小虎|僕を愛して身代わりになってくれた彼が、霊能者になるなんて!!

宇美

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第16章 茶畑の中の学校

茶畑の中の学校(1)

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ああのどかだなあ!
と二郎叔父が私より三列離れた座席で大きく体をそらせた。

バスの中は私と二郎叔父以外誰もいない。

開け放しにされた窓の外はこんもりとした黄緑で埋め尽くされていた。

緑の太いモールのような畑が縦に何十列も並んでいる。

ふくら織りの文様にアクセントをつけるように、
途中から横並びになる。

緑の向こうには深緑の並行して続く山々が見える。

その背後は日が落ちかけて少しくすんだ色となった水色の空だった。

改札口の一つしかない駅を降りて三十分たっていた。

延々と茶畑の中の道を走りつづけている。

道はまるで私達が乗るバスが目的地にいくためだけにあるように思えた。

駅を出てからいままで一度も他の車に出会っていない。

道を歩いている人さえ見なかった。

駅を出て二十分ほどたった時に道からずっと奥まったところに淡い黄土色の麦藁帽子がふわふわ浮いていたのを見ただけである。

時間がたつほどに緑は深くなり次第に抹茶色に近くなった。

坂道になり、
バスは登っていく。

七五三の飴を横に並べたような形の緑が百本以上谷にかけて広がり、
その向こうに緩やかにくねった道路が見えた。

道路を過ぎると緑は上向きに上り始めて登りきった所に、
茶色と灰色の細長い建物が立ち並んでいた。

人家というよりも、
何かの施設のように見える。

「次は学園前!
学園前!
お降りの方はボタンを押してください」

車内放送が流れるやいなや、
二郎叔父がボタンを押す。

煉瓦造りの柵が左側にあらわれ、
柵の向こうはみっしりと青々とした木々が並んでいる。

右側に広がる茶畑は夕日に照らされていた。

バスが塀と木々の隙間のような門の前で止まった。

バスが止まったのは駅を出発して初めてだった。

「聖コロンバ学園 御茶畑村校」という銘板の門の前でドアが開く。

私と二郎叔父は荷物を抱えてステップを降りた。

僕達も田舎者だけどここは本当に田舎だね、
と二郎叔父がつぶやいた。

二郎叔父に背中を押されて門から続く道をスーツケースを転がしながら進む。

門から続く道の脇は鬱蒼とした緑だった。

道の脇に木を植えたというよりも林の中に道を作ったように見えた。

実際それほど歴史のない学校だったから私の感覚は正しかったのである。

森の中の遊歩道のような道を五分ほど行くと、
茶色いヨーロッパ風の建物が見えた。

学校案内で見覚えのある建築だった。

辺りには誰もいない。

周りを見渡しているとわやわやと若い声が聞こえた

「ジョアンのやつまじ、
うざくね!?」

五人ぐらいの生徒らしき体操服姿の少年達がやってきた。

その内の短い髪をつんつん立たせた一人は正太に似ていた。

私を見るとなんだあこいつトロそうだ、
という意地悪そうな目をした。

私は身を縮めた。

「あのきみ達、
教頭室は?」

二郎叔父は少年に言われたとおりの道を私を連れて進んだ。

小さな下駄箱のある入り口から校舎に入りすぐの部屋に入る。

父と同じ年頃の茶色いスーツ姿の紳士がいた。

部屋の壁はキリスト教関連と教育学の書籍がぎっしりと並んだ本棚に床から天井まで覆われていた。

二郎叔父が、
すみません、
兄が来る予定だったのですが急診で代わりに私が、
と挨拶をした。隣の修道院で作ったという、
えらく美味しい新茶をすすりながら、
二郎叔父と教頭先生はしばらく世間話をした。

まもなく二郎叔父はそれじゃあ僕はこれで、
と帰っていった。

行ってしまう前に私の耳元で、
ぼそっとつぶやいた。

「もし何かあったら、
例えばいじめられたりしたら、
先生とか父さんに言いにくかったら叔父さんに言うんだぞ」

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