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第25章 インターネット時代
インターネット時代(2)
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「スグルさん。
バームクーヘンもらったの。
食べる?」
妻がお盆にケーキと紅茶を乗せて持ってきた。
私の顔を覗き込むとスグルさん、
どうしたの?
幽霊でも見たような顔をしているわ!
と不思議がる。
私はもう一度小虎の写真を見た。
最後に会った時からほとんど年を取っていない。
大分前に撮った写真なのだろうか?
ホームページのいろいろな部分をクリックしてみる。
鬼塚霊術の概要、
沿革、
アクセス、
連絡先、
信者からの匿名の相談と回答、
どこを見てもすっきりしていてかつ情報量も多い。
よくできたホームページだった。
デザイン、
色使いも今風で非常にセンスがよい。
パステル調の色彩はスピリチュアルとかパワースポットとかが好きな若い女性が好みそうな雰囲気があった。
実際信者からの相談は若い女性からが多い。
私は昔行った鬼塚霊術の建物とあの男を思い出した。
どうしてもこのファッショナブルなホームページとあれらのつながりが見出せなかった。
こんなものを作ることを、
あの粗野な男が考えるだろうか?
そういえばさっき小虎の写真の下に
「代表 鬼塚虎之助」
と書いてあった。
私はさっきいい加減に読んだ鬼塚霊術の沿革を再度クリックした。
「宗教法人鬼塚霊術の沿革」によると鬼塚霊術の前代表は五年前に亡くなり、
それと同時に彼の養子である、
鬼塚虎之助、
つまり小虎が代表になったそうである。
私はほっとため息をついた。
もう一度ホーム画面に戻る。
鬼塚霊術はFACE BOOKもやっているみたいで、
そのページに飛んでみた。
FACE BOOKは写真日記になっていた。
ほぼ一週間に二回の割合で日記は更新されている。
少なくとも一年以上前には始められていたようだ。
島の四季の中にたたずむ小虎の写真を思う存分眺めることができた。
久しぶりに見る小虎の姿は、
懐かしいけれど新鮮だった。
最近の写真を見てもやはり小虎は少年のままだった。
写真日記の下にはかなり長い記事も書かれていた。
神様の道だとか霊魂のありかたとか、
日本の未来等について書かれていたが、
なかなか立派な文章だった。
書いた人はそれなりに学のある人らしい。
比較宗教論的な記事も多い。
キリスト教や聖書に造詣が深い人物のようだった。
最新の二日前のものは、
今日鬼塚代表は、
○○の滝で来年一年の日本の平和と繁栄を祈って祈祷をしました、
と書いてある。
上下白の着物姿の小虎が鼻を赤くして、
滝の前で手をあわせている写真が載せられていた。
私は小虎のほんの二日前の姿を見ることができることがなんだか不思議に感じられた。
日記の最後に(武藤記)とかっこ書きがある。
私はあっと声をあげて、
笑い出した。
「これがシンクロニシティってやつか」
私は少し前に不思議なことが大好きな会社の同僚に面白い本を借りた。
その本は「シンクロニシティ」というスイスの心理学者が提唱した神秘的な偶然の一致という概念について書かれていた。
例としてこんなものがある。
昔ある人が海外旅行に行った。
名所の前で、
娘と現地の土産売りの少年を並べて写真を撮った。
二十年後娘は国際結婚をして花婿が家に遊びに来た。
花婿が花嫁の幼少時のアルバムを見ていると、
そこに幼い頃の自分を発見した。
なんと花婿はその土産売りの少年だったのである。
他にも誕生日と死んだ日が同じだった人だとか、
人生の重要な場面で関わる番号
(例えば受験番号とか新婚旅行のホテルの部屋番号だとか)
がすべて同じの人とかについて書かれていた。
「やっぱり小虎はスピリチュアルな人だからこんなことがおこるのだろうか?
たまたまケンイチの事を考えていて小虎のことを検索したら、
小虎のホームページを作っている人も「武藤」だなんて!」
私は面白く思った。
さっそく妻に話すと、
妻が嫌そうな顔をした。
「やだ!
スグルさんたらそんなの好きなの?
変な影響受けないでね!」
妻は霊能者には嫌なイメージしかないという。
昔彼女の親戚に当たる人がある島の霊能者にすっかり依存してしまい、
家屋敷を失ってしまったという。
ホームページを一瞥すると、
「こんな風に今風にして新しい客とりこもうとしてるのよ!
スグルさん絶対にこんなのに騙されないでね!」
と私に念を押した。
妻によればケンイチと小虎のホームページを作っている人が同じ苗字でも
不思議でもなんでもないという。
武藤姓は私と彼女の出身地辺りには非常に多いそうだ。
ケンイチの父が聖コロンバ学園、
白砂町校の出身だったならば、
おそらくケンイチの家系もあの地域の出だろう。
妻の叔母が住んでいた、
私の実家から少しバスで行った集落はあたり一帯の表札がすべて「武藤」だという。
私は妻が寝入ったのを確認すると、
こっそりパソコンの前に行き、
パソコンを立ち上げた。
鬼塚霊術のページに行ってみる。
私は改めてホームページのデザインの美しさに感心した。
お問い合わせという所をクリックする。
白いボックスが表れた。
私はタイピングを始めた、
宗教法人鬼塚霊術
武藤様
ご祈祷のお願いではないので、
本来ならここに送るべきではないのかもしれませんがどうかご容赦をお願いします。
私は鬼塚虎之助代表の幼友達で、
今東京で○○をしている竹中スグルと言います。
昔代表に大変お世話になったにもかかわらず、
毎日の忙しさにとりまぎれて長らく、
お礼をしそこねていました。
年末年始にかけて帰省する際に鬼塚代表にお会いする機会があればと思いますが、
いかがでしょうか?
今度の帰省は母亡き後、
空き家にしていた実家を売却するために、
取り壊す前に、
家の中を整理するためです。
帰省中、
他の用事はありませんので、
お会いするのは鬼塚代表と武藤様の
ご都合のよい日時を指定していただければ結構です。
最初から見直して誤字脱字がないことを確かめると送信ボタンをクリックした。
バームクーヘンもらったの。
食べる?」
妻がお盆にケーキと紅茶を乗せて持ってきた。
私の顔を覗き込むとスグルさん、
どうしたの?
幽霊でも見たような顔をしているわ!
と不思議がる。
私はもう一度小虎の写真を見た。
最後に会った時からほとんど年を取っていない。
大分前に撮った写真なのだろうか?
ホームページのいろいろな部分をクリックしてみる。
鬼塚霊術の概要、
沿革、
アクセス、
連絡先、
信者からの匿名の相談と回答、
どこを見てもすっきりしていてかつ情報量も多い。
よくできたホームページだった。
デザイン、
色使いも今風で非常にセンスがよい。
パステル調の色彩はスピリチュアルとかパワースポットとかが好きな若い女性が好みそうな雰囲気があった。
実際信者からの相談は若い女性からが多い。
私は昔行った鬼塚霊術の建物とあの男を思い出した。
どうしてもこのファッショナブルなホームページとあれらのつながりが見出せなかった。
こんなものを作ることを、
あの粗野な男が考えるだろうか?
そういえばさっき小虎の写真の下に
「代表 鬼塚虎之助」
と書いてあった。
私はさっきいい加減に読んだ鬼塚霊術の沿革を再度クリックした。
「宗教法人鬼塚霊術の沿革」によると鬼塚霊術の前代表は五年前に亡くなり、
それと同時に彼の養子である、
鬼塚虎之助、
つまり小虎が代表になったそうである。
私はほっとため息をついた。
もう一度ホーム画面に戻る。
鬼塚霊術はFACE BOOKもやっているみたいで、
そのページに飛んでみた。
FACE BOOKは写真日記になっていた。
ほぼ一週間に二回の割合で日記は更新されている。
少なくとも一年以上前には始められていたようだ。
島の四季の中にたたずむ小虎の写真を思う存分眺めることができた。
久しぶりに見る小虎の姿は、
懐かしいけれど新鮮だった。
最近の写真を見てもやはり小虎は少年のままだった。
写真日記の下にはかなり長い記事も書かれていた。
神様の道だとか霊魂のありかたとか、
日本の未来等について書かれていたが、
なかなか立派な文章だった。
書いた人はそれなりに学のある人らしい。
比較宗教論的な記事も多い。
キリスト教や聖書に造詣が深い人物のようだった。
最新の二日前のものは、
今日鬼塚代表は、
○○の滝で来年一年の日本の平和と繁栄を祈って祈祷をしました、
と書いてある。
上下白の着物姿の小虎が鼻を赤くして、
滝の前で手をあわせている写真が載せられていた。
私は小虎のほんの二日前の姿を見ることができることがなんだか不思議に感じられた。
日記の最後に(武藤記)とかっこ書きがある。
私はあっと声をあげて、
笑い出した。
「これがシンクロニシティってやつか」
私は少し前に不思議なことが大好きな会社の同僚に面白い本を借りた。
その本は「シンクロニシティ」というスイスの心理学者が提唱した神秘的な偶然の一致という概念について書かれていた。
例としてこんなものがある。
昔ある人が海外旅行に行った。
名所の前で、
娘と現地の土産売りの少年を並べて写真を撮った。
二十年後娘は国際結婚をして花婿が家に遊びに来た。
花婿が花嫁の幼少時のアルバムを見ていると、
そこに幼い頃の自分を発見した。
なんと花婿はその土産売りの少年だったのである。
他にも誕生日と死んだ日が同じだった人だとか、
人生の重要な場面で関わる番号
(例えば受験番号とか新婚旅行のホテルの部屋番号だとか)
がすべて同じの人とかについて書かれていた。
「やっぱり小虎はスピリチュアルな人だからこんなことがおこるのだろうか?
たまたまケンイチの事を考えていて小虎のことを検索したら、
小虎のホームページを作っている人も「武藤」だなんて!」
私は面白く思った。
さっそく妻に話すと、
妻が嫌そうな顔をした。
「やだ!
スグルさんたらそんなの好きなの?
変な影響受けないでね!」
妻は霊能者には嫌なイメージしかないという。
昔彼女の親戚に当たる人がある島の霊能者にすっかり依存してしまい、
家屋敷を失ってしまったという。
ホームページを一瞥すると、
「こんな風に今風にして新しい客とりこもうとしてるのよ!
スグルさん絶対にこんなのに騙されないでね!」
と私に念を押した。
妻によればケンイチと小虎のホームページを作っている人が同じ苗字でも
不思議でもなんでもないという。
武藤姓は私と彼女の出身地辺りには非常に多いそうだ。
ケンイチの父が聖コロンバ学園、
白砂町校の出身だったならば、
おそらくケンイチの家系もあの地域の出だろう。
妻の叔母が住んでいた、
私の実家から少しバスで行った集落はあたり一帯の表札がすべて「武藤」だという。
私は妻が寝入ったのを確認すると、
こっそりパソコンの前に行き、
パソコンを立ち上げた。
鬼塚霊術のページに行ってみる。
私は改めてホームページのデザインの美しさに感心した。
お問い合わせという所をクリックする。
白いボックスが表れた。
私はタイピングを始めた、
宗教法人鬼塚霊術
武藤様
ご祈祷のお願いではないので、
本来ならここに送るべきではないのかもしれませんがどうかご容赦をお願いします。
私は鬼塚虎之助代表の幼友達で、
今東京で○○をしている竹中スグルと言います。
昔代表に大変お世話になったにもかかわらず、
毎日の忙しさにとりまぎれて長らく、
お礼をしそこねていました。
年末年始にかけて帰省する際に鬼塚代表にお会いする機会があればと思いますが、
いかがでしょうか?
今度の帰省は母亡き後、
空き家にしていた実家を売却するために、
取り壊す前に、
家の中を整理するためです。
帰省中、
他の用事はありませんので、
お会いするのは鬼塚代表と武藤様の
ご都合のよい日時を指定していただければ結構です。
最初から見直して誤字脱字がないことを確かめると送信ボタンをクリックした。
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