女官は推しの妄想をして腐っていたい~という訳で、お付きのお嬢様が立てるフラグはすべて私が折らせていただきます~

さくらぱん

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女官、反撃する

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「………………え?」

 真珠のような大粒の涙を目にためたお嬢様が振り返って私を見ています。

「なにを……言っているの?」

 あ、いけませんいけません。
 つい本音の方を口にしてしまいました。

「失礼しました。お嬢様。今は泣いている場合ではありません」

 何事もなかったかのように言い直しておきます。
 よくあることなので、お嬢様もツッコミを入れることなく頷いてくださいました。
 さすが私がお仕えしているお嬢様です。

 改めまして。
 私はジル・ストーム。

 ゲームである『ロイヤルブラッドデスティニィ』では物語序盤に退場するアリスティア・ロザモンドというサブヒロインにお仕えする女官でございます。

 もっとも中の人はどこにでもいるようなOLなんですけどね。
 ちょっとばかりゲームが好きで、同人誌とかコスプレとかしちゃいますけど、いたって普通の人ですよ、普通の。

 実はこのシーンでなにも言い返せなかったアリス様はゲームから退場してしまいます。
 それは即ち、お仕えする私もゲームから退場するということです。

 いけませんいけません。
 それは絶対に容認してはいけません!

 だってこれから先にはさまざまなイベントがあって、私の推しがキャッキャウフフするシーンが目白押しなんですよ!
 それを生で! この目で見られるんですよ!

 この機会、絶対に逃すわけにはまいりません!

 けれどお嬢様はこういう場面にとことん弱い方なのです。
 ゲームでも今ひとつ影が薄いまま退場してしまいます。

 でも性格はとてもお優しい、本当によい方なんですけどね。

 ですからここは、お嬢様の女官である私がなんとかしなければなりません。

 昂然と顔を上げます。
 あ、お嬢様が私にもたれかかっていい匂いが……いけませんいけません。
 今はこのフラグをなんとかするのが優先ですから!

「それらはすべて言いがかりです」

 そういえば、こうして皇太子様に直接声をおかけするのって初めてでした。
 今更ながら緊張してきちゃいましたよ。

「ふん。女官風情が口を挟むなどと。お前の言葉など誰が信じるか」

 うわー! うわーうわーうわああああああ!

 聞いてください。聞いてください!
 い、今! 今ですね!
 私の推しが! 皇太子様が! 私に声をかけてくれたんですよ!

 【速報】私、推しに声をかけられる【朗報】

 SNSで! 拡散したい!

 ああああああ!
 よかった! あの時、偶然、お店で出会ったあの時!
 プライベートの場面で声をかけないでよかったあああああああ。

 ふー。いけませんいけません。
 落ち着きましょう。
 テンションが振り切ってちょっと天国が見えてました。
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