すみません。立てますか?ほんとに申し訳ないんですけど、救急車とか呼んで貰えると助かります。
腹部からの出血の量が早い。虚勢を張ったせいもあるのだろう。
携帯が脱衣所のロッカールームにあるから、す、すぐ取ってきます!!
コクコクと彼女の返事に頷くと、走って携帯を取りに行く後ろ姿が視界に入る。
ここで最初の自問に自答するならば、自分の甘さが招いた結果だろう。
行動には結果が伴ってくるとはよく言ったものだ。その責任は自分にある。
こんなカタチで自分の人生に終止符を打つことになろうとは。
意識はそこで途絶えた。
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