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第21章 会いたくて
会いたくて(2)
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タクシーに乗ると、
運転手に島に行きたいと伝えた。
車が発車した。
運転手は話好きな男だった。
お兄さん、
高校生?
水産高校?
へえ私立のキリスト教の学校なんだ!
へえ寮!
お金持ちのお坊ちゃんなんだなあ!
将来は東京の大学に行くのかい?
運転手は私に、
君はそんな良い教育をつけてもらって君のお父さんに感謝しなければいけない、
と言った。
彼は島の貧しい漁師の息子だった。
中学卒業と共に、
故郷を後にしてこの町にやってきたという。
缶詰工場で働きながら、
定時制高校に通ったんだけど……、
と言葉を濁した。
事情があって卒業できずに、
それが心残りでしかたない、
と身の上話をする。
その後ある商売をやっている家にお婿さんに行く予定だったんだけど、
ある悪い女性にだまされてね……
と人生の失敗を私に語る。
私はただ、
はあ、は
あと答えるしかなかった。
運転手は急に明るい声でこういった。
「でも最近は鬼山さんががんばっているから島も豊かになるだろうな!」
運転手は前市長で県会議員の鬼山氏と定時制高校の同級生らしい。
同じ年に島から町にやってきたという。
彼によると島にかかるあの橋は鬼山氏によって建てられたもので、
島の人々はみな「鬼山橋」と呼んでいるという。
運転手は、
あの橋によって島は便利になってこれからどんどん発展するだろう、
と目を輝かせた。
その後鬼山氏のことを、
素晴らしい人物、
故郷のスーパースターと誉めそやした。
私は意外な気がした。
周りの大人達からは、
鬼山氏の悪口ばかり聞いていたからである。
「でも、君、
島に何しに行くの!?
君に島に住む友達や親戚なんかいないだろうに」
私は小さい頃可愛がってくれた、
ばあやさんの墓参り、
と恐る恐る答えた。
当時私はタクシーの運転手とお客の会話なんて
単なる時間つぶしの世間話ということを知らなかった。
大人の言うことには何でも真剣に答えなければいけないと思い込んでいた。
「へえ!
お兄さんいい子だねえ!
ばあやさんきっと喜ぶねえ!」
いつも駅までバスで行く道を途中の島へ渡る橋で右折する。
開通してまだ数年だった橋は、
古びた町とは対極をなすかのようにどこもかしこもぴかぴかだった。
周りの大人達の鬼山氏への批判はこの橋によることが多かった。
あんな過疎化の激しい島にこんな豪華な橋なんか掛けて、
まったく税金の無駄遣いだというのである。
運転手に島に行きたいと伝えた。
車が発車した。
運転手は話好きな男だった。
お兄さん、
高校生?
水産高校?
へえ私立のキリスト教の学校なんだ!
へえ寮!
お金持ちのお坊ちゃんなんだなあ!
将来は東京の大学に行くのかい?
運転手は私に、
君はそんな良い教育をつけてもらって君のお父さんに感謝しなければいけない、
と言った。
彼は島の貧しい漁師の息子だった。
中学卒業と共に、
故郷を後にしてこの町にやってきたという。
缶詰工場で働きながら、
定時制高校に通ったんだけど……、
と言葉を濁した。
事情があって卒業できずに、
それが心残りでしかたない、
と身の上話をする。
その後ある商売をやっている家にお婿さんに行く予定だったんだけど、
ある悪い女性にだまされてね……
と人生の失敗を私に語る。
私はただ、
はあ、は
あと答えるしかなかった。
運転手は急に明るい声でこういった。
「でも最近は鬼山さんががんばっているから島も豊かになるだろうな!」
運転手は前市長で県会議員の鬼山氏と定時制高校の同級生らしい。
同じ年に島から町にやってきたという。
彼によると島にかかるあの橋は鬼山氏によって建てられたもので、
島の人々はみな「鬼山橋」と呼んでいるという。
運転手は、
あの橋によって島は便利になってこれからどんどん発展するだろう、
と目を輝かせた。
その後鬼山氏のことを、
素晴らしい人物、
故郷のスーパースターと誉めそやした。
私は意外な気がした。
周りの大人達からは、
鬼山氏の悪口ばかり聞いていたからである。
「でも、君、
島に何しに行くの!?
君に島に住む友達や親戚なんかいないだろうに」
私は小さい頃可愛がってくれた、
ばあやさんの墓参り、
と恐る恐る答えた。
当時私はタクシーの運転手とお客の会話なんて
単なる時間つぶしの世間話ということを知らなかった。
大人の言うことには何でも真剣に答えなければいけないと思い込んでいた。
「へえ!
お兄さんいい子だねえ!
ばあやさんきっと喜ぶねえ!」
いつも駅までバスで行く道を途中の島へ渡る橋で右折する。
開通してまだ数年だった橋は、
古びた町とは対極をなすかのようにどこもかしこもぴかぴかだった。
周りの大人達の鬼山氏への批判はこの橋によることが多かった。
あんな過疎化の激しい島にこんな豪華な橋なんか掛けて、
まったく税金の無駄遣いだというのである。
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