目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお

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冒険者~修行~

初めての労働

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修行開始3日目の朝、フェリーチェは再び筋肉痛になり、オリビアにマッサージをしてもらっていた。
フェリーチェはマッサージをしてもらいながら、昨日の事を話した。

「それでね、結局アルは鉄板を粉々にしてたの。もったいないよね~」

「本当にA級冒険者並みの力なんですか?普通はできませんよ」

「アレじゃない?火事場の馬鹿力!『魔物叩き』でストレス溜まってたみたいだし」

「火事場の馬鹿力は、使いどころが違うと思いますけど……まぁ、言いたい事は分かりますが。それにしても、オースティン様もブレイク様も……」

「2人がどうかしたの?」

「……いえ。さぁ着替えて朝食に行きましょう」

「は~い。マッサージありがとうオリビア」

修行内容を聞いて、何か考える素振りを見せるオリビアを不思議に思い聞いてみたが、朝食と聞いてすっかり意識がそれたフェリーチェは、着替えて食堂に向かった。
食堂ではアルベルトが、クロードとサマンサに昨日の話をして談笑していた。
フェリーチェが席つくと、朝食を食べ始めた。

「フェリ、打ったところは大丈夫なの?」

「大丈夫だよお母様」

「ゴメンねフェリ」

「フェリも修行で疲れていたから、踏ん張れなかったんだろ?」

「お父様の言う通りだよ。だから、アルも気にしないで」

「うん。次はちゃんと僕が支えるよ!」

(抱き付かないという選択肢はないのか)

アルベルトの言葉に、いつものようにクロードが内心ツッコミを入れた。
食事を終えて、フェリーチェとアルベルトは授業の部屋に向かい、部屋に入りしばらくすると、マライカ商会会頭であるロバートが入ってきた。

「おはようございます。本日、担当しますので宜しくお願いします」

「「おはようございます。よろしくお願いします」」
   
「本日は商売について勉強して頂きます。お二人は、買い物をする店をどのように決めていますか?」

ロバートの質問に、少し考えてからフェリーチェが答えた。

「う~ん……行った事のある店か、知り合いに聞いた店とかですね」

「それは、何故ですか?」

「行った事のある店なら、店の雰囲気や品揃えがだいたい分かりますから。知り合いから聞いた場合も同じ理由です」

「確かに、初めての店は不安もあり、いつも利用する店に行く方はいらっしゃいますね」

フェリーチェの答えに同意した後に、アルベルトが質問に答えた。

「僕は、店員や品を鑑定してから入るかな」

「それは、何故ですか?」

「僕は物の価値を知らないから、騙されるかもしれないし、偽物や不良品を買いたくないからね。まぁ、店が意図的にやってるとは限らないけど」

「確かに、意図せずそういった物を売ってしまう店もありますね。もちろん故意におこなった場合は処罰されますが」

「「へ~」」

ロバートは、アルベルトの答えを聞き次の質問をした。

「では、どういった雰囲気の店なら入りたいと思いますか?」

「やっぱり、明るくて清潔感のあるお店ですね。店員さんも同じです。後は……丁寧に対応してくれると良いですね」

「確かに、暗い雰囲気だと入るの嫌かな。それに店員の態度が悪いと、次は行きたく無くなるよね」

「そうですね。私の商会では、新人には必ず3ヶ月の研修を受けさせています。研修が終わった後に、指導した者と新人に話を聞いて、採用しています。採用した後も定期的に研修を行っているのですよ」

(へぇ~ちゃんと研修があるんだ)

研修をすると聞いてフェリーチェが驚いていると、アルベルトが質問した。

「研修って何をするの?」

「主に接客を学びますが、他にも『観察力』を養ってもらいます」

「観察力ですか?」

「お客様を観察して、顔を覚えて性格や趣向を把握するのですよ。もちろん、観察と言いましてもお客様に気付かれないようにですがね。ジロジロ見られて良い気持ちはしませんから」

「でも、たくさんいるお客さんを覚えられるんですか?」

「さすがに全員覚えるのは無理ですから、うちでは担当制にしています。それでも人数は多いのですが、それぞれのやり方で覚えていますよ」

「大変そうですね」

「もちろん、お二人にも学んでもらいますので、頑張ってくださいね」

「うっ……頑張ります」

「やってみるよ!……役にたちそうだし」

(アルは、やる気あるな~)

他人事のように感心していたフェリーチェは、ロバートがにこやかに言った言葉に引き吊った顔で答え、アルベルトは楽しそうに答えていた。
しかし、アルベルトが最後にボソッと言った言葉は、フェリーチェとロバートには聞こえていなかった。
その後、基本的な挨拶や接客を教えてもらいながら授業は終了した。
午後からは店で実習するため、ロバートと共に昼食を食べてから、店に向かった。
今日の実習する店は、ロバートの知人の男の店で野菜と果物を扱っていた。
男は少し強面で、恰幅もある。
てっきり、ロバートの店で実習すると思っていたフェリーチェとアルベルトは、思わずロバートと男を交互に見てしまった。
そんな2人を見た男は、呆れたようにロバートを見て口を開いた。

「ロバート、もしかして説明してないのか?」

「おや、うっかりしていました。アルベルト様、フェリーチェ様、この男は私の友人のパーカーです」

「うっかりだ?わざとらしい」

「初めまして、アルベルトです」

「初めまして、フェリーチェです」

「あぁ……パーカーだ。よろしく」

ロバートが紹介すると、2人は挨拶をして頭を下げた。
ロバートを嫌そうに見ていたパーカーは、一瞬目を見開いた後、少し口元を緩めながら名乗った。
しかし、2人の疑問は晴れず再度ロバートを見た。

「私の店は貴族の方もいらっしゃいますから、お二人を働かせられませんので、パーカーに頼みました」

「うちは、貴族なんぞ来ないからな。しかし、本当にこんなチビ共を働かせるのか?」

「そうですよ。いいですかアルベルト様、フェリーチェ様、授業で言った『観察』を意識して接客してみてくださいね」

「「はい!」」

「では、夕方に迎に来ますので頑張って下さいね」

「あっ!コラ、ちょっと待て!ちゃんと俺にも説明して行け!」

フェリーチェとアルベルトに、手を振りながら去っていくロバートにパーカーが怒鳴るが、意外な速さを発揮してあっという間に姿が見えなくなった。
残された3人は無言で見つめ合っていたが、タメ息を吐いたパーカーが口を開いた。

「あ~……俺はクロード、様が子どもの後学のために、実習させるとしか聞いてないが合ってるか?」

「はい、パーカーさんはお父様とも知り合いなんですか?」

「まぁな。中等部で一緒だったんだ」

「高等部は行かなかったの?」

「金が無くてな。だが、行かなくて良かったぜ」

「どうしてですか?」

「ロバートを見ろ。昔は商人になれるのか?ってくらい大人しくオドオドしてたのに、‘あの人たち’に振り回されて、見る影もない!」

「ロバートさん、苦労したんだね」

「‘あの人’じゃなくて、‘あの人たち’なんだ」

興奮して話す自分を、生暖かい目で見ている2人に気付いたパーカーは、咳払いして2人に言った。

「ゴホンッ!……まぁ、うちはそんなに忙しくないから、ゆっくり仕事を覚えてくれ」

「「よろしくお願いします!」」

それから、商品について聞いたりしていると老夫婦がやって来た。

「やぁパーカー、果物をいくつか見繕ってくれるかい?」

「かまわねぇが、自分たち用か?」

「お隣さんの具合が悪くて、お見舞い用なのよ」

「じゃあ、籠にいれとくぜ」

「えぇ、お願いするわ」

「おう!会計だぞ~」

パーカーは、籠の中に果物を入れながら店の奥に声をかけた。
するとフェリーチェとアルベルトが、元気よく返事をして出て来た。

「「は~い!」」

「おや?」

「あら?」

夫婦は2人を見て驚き、2人と自分を交互に見たので、パーカーが苦笑しながら説明しようとすると夫婦の声が遮った。

「「隠し子!?」」

「ちげぇ!」

「フェリは合計を出して。僕がお釣の計算するから」

「うん!」

「お前らも否定しろよ!」

「こんにちは、フェリーチェです」

「こんにちは、アルベルトです」

「いや、挨拶じゃなくて!」

「はい、こんにちは。わしは、サムだ」

「こんにちは、わたしはマーサよ。偉いわねぇ、お父さんのお手伝いかしら?」

夫婦が言った言葉にパーカーが焦るが、フェリーチェとアルベルトは、そんなパーカーを見てにっこり笑いながら返事をした。

「「……はい!」」

「はい!……じゃねぇ!」

「やだな~、冗談ですよ。合計で銀貨1枚と銅貨3枚です」

「おや、計算できるなんてすごいな。銀貨2枚でお願いするよ」

「お釣が……銅貨7枚だよっ…です。お確かめください」

「クスッ……はい、銅貨7枚ちゃんとあるわ」

「「ありがとうございました!」」

「「お父さんのお手伝い頑張って」」

「「は~い!」」

「だ・か・ら……お父さんじゃねぇよ!」

「「どうどう、落ち着いて」」

「俺は馬か!?」

と、いうやりとりを何度か繰り返しているとロバートが迎に来た。

「お二人共、どうでしたか?」

「おい……」

「楽しかったです(いろいろ)」

「楽しかったよ(いろいろ)」

「おい、ロバート」

「そうですか、(いろいろ)楽しかったかったですか」

「………………」

「今日のお客さんの顔と名前は覚えられました」

「まだ、趣向とかは良く分からないよ」

「趣向は何度が接っしてからでないと、なかなか分かりませんからね。これからですよ」

「「は~い」」

「ところで、パーカーは何をしているのですか?」

「ずっと叫んでたから、疲れたみたいですね」

「お客さんがいるのに、叫ぶんだもん。皆、ビックリしてたよ」

「それはいけませんね。商人たるもの常に冷静に対処できなければいけませんよ」

「誰のせいだと……」

「「「はい?」」」

「誰のせいだと思ってんだ!ロバートはちゃんと説明しないで行くし、チビ共は‘隠し子’を否定しないし、計算は俺より速いし、客はビックリしてたんじゃなくて笑いをこらえてたんだよ!」

「おかげで、お客さんと会話できましたよ」

「話が弾んだよね~」

のほほんとしているフェリーチェとアルベルトを見て、興奮している自分がバカらしくなったパーカーはガックリと項垂れた。

「もういい……あいつの子どもと聞いた時に断るんだった。はぁ~……ほら、今日の駄賃だ」

「え?でも……」

「僕たち実習してもらってるから、お金はもらえないよ」

パーカーの差し出したお金を見て、フェリーチェとアルベルトは困った顔をしたが、パーカーは眉間にシワを寄せて言った。

「ガキが遠慮してんじゃねぇ。今日のお前たちを見て、俺が払うと決めたんだ。さっさと、受け取れ」

「パーカーが、あなた方の働きを見て賃金を払うに値すると判断したのですから、もらってください」

「「ありがとうございます!」」

パーカーとロバートに言われ、賃金銅貨6枚を受け取った2人は、キョロキョロと店の中を見た。
目当ての物を見つけたのか、2人はそれぞれ動き出したのを、ロバートとパーカーは不思議そうに見守っていた。
そして、2人はそれぞれ果物を持って来た。

「「コレください!」」

「欲しいなら、いくつかやるぞ?」

「いえ、初給料だからお父様とお母様にプレゼントするんです!」

「フェリのはお父様が好きなので、僕のはお母様が好きなんだ~」

フェリーチェとアルベルトの行動に感動したパーカーは涙ぐんだ。

「お前らっ!……すまない、‘あいつに似てドS’とか思っちまって」

「ドS……アルは合って――」

「フェ~リ~?」

「ハッ!?何も言ってないよ!」

ドS発言に、フェリーチェの口が無意識に動き、アルベルトにしっかり聞かれた。
フェリーチェに躙り寄るアルベルトと、怯えて後ずさるフェリーチェ、目頭を押さえているパーカーをにこにこ見ていたロバートが言った。

「貴方のドS発言は、しっかり報告しておきますよ」

この言葉を聞いていれば、パーカーは一目散逃げていた事だろう。

 
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