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幕開け
御神託は呪いの始まり
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※大斎宮⇨大神殿(2019/11/11)
《鬼人と星の乙女》というゲームがあった。乙女ゲームと育成ゲームをごちゃごちゃ混ぜ込んだシステムとややこしい世界観の癖に単純なシナリオは別として、声優陣と美麗なイラストが人気だった。製作者は壮絶なスランプの中、神様のお告げでこのゲームを作れたと語ったとか。
舞台は異世界。二つある大陸のうち西の大陸。
この大陸の覇者は鬼人族と呼ばれる、角と牙と膨大な魔力、それをコントロールする身体能力を兼ね備えた種族だ。この世界を創った《鬼神》の子孫である彼ら以外にも、狼人や羽人といった種族がある。
鬼人は幾つかの部族にわかれており、現在は《紅蓮》と《蒼嵐》の二強がそれぞれの眷属を従えて王国を創っている。
ゲームは、その《紅蓮》と《蒼嵐》の王子様や貴族らが通う学園から始まる。学園に、もう一つの大陸からの留学生として星の加護を持つ女の子が編入してくる。この子が二年間の学生生活を通して様々なミッションやイベントをクリアして伴侶を見つけ、嫁入りか婿取りか達成するというハッピーエンドを目指すゲーム。
もちろんヒロインのライバル───悪役令嬢的なポジションで王子たちや攻略対象らの婚約者も登場する。
これは、そんなゲームの元にされてしまった現実世界の住人たちのお話である。
◇◇
《紅蓮》のハチス公爵当主クランドは、二人の幼い娘を連れて大神殿に赴いていた。
数多の鬼神様が集う新年の祝賀は滞りなく進み、あとは帰るだけとなったころ。
「お嬢様がたに御神託がございます」
現れた神官に連れていかれた奥殿に、厳めしい顔の鬼神様とチャラっとした若い鬼神様の、二柱が顕現していた。
『お前たちに神託を授ける。こちらに来よ』
厳めしい顔の鬼神様が何故かとても哀れみに満ちた眼差しで語ったのは、以下の内容である。
姉妹たちの暮らす世界とは別に、たくさんの〈世界〉が存在しているという。
その中のひとつに、人間という種族が暮らす地球という〈世界〉もある。
ある日、地球の日本という場所から女がやってきた。たまたま波長が合ってしまったこの女は、〈日本〉とやらでゲームなるものの制作を生業にしていた。
この女を〈日本〉へ送り返すべく会いに行った鬼神様たちに、日本へ戻れるならぜひこの世界をゲーム化したいと女は熱く妄想を語った。さらに女は提案までしてきた。
ゲームを元に、設定にそっくりな箱庭を創り、人間世界から死後の魂を転生させるのはどうだろうか?と。
人間の世界の技術や、転生者がたまに持つ固有スキルなども興味深い。この世界に還元できる能力も得られるだろう──鬼神様たちは、この世界の実際の住人情報を女に夢のお告げとして授けた。女はそれを元に想像力を駆使して、ゲームを創ったのだ。
登場人物だけが同じな、姉妹たちのいるオリジナル世界とは似て非なる世界を。
──ところが。
『シナリオを元にせっかく作った精神世界の箱庭へさ~、人間の娘を転生させるはずだったんだけど。アハハ、間違ってこっちへ転生させちゃったんだよね。特殊な能力持ちだしぃ、手配を取り消すのも面倒くさいんだよぉ。仕方ないから、この世界で実験することにしちゃった……てへ』
小僧にしか見えない鬼神様は、チャラっと云った。
「………負けたらどうなるのですか」
妹を抱きしめ姉が問う。
『そこ気になるよね~。犯した罪によるんだけど──まず断罪される。その後は処刑(種類豊富)、幽閉(心身を病み死亡)、追放(陵辱や疫病などで死亡)だなぁ。あは、全部死んじゃうね! お前たちは普通に成長して恋して幸せになる予定だったんだけどぉ、ホント、ごめん。ゲームの設定に合わせないとヒロインが能力発揮出来ないかもしれないからさ。あ、死んだらすぐ転生させてあげるから安心して!』
悪気の欠片もない態度で、箱庭の設定に合わせてこちらの世界の未来を少し変えさせてもらったと宣った。
「「…………あ”っ?」」
『………ええっと、それだけ! 頑張ってね!!』
小僧の方は姉妹から放たれた殺気に、脱兎のごとく逃げた。
『──すまぬ。動き出したものをとめることは歪みをもたらしかねぬのだ。だが、お前たちも加護を授けねば不公平であろう。いずれ我が力を貸す。まずは箱庭の設定を教えるので知力を尽して勝ち残る術を身につけよ』
厳つい鬼神様の大きな手が額に触れた途端、どっと押しよせる情報の濁流に飲まれ、幼い姉妹は気を失ったのだ。
──生き残れよ、苦渋の声を聴きながら。
《鬼人と星の乙女》というゲームがあった。乙女ゲームと育成ゲームをごちゃごちゃ混ぜ込んだシステムとややこしい世界観の癖に単純なシナリオは別として、声優陣と美麗なイラストが人気だった。製作者は壮絶なスランプの中、神様のお告げでこのゲームを作れたと語ったとか。
舞台は異世界。二つある大陸のうち西の大陸。
この大陸の覇者は鬼人族と呼ばれる、角と牙と膨大な魔力、それをコントロールする身体能力を兼ね備えた種族だ。この世界を創った《鬼神》の子孫である彼ら以外にも、狼人や羽人といった種族がある。
鬼人は幾つかの部族にわかれており、現在は《紅蓮》と《蒼嵐》の二強がそれぞれの眷属を従えて王国を創っている。
ゲームは、その《紅蓮》と《蒼嵐》の王子様や貴族らが通う学園から始まる。学園に、もう一つの大陸からの留学生として星の加護を持つ女の子が編入してくる。この子が二年間の学生生活を通して様々なミッションやイベントをクリアして伴侶を見つけ、嫁入りか婿取りか達成するというハッピーエンドを目指すゲーム。
もちろんヒロインのライバル───悪役令嬢的なポジションで王子たちや攻略対象らの婚約者も登場する。
これは、そんなゲームの元にされてしまった現実世界の住人たちのお話である。
◇◇
《紅蓮》のハチス公爵当主クランドは、二人の幼い娘を連れて大神殿に赴いていた。
数多の鬼神様が集う新年の祝賀は滞りなく進み、あとは帰るだけとなったころ。
「お嬢様がたに御神託がございます」
現れた神官に連れていかれた奥殿に、厳めしい顔の鬼神様とチャラっとした若い鬼神様の、二柱が顕現していた。
『お前たちに神託を授ける。こちらに来よ』
厳めしい顔の鬼神様が何故かとても哀れみに満ちた眼差しで語ったのは、以下の内容である。
姉妹たちの暮らす世界とは別に、たくさんの〈世界〉が存在しているという。
その中のひとつに、人間という種族が暮らす地球という〈世界〉もある。
ある日、地球の日本という場所から女がやってきた。たまたま波長が合ってしまったこの女は、〈日本〉とやらでゲームなるものの制作を生業にしていた。
この女を〈日本〉へ送り返すべく会いに行った鬼神様たちに、日本へ戻れるならぜひこの世界をゲーム化したいと女は熱く妄想を語った。さらに女は提案までしてきた。
ゲームを元に、設定にそっくりな箱庭を創り、人間世界から死後の魂を転生させるのはどうだろうか?と。
人間の世界の技術や、転生者がたまに持つ固有スキルなども興味深い。この世界に還元できる能力も得られるだろう──鬼神様たちは、この世界の実際の住人情報を女に夢のお告げとして授けた。女はそれを元に想像力を駆使して、ゲームを創ったのだ。
登場人物だけが同じな、姉妹たちのいるオリジナル世界とは似て非なる世界を。
──ところが。
『シナリオを元にせっかく作った精神世界の箱庭へさ~、人間の娘を転生させるはずだったんだけど。アハハ、間違ってこっちへ転生させちゃったんだよね。特殊な能力持ちだしぃ、手配を取り消すのも面倒くさいんだよぉ。仕方ないから、この世界で実験することにしちゃった……てへ』
小僧にしか見えない鬼神様は、チャラっと云った。
「………負けたらどうなるのですか」
妹を抱きしめ姉が問う。
『そこ気になるよね~。犯した罪によるんだけど──まず断罪される。その後は処刑(種類豊富)、幽閉(心身を病み死亡)、追放(陵辱や疫病などで死亡)だなぁ。あは、全部死んじゃうね! お前たちは普通に成長して恋して幸せになる予定だったんだけどぉ、ホント、ごめん。ゲームの設定に合わせないとヒロインが能力発揮出来ないかもしれないからさ。あ、死んだらすぐ転生させてあげるから安心して!』
悪気の欠片もない態度で、箱庭の設定に合わせてこちらの世界の未来を少し変えさせてもらったと宣った。
「「…………あ”っ?」」
『………ええっと、それだけ! 頑張ってね!!』
小僧の方は姉妹から放たれた殺気に、脱兎のごとく逃げた。
『──すまぬ。動き出したものをとめることは歪みをもたらしかねぬのだ。だが、お前たちも加護を授けねば不公平であろう。いずれ我が力を貸す。まずは箱庭の設定を教えるので知力を尽して勝ち残る術を身につけよ』
厳つい鬼神様の大きな手が額に触れた途端、どっと押しよせる情報の濁流に飲まれ、幼い姉妹は気を失ったのだ。
──生き残れよ、苦渋の声を聴きながら。
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