51 / 62
第23章 さよなら故郷
さよなら故郷(2)
しおりを挟む
しばらくたったある朝、
出掛けようとすると妹がお兄ちゃん!
と引き止める。
「庭に島のオバちゃんの幽霊がいたの!」
「そんなまさか?」
「ホントよ。
だけど何だか変なの。
お化粧して、
見たことないくらいお洒落しているの」
兄弟で騒いでいると、
廊下の向こうから父に案内されて、
年配の女性がやってきた。
どっしりとした体型である。
白っぽい着物姿だった。
満月のようにまん丸の顔、
顔の中心でぽこんと盛り上がった、
小山のような鼻。
そこだけ平安美人風のおちょぼ口。
そしてしじみ貝のような奥二重の目。
私はその見覚えのある顔に唖然となった。
その顔は紛れもなく五年前に亡くなった筈の島のオバちゃんだった。
「ワタクシ、
シマの妹のリクでございます」
父によると島のオバちゃんのこの瓜二つの妹さんは
霊能者だという。
オバちゃんに霊能者の妹がいたなんて初めて聞くことだった。
霊能者のリクさんのミミズク型の体つきは
オバちゃんと同じだった。
しかし高そうな着物に
とろんとした緑の宝石の帯留めをつけている。
指にも帯留めとそっくりの石を
くりぬいてつくったらしい指輪を嵌めている。
両手の指は赤くマニキュアされていた。
手からは黒い鰐皮のバッグを提げている。
髪は明るく染められていて、
綺麗に油をつけてお団子にされていた。
蒔絵のかんざしを挿している。
服装についてはいかにも田舎のおばあさんという感じだったオバちゃんとは
随分と違っていた。
「まあ!
さとみさんはお綺麗になられたこと!
スグルさんもご立派になられて!」
私も妹も彼女についてまるで記憶がなかった。
昔、
私も妹も本当に幼い頃に島の彼女の家に二週間ほど預けられたという。
母が盲腸炎で入院してオバちゃんも母の看病で忙しかった為だったという。
「ホホホ!
お二人とも小ちゃくて覚えていらっしゃらないざんしょうけど、
その頃、
宅の玄関には大きな海亀の剥製がありまして、
スグルさんはその上にお乗りになって、
浦島さんみたいに海に行くのっておっしゃって本当にお可愛らしかったわ!
オホホ!」
オバちゃんが方言丸だしだったのに比べて、
リクさんの口調は東京山の手風だった。
妹がリクさんに駆け寄った。
あの……
ちょとだけいいですか?
といってリクさんに抱きついた。
目をつむり固そうな帯の上のふんわりした所に顔を押しつける。
リクさんはあらまあ!
という顔をしていた。
妹はリクさんの背中に回した手をはずすとリクさんから体を離して
「ごめんなさい。
あんまりおシマおばちゃんに良く似ていらっしゃるからつい……」
この子は本当におシマさんに可愛がってもらったんでね、
と父が笑ってリクさんに説明した。
出掛けようとすると妹がお兄ちゃん!
と引き止める。
「庭に島のオバちゃんの幽霊がいたの!」
「そんなまさか?」
「ホントよ。
だけど何だか変なの。
お化粧して、
見たことないくらいお洒落しているの」
兄弟で騒いでいると、
廊下の向こうから父に案内されて、
年配の女性がやってきた。
どっしりとした体型である。
白っぽい着物姿だった。
満月のようにまん丸の顔、
顔の中心でぽこんと盛り上がった、
小山のような鼻。
そこだけ平安美人風のおちょぼ口。
そしてしじみ貝のような奥二重の目。
私はその見覚えのある顔に唖然となった。
その顔は紛れもなく五年前に亡くなった筈の島のオバちゃんだった。
「ワタクシ、
シマの妹のリクでございます」
父によると島のオバちゃんのこの瓜二つの妹さんは
霊能者だという。
オバちゃんに霊能者の妹がいたなんて初めて聞くことだった。
霊能者のリクさんのミミズク型の体つきは
オバちゃんと同じだった。
しかし高そうな着物に
とろんとした緑の宝石の帯留めをつけている。
指にも帯留めとそっくりの石を
くりぬいてつくったらしい指輪を嵌めている。
両手の指は赤くマニキュアされていた。
手からは黒い鰐皮のバッグを提げている。
髪は明るく染められていて、
綺麗に油をつけてお団子にされていた。
蒔絵のかんざしを挿している。
服装についてはいかにも田舎のおばあさんという感じだったオバちゃんとは
随分と違っていた。
「まあ!
さとみさんはお綺麗になられたこと!
スグルさんもご立派になられて!」
私も妹も彼女についてまるで記憶がなかった。
昔、
私も妹も本当に幼い頃に島の彼女の家に二週間ほど預けられたという。
母が盲腸炎で入院してオバちゃんも母の看病で忙しかった為だったという。
「ホホホ!
お二人とも小ちゃくて覚えていらっしゃらないざんしょうけど、
その頃、
宅の玄関には大きな海亀の剥製がありまして、
スグルさんはその上にお乗りになって、
浦島さんみたいに海に行くのっておっしゃって本当にお可愛らしかったわ!
オホホ!」
オバちゃんが方言丸だしだったのに比べて、
リクさんの口調は東京山の手風だった。
妹がリクさんに駆け寄った。
あの……
ちょとだけいいですか?
といってリクさんに抱きついた。
目をつむり固そうな帯の上のふんわりした所に顔を押しつける。
リクさんはあらまあ!
という顔をしていた。
妹はリクさんの背中に回した手をはずすとリクさんから体を離して
「ごめんなさい。
あんまりおシマおばちゃんに良く似ていらっしゃるからつい……」
この子は本当におシマさんに可愛がってもらったんでね、
と父が笑ってリクさんに説明した。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる