小虎|僕を愛して身代わりになってくれた彼が、霊能者になるなんて!!

宇美

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第4章 小虎

小虎との出会い(2)

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顔をあげると、
年上の少年の顔があった。

かっきりとした顎の面長な顔に、
子供離れした鼻筋が通っていた。

その下の少し幅広の唇はわずかに開いていた。

短い前髪の下の一直線の眉は、
きりきりとつりあがっている。

睨むような目はみっしりとした睫毛に取り囲まれてた。

颯爽とした少年の顔立ちの中、
そこだけ少し女性的に見えた。

女っぽいといっても女の子ではなくて、
二十歳を過ぎた成熟した女性のようである。

大人びた鋭い目線は私の背中を通り越していた。

お前達、
弱い者いじめして最低だ!
という一喝が公園に響き渡った後、
この突然現れたお兄さんといじめっ子達はしばらくやりあっていた。

この子、
弱いから鍛えてやった、
とか友達いなそうだから遊んでやったとか、
散々言い訳したが、
最後には一斉に私に向かい、
スグル君、
ごめんなさい!
と深々とお辞儀をした。

悪餓鬼どもが方々に散っていくと、
お兄さんは険しかった顔をゆるめた。

私をふりむいた。

「家はどこ? 怪我をしているから送ってやるよ!」

道すがら話をした。

少年の名前は木林虎之助。

でも彼の叔父さんの名前も虎之助だったので皆、
彼のことを小虎と呼ぶという。

隣の小学校に通っていて、
私より三学年上だった。

私が自己紹介をすると、
小虎は驚いた顔をした後、
訳を説明してくれた。

彼の母親が私の祖父と父の経営する病院で
受付の仕事をしているのだという。

私と小虎が病院に行くと、
ああ坊ちゃん、
といつも可愛がってくれる若い先生が出迎え、
後ろからは父が現れた。

父は私に怪我の理由を問うた。

私は、
美登利ちゃんと正太君……
と下を向いて答えた。

父は、
女の子と年下の子にやられて、
情けない、
と顔をしかめる。

小虎が、
スグル君はいじめられたんじゃなくて、
喧嘩したんです、
とかばってくれた。

父はやり返したのか!
ならいい!
と笑顔になった。

私は小虎をちらりと見た。

小虎の母、
良子さんは美しい人だった。

私は彼女を見た時、
うちのママより綺麗な女の人に初めて会ったと思った。

目から鼻の下までは小虎とほぼ同じだったが、
小虎の口が大きいの比べて、
彼女の口は薔薇の花びらのように小さく、
ふっくらと膨らんでいる。

母が好きで集めていた、
中原淳一の画集に出てくる人に似ていた。

看護婦さんのような淡い水色のワンピース姿が清楚だった。

父、
良子さん、
小虎、
若い先生はお互いを良く知っているようだった。

小虎は若い先生に
艶々とした紙のフルカラーの本を返した。

何の本かと聞くと、
人体のしくみについて説明した本なんだ、
僕は医者になりたいから今から勉強しているんだ、
という。

小虎君、
医大の学園祭にはぜひ遊びにおいでよ、
と若い先生が誘うと、
小虎が嬉しそうに礼を言った。

小虎が、
スグル君もお医者さんになるの?
と聞いたので、
私は、
ウン!
ママもパパもおじいちゃんも僕はお医者さんになるって言ってたから、
たぶんそうだよ。

でも人間だけじゃなくて、
動物のお医者さんにもなりたいんだ、
獣医さんていうんだよ、
と答えた。

父がスグルが言う動物って玩具の動物だろう?
とからかった。

看護婦さんに傷の手当してもらった私を、
小虎は家の門まで送ってくれた。

夕日を背に小虎はまた遊ぼう、
としっかりとした声で言った。

私の手を力強く握って大きく振った。

冷たい空気の中、
小虎の手が暖かかった。

美登利の母が玄関先で、
お菓子屋の包み紙の箱を手に、
しきりに背中を倒している。

隣を通りぬけて居間で待っていたが、
なかなか話は終わらない。

母がもどってくると、
カステラもらっちゃったわ!
と私に箱を見せてくれた。

私は飴にたかる蟻のように、
母の膝によじ登り抱きついた。

母が、
美登利ちゃんに、
お帽子とコート、
あげたんですって!?
美登利ちゃんのお母さんびっくりしていたわよ!
と私の鼻をぽんと叩いた。

私が今日の出来事を話すと、
母は私を抱きしめて頭を撫でた。

濡れた顔を母のクリーム色のタオル地のエプロンに押し付けた。

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